76.ビー、今はダイチくんなの。
お!お気に入り登録されている方の人数減ってる。
ちょっと悲しい。
今日は、増えてる!少ない人数での一進一退。
* * *
ビーに不埒な真似をしたと言って帝に追いかけられた直後まで、時を遡る。
ツバイは、今、月に来ていた。帝に追いかけられてから、物陰に隠れてやり過ごし、ビーの本体である月に転送で戻ったのである。
「さて、大地さまの体の調整をいたしましょう」
おもむろに、ツバイは服を脱ぎ始める。服といってもパジャマだ。パジャマを脱ぎ棄てると次にトランクスに手を掛ける。少し抵抗があるかに見えたが、さっさとそれも脱いでしまった。以外とがっしりした大地の体があらわになる。
「男性の体とは不思議ですわね、これの機能もためしてみたいところですけど、私一人ではいたしかたありません」
ツバイはひとしきり指で摘んで眺めて いたが、(なにを?)興味をなくしたのか、体の調整作業に入ることに決めたようだ。
床が左右に開いて、中からテーブルがせり出してくる。表面は大地の背中に合せた様な凹凸があり、そこに大地はそっと仰向け状態に横たわった。
「大地さまが倒れる寸前に廻りの人々の思考が流れ込んでましたが、疑似テレパシーの様でしたね。私どもにはテレパシーの能力はありませんから、多分、活性化したスーパーコアが脳の演算領域を使って人々の脳内電気信号を個別に収拾し、意味の判るものに変換したのでしょうね。なかなかに優秀ですわね」
虚空からツバイの声がだけが響いてくる。大地の胸から上を天井から降りてきた大きな機械が覆いかぶさるようにして大地を包む。機械側面 や上部に水晶の結晶の様なものが生えており、時折、明滅を繰り返している。
今大地が横たわる部屋は壁や機械など全てが白で統一されており、どこか近未来チックな印象を受ける。
「この活性化したスーパーコアを止めるのは勿体ないわね、情報を絞って行動指針情報として頭脳に受け渡して、その他のものを頭脳の不活性領域に一時蓄積させ、予感という形でフィードバックするようにしておきましょうか」
大地を覆う機会の明滅が速くなったようだ。
「観察者なら、私の様に論理セクターがあるのだけれど、大地さんにはまだ、無理ね、論理セクターを持つ程の領域がないもの、でもいずれ持って貰わなくてはなりませんね。これを機に脳内に亜空間接続して容量増やして おくべきでしょうか?」
なにか大地にとって大きな事が進行中であるが、当の本人はビーの体に入って学生を満喫中だ。
「スーパーコアによる細胞改変の影響がいろいろでているわね。3割が観察者で残りが人ってところかな。と言っても表面上は判らないわね。異常は無いとは思うのだけれども、詳細分析をしてみましょうか」
大地の体に覆いかぶさっている機会の色が白から少し薄い水色に変化する。辺りに響いていた重低音が高くなったようだ。
「・・・ん、ミトコンドリアの遺伝子に加速塩基パターン?なにかしら。もともと、酸素によるエネルギー燃焼を司るものだから急激な変化を内包しているのはわかるけど、それにより主ゲノムに急激な形質変化の形跡・・・、過去からの連鎖に特異パターン?なにこれ、誰かが人に変更を加えたあとだわ、人に対して誰が?」
「 情報を整理しましょう。人の連鎖塩基パターンに特異点を確認、特異点はある領域のミトコンドリアDNAからの介入の影響と思われる。ミトコンドリアからということは母系遺伝で操作者は形質の極端な変化を嫌ったもの、もしくは継続的な介入、現状維持の狙いである可能性大。人の今の姿形を維持するために行われていると言っていい」
ツバイは、深く考えているのか、沈黙が続いた。
(ミネラさま、少しよろしいでしょうか)
ミネラは大地の実家の2階にあるサンルームで、のんびり日向ぼっこをしていた。このサンルームは食い意地のはった大地が南方系の珍しい果物が食べたいと数年前に2階のベランダを改装して造ったものである。狭いながらも熱帯植物やサボテンの鉢植えなど が置かれていた。そんな鉢植え植物のあいだに、ちょこんと長座布団を敷いて横になって雲を眺めていた。なんとものんびりした状態である。
(うむ、ビー、いや、ツバイか、なにかあったかの?)
ツバイが連絡をしてくるとは珍しい、と、少し応答する声に期待する雰囲気を帯びている。騒動は大好きである。
(少々複雑なのですが、大地さまの体に少々トラブルがありまして、今、ビーは眠りについております。ビーの体を大地さまが使用し、大地さまの体を私ツバイが使用して調整しております)
大地の名がでた瞬間、心配するような響きがこもるが、続いてでたツバイの言葉に困惑が浮かぶ。
(なに、パートナー殿にトラブルじゃと、大丈夫なのか?、じゃが、な んとも複雑じゃな、良く判らぬ、情報領域への直接統合してもよいかの?)
直接統合というのは、観察者は複数の体を使うことがある、それぞれの体からリアルタイムの情報を得られない場合、それぞれが経験した情報を入手する方法の一つで、情報格納領域にアクセスし、情報入手者が体験した全てを時間圧縮状態で追体験し我がものとすることである。
(はい、開示レベルは3でございますが)
母星に設置されていた論理セクターの記憶を一括に管理する統括官でない限り、開示レベルの設定は存在する。今現在、一番低いのはビーであり、開示レベルは2である。まだ未熟で、ペーパードライバーの域を脱しきれていない。それは、ある文明の守護者をやり終えた事によりレベル3 に至る。
レベル3により開示されるのは、観察者を害する事ができる事象、及び兵器の詳細であり。それを持って初めて一人前と呼ばれる様になる。何故その情報がレベル3に設定されているのかは不明であるのだが、宇宙の深淵を縦横無尽に動き回る観察者にとって、自分の守護する者たちが原因で観察者同士の衝突はごく稀にだが起る。そんな場合、守護している者たちに、そんな兵器を造らせるのである、造れればその文明の方がより進んだ科学力を持っており、その証明となる。それを使って、当然、相手を退ける事ができるのである。そんな事からの設定だと思われるのだが、推測の域をでない。
因みにミネラの一般開示レベルは5である。ツバイからの申請されたレベル以上であるので問題はない。ミネラは、ビーが宇宙に出てから、文明を守護をするまでの間の教育をするという新たな試みの第1号であった為、通常の観察者より、より上位のレベルにアクセスする権限を持っていた。通常の観察者は、宇宙に出た瞬間から一人立ちするのであるが、そんな訳もあって、ミネラとビーの結びつきは通常の観察者より深い。だが、そのミネラでさえ、母星が消えた理由は知らされていなかった。
(しかたあるまい、わしは、論理セクターではないからのう、制限はつきものじゃ)
* * *
お読みいただきありがとうございます。
細々と更新してます。




