63.ビー、お姉ちゃん来て~。
ちょっと短めでごめんなさい。
小夜子はミネラが消えた後も統合頭脳の前でキーボードを打ち続けた。
そして日が替わり接触予測4時間前。
ここは、プラントの制御室。正面の大きなモニターにプラントと迫りくる彼の国のプラントの位置が刻一刻と映し出されている。
一堂が息を殺しながらモニターを見守る中、小夜子が天井を見上げて声を発する。
「お姉ちゃん、ミネラお姉ちゃん。見てたら来て欲しいの、ミネラお姉ちゃん、来て頂戴」
制御室にいた人々の顔には戸惑いが浮かんでいる。
「この子は突然なにを言っているのだ?」そんな事を思っている顔だ。小夜子と霜月幽だけは真剣な顔だが。
正面モニターの前に、眩い光の珠が複数現れる。 それがやがて人の形を取り、光が消えた後、そこには幼いながら、キリっとした目鼻立ちの非常に美しい少女が現れた。ミネラである。
その部屋に詰めている管制官からどよめきが上がる。何人かは、先ほど天井に呼びかけた少女とそっくりなことに気が付いている。
「そう何度も呼ばなくてもよいわ、煩いのじゃ」
若干、不機嫌そうなミネラが小夜子を睨みながら言葉を発する。
「お姉ちゃん。本当に来てくれたんだ」
ぶすっとした表情のままでミネラが答える。
「なんじゃ、信じておらなんだのか、来て損した気分じゃな」
慌てて、小夜子は頭を下げる。頭を下げながらも、その顔はからは笑みがこぼれている。
「ごめんなさい。ひょっ として、来てくれないんじゃないかと心配だったから・・・」
ミネラの機嫌の悪さはポーズで在った様で、すぐに普通の表情となる。
「まあ、よいわ。それで、ど~じゃ、まだ、接触には時間がありそうじゃが、なにか起ったのかの?」
小夜子は、傍に立っている幽を見上げる。小夜子はなにか言いかけたが、幽に制され口をつぐんだ。
「あ、それは、私から、昨夜、小夜子さんからミネラさんの助言を聞きまして、若干の修正を行うことになりました。」
「廃棄された衛星を使っての迎撃案、すこし問題があるような気はしますが、手段も限られており、時間も無いことから、背に腹は代えられません。これを採用したいと思います。」
「発電衛星のマイクロ波を使う案は、あの衛 星は我国だけのものではありませんので、これを動かすのは非常に問題があります。国際問題に発展しかねません。なのでこれは見送りです。迎撃できなかった場合に備えて最後に分離作戦を行います」
ミネラは幽の話しを聞きながらもあまり反応をしなかった。興味がないとでも言う様に、手に持っている黄色い嘴のついたピンクのウサギのぬいぐるみを大事そうに抱えている。その姿は見かけ上、年相応にみえた。そんなミネラに幽が説明する姿はすこし滑稽に見える。
幽の話しが終わったところでミネラが口を開く。
「廃棄人口衛星を使うのは問題にならなんだのかの?」
「そこはそう、謎のハッカーがやったと言う事で・・・」
「ふむ、そんなものかのう。わしは、別に構わんよ」
正直な話、ミネラにとって、地球上での各陣営の利害関係についてはど~でもよいことであった。唯、自分の知り合いに害することは避けたいと思っているが、それとて、自分が何とかすればいい事であると考えている。その為、今、抱えているぬいぐるみのほうが大事だった。なにしろ、これはパートナーである刹那から貰ったものだ。
「それでは、了承を頂いたと言う事で、皆さん、作製開始です」
幽の声を合図に制御室にいた人々が動き始める。既に小夜子が主プログラムを起動済みである。
「お姉ちゃん、それ可愛いいね」
ミネラはぬいぐるみを撫でている。
「いいじゃろ、これは刹那お姉ちゃんがくれたものじゃ。名前はノバちゃん じゃ、小夜子も撫でるか?」
ミネラがぬいぐるみを差し出す。
「うん、うわ~、ふかふかだね~」
「そうじゃろう、そうじゃろう」
こうして見ると、双子がぬいぐるみを可愛がっているだけにみえるが、ひとりは宇宙から来た全知全能の超科学を誇る謎の存在、観察者。もうひとりはPCのことならなんでもござれの超天才少女ハッカー。とてもではないが見えない。
ミネラのぬいぐるみを撫でる手が止まり、急にミネラの表情が真面目になる。
「で、結局のところ、ど~なのじゃ?」
「うん、え~とね、付近の廃棄人口衛星は3機しか見つからなかったの、範囲広げればもう少し在るんだけどね、ちょっと燃料が足りないから、この3機をぶつけちゃおうと思ってるのね。」
「今から約30分後ぐらいに1撃目の人口衛星が到達するの。それから、10分後に2撃目、更に10分後に3撃目と続けることになってる。各10分のインターバル中に衝突状況の確認をして軌道の修正する予定。ねえ、お姉ちゃん、旨くいくかなあ?」
不安そうな小夜子に言葉を掛ける。
「小夜子がプログラムしたんじゃろ?なら、大丈夫じゃ。よい女はどっしりと構える事が大事なのじゃ」
「・・・うん」
「まあ、なにかあったとしても、わしがフォローするので、安心するがよいのじゃ」
「ありがとう、お姉ちゃん」
お読みいただきありがとうございます。




