40.ビー、ミネラの想い、刹那の想い。
すいません、ずいぶんお待たせしてしまってすいません。
本業が超多忙なのでなかなか更新滞ってしまってます。
都合によりビーの年齢修正しました。
ミネラは次の日の朝8時ごろ大地の家に戻ってきた。
大地はその時間、既に会社に向かっての移動途中であったのでミネラを迎える事は出来なかったが、その様子はビーの通信では酷くふさいでいて声を掛けずらかったと聞かされていた。
* * *
不意に玄関の扉の内側に、小さな光の凝集が始まり、やがて人の形をとり始める。光の強さが徐々に増していき目も眩むほどに達して、音もなく収束すると、玄関のたたき部分にミネラが立っていた。
光と共に現れたミネラを少し呆けた表情のビーが見つめる。ビーは今、女学院の制服を着ており、手には学生鞄、首には赤いまふらーをしている。今まさに出ようとしていたところにミネラが 現れたのだ 。
光が消えミネラの目が ビーを捕えたが、すぐに視線を外す。なにか言いたい事があるのか、その桜色の可愛らしい唇が開きかけたがすぐに閉じ、すこし経ってから、捕えにくいほどの低い声で言葉が漏れる。
「・・・ビー」
その目は悲しみに満ちている様にビーは思った。
ミネラの胸中を知ってか知らずか、のほほんとした声で迎えるビー。
「おかえりなの~、ミネラちゃん」
ミネラは俯いたまま言葉を返す。
「ああ、ただいまじゃ」
ビーはその様子を暫く見ていたが、ひとつ小さな息を吐いてからミネラに告げる。
「ごめんなの~、ミネラちゃん。これから学校行かないと駄目なの。刹那ちゃんとお留守番しててなの~。ごめんね~」
ビーの言葉に少し の安堵の表情を浮かべるミネラ。
ミネラが刹那に 視線を向けると、刹那は大きく頷き、手招きしていた。
「ミネラちゃん、こっちこっち。朝ごはん食べた?目玉焼き食べる?」
のろのろとビーに視線を向けるミネラ。辛うじて、ビーを見る事に成功する。
「判ったのじゃ、気を付けてな」
「うん。・・・あの事は帰ってきてから聞くね」
びくっと体を震わせ、ミネラの顔から表情が消える。無表情ながら返事を返す。
「・・・了解じゃ」
ビーは笑顔をミネラと刹那に向けノブに手を掛ける。首周りの赤いマフラーの先についてボンボリが揺れている。
「じゃあ、行ってくるの」
ビーが玄関から表に出て行く。予想以上に寒かったのか慌ててマフラーの中に首を竦ませている。
バタ~ン。大きな音を響かせて、勢い良く扉が閉まる。ドアクルーザーの調整がずれているようだ。
ダンッダンッダダンッ、ビーが鋼鉄製の階段を駆け下りて行く音が段々と遠ざかる。
ミネラは少しほっ としながら部屋の中を見渡す。
(ビーが戻って来るまでになんとか心の折り合いを付けねばのう、あやつに笑われおるわ)
部屋の中央には小さなコタツがありその上には目玉焼とトーストが2枚、コーヒーが静かに湯気を立てている。
ミネラは背を丸めコタツに入ってテレビを見ている刹那を見つめた。
ミネラは、玄関で赤い靴が左右、明後日の方向を向いているのにも構わず、とことことこっと、座っている刹那に近寄り、背中にぼふっと抱きついた。手は刹那の首に廻されている。
「ん?ど~したの」
刹那は思わぬ衝撃に少し目を白黒させ、不思議そうにミネラを背に感じていたが、そのまま、ミネラの好きにさせている。辺りは 時が止まった様に静寂が満ちていた。刹那の背にミネラからの温もりが伝わってくる。
ミネラの口から、ぽつりと、言葉が漏れる。
「不安なんじゃ」
「・・・そっか」
刹那はゆっくりとミネラを振りかえり、両手を脇に添えてそっと持ち上げ、ミネラの手足をぶら~んとさせてから、自身の胸元に抱き抱えた。そして、頭を優しく撫でる。
窓の外にはスズメが「ちゅんちゅん」鳴いている。時折なにか見つけたのかひさしの上でコツコツと啄む音が聞こえてくる。テレビからは芸能レポーター達が、ある芸能人のスキャンダルに群がる様子が映し出されている。
ふと、ミネラの頭を撫でる手を止め、刹那が話し始めた。
「あたしもね、急に 不安 になることあるよ。このままでいいのかな?こんな状態でいいのかなって」
ミネラは刹那に抱きしめられながら聞いている。その瞳にはなんの表情も表れていない。身じろぎもせず一点を凝視する姿はどこか幻想的ななにかを思いおこさせる。
「今でもね、すごい不安なんだ」
ちょっとはにかむような笑顔を見せ、話を続けた。
「知ってた?・・・あたしね、お兄ちゃんっ子なんだ。ばればれだけどね」
刹那は一口コーヒーを啜る。
「いくら親に言われたからって、普通、自分の休み潰してまで、こんな遠くまでお兄ちゃんに会いにこないっしょ?」
ミネラは刹那を見上げる。どこか不安そうな印象を受ける。
ミネラは刹那から伝わる温もりがなんと も心地よいと感じていてずっと続いて欲しいと思 い始めている。
「来てみるとお兄ちゃんの処にはビーちゃんって言う綺麗な子がいてね、しかも一緒に住んでるって言うじゃない。まあ、毎日一緒じゃ 無いみたいだけど・・・」
刹那の口元には微かな笑みが浮かんでいる。その手はミネラの頭に軽く添えられ、たまに、思い出したかのように撫でている。
「あたしの場所なのに。この子はなんなの?って、最初、 頭にきてね・・・。お兄ちゃんも優しい目で見てるし、ちょっと・・・嫉妬?しちゃった。これはまだ続いていてね、あたしが帰らないのは、そんな事もあってなんだけどね」
刹那は悪戯っぽく笑うと話を続けた。
「その子は只の子供じゃなくって、宇宙人って言うじゃない。あ、ミネラちゃんも宇宙人なのよね。あたし、バカだから良くわかんないんだけどさ」
刹那のミネラを抱く腕に少し力が籠った。ミネラは刹那を見上げたままだ。
「そのバカはバカなりに考える訳ですよ。二人を見てるとね、宇宙人が本物にせよ、偽物にせよ、そんなのお兄ちゃんとビーちゃんの間には些細なことなんだって。それにね、ビーちゃんって明るくて良い子でしょう?なんか嫌いになれなく てね」
刹那の腕からふっと力が抜け、少し苦笑しながら続けた。
「あたし、ビーちゃんには嫌われてるかもね。会ったとき詰め寄っちゃったし。仕方が無いんだけどね」
ミネラは口元に笑みを浮かべた。最初の訪問のことを頭に浮かべているようだ。
「あ~、今、笑ったでしょ?真剣なんだからね。できれば、仲良くしたいと思ってるし、ビーちゃんともミネラちゃんと同じように、こうしてひっつきたいって思ってるんだから~」
刹那からはミネラの顔は頭に隠れて見えない。ミネラの雰囲気が少し柔らかくなったことを察したようだ。刹那はふっと表情を緩め話を続ける。
「あたしとお兄ちゃんって結構、歳、離れているのね。あたしが20歳だから12コ 離れているの、あれ?13コだっけ?まあいいや。もの心ついた時には常にお兄ちゃんが居たの。あたしがちょっとでも泣き顔を見せたらすぐにお兄ちゃん駆け付けてくれてね助けてくれるの」
刹那はミネラの肩の上に顔を載せており。手はミネラのお腹の上で組まれている。頬と頬が時折ひっついたりしている。
「面と向かっては言えないけどね、あたしにとってお兄ちゃんはヒーローだったのね。へっぽこの何処か抜けたところがあるんだけどね。・・・なにあたしは子供相手にこんな事、話しているんだろ?」
刹那は少し懐かしむような表情をしていたが、急に恥ずかしくなったのか、話はここまでとばかりに頭を振った。
「も~やめやめ!だから、あたしが言いたいのは 、世の中って、思い通りに行かないものよね、成る様にしかならないってつくづく思うわけよね 。その思い通りにならない世界をあたしたちは暮らしていかなきゃならないのよ」
刹那はミネラのお腹の上で組んでいた手を離して、ミネラにほっぺたをつつく。
「その時々で自分に出来る一番良い方法を考えて、精一杯やって進んで行けばいいってこと」
むに~とばかりに、ミネラの頬を両手で摘んで左右に引っ張る。
「くよくよしてもしょ~が無いっしょ?だ~か~ら~元気出しなさいって、笑って、笑って」
最後はぐだぐだであったが、ミネラには通じるところがあったのか、引っ張られた頬を手で擦りながらもその表情には笑みが戻っていた。
今度はミネラの番、という訳ではないが、ミネラがぽつりぽつりと話し始めた 。
「刹那、刹那お姉ちゃん。聞いてくれるか?」
口元の笑みを消し、真面目な顔になり言葉を紡ぐ。
「ん?」
ミネラは自身のお腹の前で手を組んでいる。時折、親指の爪を撫でるようにしている。
「・・・わしら観察者は長寿でのう、わしでさえ18億年ほど生きとる。しかもわしらは頑強でのう、めったな事では傷も付けられん」
刹那はにこにこしながらミネラの話を聞いているが、その表情からはその話を信じているかは読みとれない。
「じゃから、自分に近しい者が死ぬかもしれないってことに遭遇したことが無いんじゃよ。考えたことも無い。勝手な話じゃが、この地球で人が何人死のうが、わしには何にも感じん。ああ、刹那お姉ちゃんは別 じゃぞ。刹那お姉ちゃんが死ねば悲しむのじゃ、そんなことにならんように守ってやるでな」
「うふふ、ありがと」
刹那はミネラの言葉に笑顔で返した。その笑顔に赤面するミネラ。こほんっ、と、一つ咳払いをして話を続ける。
「ビーがこれから大けが、悪くすると死ぬかもしれん。そんな事に遭遇する事を知ってショックを受けたんじゃ。まだ、ビーには言っておらん。 この事をどう伝えたら良いんじゃろ、どんな顔をして伝えたら良いんじゃろそんな事ばかり考えとるのじゃ」
刹那は難しそうな顔をしていた。
「そっか・・・、それって、何時そうなるかわかってるのかな?1日後、1ヶ月後、1年後?」
刹那の質問に呆けた顔をするミネラ。
「ん?いや、わからん」
刹那はやっぱりとでも言うような表情を浮かべる。刹那は、自分の親が自分より先に亡くなる事を知って漠然と悲しむ子供の様な感じかな。と思っている。
「それじゃあ、私たちと同じだね。私たちも、何時、死んじゃうか判んないもん。明日、交通事故にあって死んじゃうかもしれないし」
「刹那お姉ちゃんと同じ。・・・同じ?、同じ。そうじゃ!同 じじゃ、同じなんじゃ。人と同じ、人と同じなんじゃな、人とはそんな不安な状態で生きているんじゃな」
「いつ会うか判んない事でくよくよしててもつまんないでしょ、まあ、備えは大事だと思うけどね」
「・・・人は強いんじゃな」
「なるべくそんなことにならない様に避ける努力も大事だけどね、ど~しても避けれないなら、被害を最小にすることを考える事が大事だと思うわよ」
「そうじゃ、そうじゃな。流石はミネラの刹那お姉ちゃんじゃ。この宇宙広しと言えども、観察者に助言を与えるものなどそうそうおらん。刹那お姉ちゃんは凄い。凄いのじゃ。わしは決めた、決めたのじゃ、ビーには悪いが、わしもこの地球に留まる事にするのじゃ。うむ、いや、むしろ、ビーの事もあるし、留まるべきなのじゃ」
ミネラの顔に朱がさし、興奮している事が伺える。ミネラは刹那の懐から急に立ち上がり、一歩前にでて刹那の横に立った後、くるりと反回転して正面から刹那を見据える。その目は真剣に満ちていた。そして、優雅に深々とお辞儀をして言葉を放った。
「刹那お姉ちゃん、お願いじゃ。わしの正式なパートナーとなってくれまいか?」
ミネラの 顔は期待と不安がないまぜになった表情をしており僅かにその肩は震えていた。ふんわりとしたスカートの端をぎゅっと握る手は今にも破らんほどの力が籠っているように刹那は思った。
(ミネラちゃん、凄く思いつめているんだけど、パートナーって親友って意味かしら?でも、こんなに思いつめたミネラちゃんを否定する選択枝はあたしには無いわよね)
「うん、いいよ。・・・ただし、約束が三つあります。これを守れるんだったらなってあげる」
ミネラは歓喜の溢れ出すのを感じたが、続く刹那の言葉に目に見えて落胆を感じている。
「約束とはなんじゃ?」
ミネラは恐る恐る聞く。
「約束はね、一つ、嘘は付かない事。二つ、喧嘩をしてもすぐ仲直りをすること。三つ、心配をかけないこと。この三つね、どお、できる?」
ミネラは満面の笑顔になる。手を高々と上げて、万歳のポーズをする。その小さな体を精一杯使って喜びを表現している。
「もちろん、できるのじゃ。じゃから、今から、刹那お姉ちゃんはミネラのパートナーじゃ」
「うん、よろしくね」
何度も読み返すのですが、読み返すごとに大修正してしまい、なかなか進みません。すいません。




