114.ビー、白ひとつなの。
暑いですねえ。
* * *
「えっと~、依頼ってどうやって受けるの?コッコちゃん」
ビーが掲示板に張られた様々な依頼票を眺めながらコッコに尋ねる。
「これはですね、ビー様。ギルドの所属員にはランクがあって、白、赤、青、そして銀、一番上が金、それぞれ星5つまであります。ビー様は登録したてなので白ひとつです。だから受けることができるのは、この白の掲示板となります」
「ビーは白ひとつなの?」
ビーは不思議そうにコッコを見る。
「えっと、この階級は力の有無とか魔法力とかは関係なくて、ギルドの仕事をどれだけ受けたかとか、どれだけギルドに貢献したかによります。ビー様はまだギルド員になったばかりなのでまだ白ひとつです。この星の数は、通常、ギルドの依頼を10個受けて達成すれば、星ひとつ上がります。でも色が変わるのはギルドでの昇格試験を受けなければなりません」
「コッコは一応ですが、赤みっつなのです。白は見習い階級で、赤はその上なのです。青は一流で銀は超一流なのです。金はもっとも~と上の人たちなのです。これは国などに認められた人たちなのです。皆の憧れなのです~」
ちょっと誇らしげに糸を通して首に下げているギルドカードを見せる。
「へ~、コッコちゃん凄いんだね。先輩なの~」
胸をそらして答える。
「へへへ、コッコは凄いんですよ。先輩なのです」
ビーはにこにこしながらコッコの頭を撫でる。いつも撫でられる側であったため撫でることができて、嬉しそうである。
コッコも撫でられて嬉しそうである。
「えらいえらい」
そこへ大地がトイレから戻ってきた。
「あ、ビー、ここにおったんか、何処行ったかと思ったで。これ依頼の掲示板なんか?」
帰ってきた大地にビーの代わりに笑顔で答えるコッコ。
「あ、大地様。そう、大地様とビー様は白ひとつだから、この掲示板に貼られた依頼から選ぶのですよ」
大地は白の掲示板を見上げながら尋ねた。
「ふ~ん、でも俺、文字は読まれへんなあ。ビー読めるか?」
少し期待のこもった目でビーを見る。
「ビーも読めないの。ツバイちゃんのデーターには文字のデーターは無かったの。話言葉の分しか無かったの。ごめんね~」
ビーは申し訳なく思いつつも笑顔で答える。その手はまだコッコの頭を撫でていた。
「こりゃ習わなあかんかな。えっと、コッコさん。なんの依頼があるか説明してもらえるかな?」
コッコはビーに撫でられるに任せながらも大地の質問に答える。
「えっと、依頼には大きく分けてみっつ、採集、討伐、護衛とあって、それぞれ記号が付いているのですよ」
依頼表にはそれぞれ、採集は何かを掴むマークが、討伐は剣、護衛は盾のマークが付けられていた。このマークの違いにより文字を読めない者でも大体の内容が判るようになっていた。
「難易度は星の数で表されているのですよ。例えばこの依頼表なのですが」
コッコは、手近な依頼表を指差した。その依頼表には手のマークが青のインクでスタンプされていて、その横に星が3つ書かれていた。
「これは白のランクの人が受けることが出来る依頼票で、難易度はこの星の数で表されています。難易度は3段階で、これは星が三つなのでそれなりに難しい依頼です。ビー様、大地様も受けることができますけど、大丈夫でしょうけど、初めてなので、止めておいた方がよいと思います」
大地とビーはしげしげと掲示板を見上げている。コッコの説明を神妙に聞いているようだ。
「そんじゃあ。ひとつ受けてみようか、なあビー」
「うん、受けてみるの~、ダイチくんどれがいい?」
「そうやなあ、まずは、やっぱり定番の薬草採集からかなあ。コッコさん薬草採集で比較的簡単そうなのはどれかな?」
「はい、それでは見てみますね。ちょっとまってください」
コッコは暫し掲示板の前で腕を組んで考える。
「う~んどれがいいかなあ。ビー様ならどんなものでも大丈夫でしょうけど、初めてだから、星三つは止めておいた方がいいよね。ん~と、大地様も強いし討伐が良いかもだけど・・・、やっぱり薬草採集が無難なのですよね。あ、タキリキ草の採集依頼がありました。星もふたつだしこれがいいかな」
コッコは掲示板からタキリキ草の採集依頼と書かれた票を引き外す、ついでにその横のクロウ草の採集依頼の票も引き外した。
「えっと、これが良いと思います。タキリキ草とクロウ草の依頼票です」
大地とビーに引き外した票を見せる。
「「タキリキ草?クロウ草?」」
大地とビー、二人の声がハモる。
「はい、タキリキ草とクロウ草は中級ポーションの材料になるのです。いつもは、採集依頼はでていないのです。だから、ビー様たちは幸運なのです。下位ポーションの材料は常時依頼がでているのですけど、中級ポーションを作れる人はあまりいないので幸運なのです。それに、これなら、コッコは生えてる場所を知っているのですよ」
コッコはしきりに幸運、幸運と唱えるように呟いている。白の依頼にしては相当に金額が良いことを大地たちに話した。
「じゃあ、これ受けてきますね、ちょっと待っててください。あ、ギルドカードをお願いします」
コッコは大地達からギルドカードを出してもらおうと手を差し出した。
「あれ?カード受け取ってないの~」
「おう、そうや。さっきのドサクサでそのままちゃうか」
「そうなんですか?じゃあ、この依頼の手続きと一緒に貰ってきますね」
コッコか小走りに受付に向かって走っていく。
暫くして、コッコがカード二枚と受け付けられた依頼表2件と一緒に戻ってきた。問題なく受領してもらえたようである。
「はい、ビー様、大地様。はぁはぁ・・・」
コッコは走って戻ってきたのか、少し肩で息をしている。大地たちのギルドカードを掲げるようにして持っていた。
そのカードは全体が黒色で白の縁取りがしてあり、中央に剣と盾がプリントされている。裏面には一番上に星がひとつ描かれてあり、その下に大地には読めなかったが名前や称号などが書かれているようだった。
「コッコちゃんのカードは赤いけど、ビー達のは白い縁取りなの~」
「まあ、俺らは今登録したとこやから、一番下なんはしょうがないなあ」
大地はコッコが受け取ってきたカードをくるくると回しながら眺めていた。ビーはと言うと、コッコのカードと見比べている。
「それじゃあ、出発なの~」
新人冒険者が絡まれると言う定番イベントもなしに3人が扉から出て行った。
その姿を扉の影からコベニが見ていた。
「はぁ~、フォローねえ」
軽く溜息を吐くコベニだった。
やっと採集に入れます。




