104.ビー、ツバイと会話する。
さて、異世界の話を始めましょうか。
* * *
「ビーの意識喪失を確認。ビーの全権限を論理セクターツバイに移行」
「現在の座標、重積世界への移行経過を確認。同期し、移行中の大地さんを捕捉。内部に収納実行」
「現実界復帰に備えて、全方位にシールド展開」
「頭脳への重度の損傷を確認。現稼働率8%、緊急対処必要箇所多数。当該箇所に時間停滞フィールド展開により緊急措置開始。補助機械制御脳に部分代行を開始」
「現実界復帰後、直ちに時間遡航開始、時間遡航歪の影響の排除を実行」
「時間復帰後、生存可能惑星を調査、意識体を切り離し長期間の本体意識停止を開始後、損傷修復作業開始」
「最低限の自動防御兵装を残し、分離意識体に制御権を移行。各分割任務の実行を開始」
白く明るい部屋の中に、ツバイの声だけが響いていた。
* * *
「ビー、ビー、起きなさい。ビー」
寝ぼけた様子で辺りをきょろきょろするビー。まだ、頭ははっきりしていないようで、盛んに、目を擦っている。その体は、衣服は一切付けてなく、白い素肌が眩しい。
ビーの向こうに大地が寝かされていた。こちらも、衣服は無かった。
「ビー、目覚めましたか?私は、論理セクターツバイ。ああ、ビー、2度寝しないで、起きなさい 、ビー」
一旦は、寝むそうながらも、体を起こしたビーであったが、直ぐに、ごろんとうつ伏せに眠る。
「ん~、ツバイ?」
ツバイの声に、眠そうな声でなんとか反応を返すビー。
「そう、私は、ツバイです」
ツバイの声には、少し安堵の様子が伺える。
「ツバイ!」
ツバイの声に、やっと覚醒したのか、目を見開いて周りを見回している。
寝かされていた大きなテーブルから、両足を恐る恐る床に付ける。床が少し冷たかったのか、「ひぁっ」と言う声を上げた。
「ビーとは、話すのは初めてですね。今回は、例外中の例外ですが、貴方を起こしました。これを期に少し話をしておこうと思ったのです」
今、ビーは本体との意識が切り離されているのか、少々不安そうな顔をしている。
「初めましてっていうのもおかしな話なの~。でも初めまして~」
「はい、私の方からは常に貴方を見ていますので、おかしなものです。初めましてです」
「今回は、少し大きくやられましたね」
「ごんねんなの~。でもね、でもね、ビーも最後は、旨くやれたんじゃないかと思うのよ」
「ビーだめだめです。もう一度言います。だめだめです」
「あう~、二回も行った~」
「だめだめです」
「3回も~」
「ビー、なにが駄目かと言うと、この半年、貴方は、なにをしていましたか?」
「え、半年?今日の事じゃなくて」
「そう、待っているだけではダメです。もっと積極的に行かないといけません」
「え~と、その、なんのことなの?」
「ビー、スキンシップはとても重要です。ビーは、とっていないでしょう?」
「あの、その、え~と、ダイチくんのこと?」
「そう、それ以外に大事なことなどないでしょう?」
「・・・はい。ラート姉さまのことじゃなかったんだ」
「大地さんは巨乳が好きとは口では言っていますが、私がみたところ、貧乳も御好きなようです。ロリコンとは言いませんが、嫌いでは無いように見受けられます。否、好きに決まっています」
拳を固めて力説するツバイの姿をスクリーンに映し出すツバイ。
「ツバイちゃんてこんなに熱かったんだ」
「もっと、スキンシップを取らないとだめだめです。今に、きっとミネラさまに獲られます。例えば、大地さんが 仕事から帰ってきた時、とててて~と走って抱きついていますか?少し潤んだ目で見上げていますか?」
「とてとて~って、言うのはないの、たぶん。でも、玄関には行ってるよ」
「横に座った時なんか、膝に手を載せて、えへへへ~って笑い掛けていますか?床に座った時など、三角座りなどしてスカートの中をちらっと見せてあげていますか?」
「え~、そんなのしないよ。でも、しないとダメなの?」
「目があったら、エッチといって笑って、スカートを直していますか?、暫くしてから、また、ガードを下げて見せてあげていますか?」
「え~と、え~と」
「風呂上がりに、バスタオルで身を包んでうろうろしていますか?偶に、落としたりしていますか? 」
「それは、たまにやってると・・・と思う」
「大地さんの布団にもぐりこんで寝るとかしていますか?朝、起こす時、男たちの夢の起こし方、『跨り朝だよ~』を大地さんにやっていますか?やることはいくらでもあります」
「むう、それは、やっていないの」
「やっぱり、だめだめです。もう一度言います。だめだめ村のだめだめダメ子さんです。積み重ねが大事なのです」
「でもね、でもね・・・」
「そんなことでは、私の方が、その体の制御権を奪って、やっちゃいますよ」
「なにをやるの?」
「判らないのですか?」
「う、・・・うん」
「本当に?」
「うう」
「もう一度、聞きます。本・当・で・す・か?」
「・・・ごめんなさい。わかっているの」
「嘘はだめです。私たちは一心同体なのですから、嘘など付けない事はわかっているでしょうに」
「う・・・、で、でも、ビーのキャラとしては、ちょっと」
「そんなキャラ付けはいりません。私は、論理セクターです。ビーの記憶を管理するものです。ビーがどんなに、エッチでイヤらしいかも全て知っています」
「あうあう」
「先日のミネラさまとの会話だって、本当は・・・」
「わーわー、聞えな~い、聞えな~いの~。ビーはなんにも知らない、知~ら~な~い~の~」
ビーは耳を抑えてしゃがみ込んでいる。
「ふぅ~、まあ、良いでしょう。自分で自分を貶めてもなんの益もありません。重要な話はこれぐらいにして、あとは連絡事項です。といっても、ビーの頭には入力済みなのですが」
「今、私たちの体は。重積世界のどこかは判りませんが、出発した時間軸とは少しずれた時間軸線上を航行中です。時間遡航による歪み是正の為、時間軸だけでもと思い、もとの位置にもどそうとしたのですが、詳細な時間軸の記憶がビーの攻撃により消失してしまいました。大体合ってるとは思いますが、少しだけずれていると思います」
「タイムトラベルだけは、ほぼ同じ時間軸に移動したと言うことなのね」
「そうです。現在の私たちの体は、生体部分が8%しか稼働していません。主要器官は亜空間に設置しています補助機械脳に代行させております。幸い空間生成器官は軽微な損傷でしたので、少々不安定ながらも稼働できる状態です」
「雅か、自分の頭脳内に自ら攻撃を加えるとは想定していませんでしたので、少しずれておれば、この器官も破壊されていたでしょう」
「だって、だって、あの時、仕方がなかったの~、制御、利かなかったもの」
「頭脳の機能を止めるだけなら、接続部にマイクロブラックホールでも転送すれば、叶うと思いますが」
「むう、でも、思い付かなかったんだもの、これは、壊すしかないと思ったの~、ツバイちゃんの意地悪」
「まあ、いいでしょう。ビーは大地さんを連れて、下に降りて下さい。私は、太陽内にて修復作業にはいります。暫く連絡はつかなくなりますが、大地さんをよろしくお願いします」
「わかったの~」
「くれぐれも、頼みましたよ」
「任されたの~、自分を信じてなの~」
「それでは、転送を開始します」
「またね~、ツバイちゃん」
ビーは眠る大地を抱えたまま、光の中に消えて行った。
「・・・大丈夫ですわね」
一抹の不安は拭い切れないツバイだった。
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