103.ビー、ごめんね、ダイチくん。
お待たせしてしまってすいません。
(お前は、もう私には叶うまいと思っているでしょうに、まだ、目からはまだ、光は消えておらぬようですね。本当に強情と言うか、少々呆れてしまいます。観察者とは、そお言う者かもしれませんが、・・・諦めきれぬと言うなら、お前に別の目的を与えましょう)
ビーは静かに聞いている。
(ポンちゃん!ポンちゃん?ガルポン・ナル・ガルリアスティ・ド・ナララティ・к〇жзкЯЯШ£ヽ~\_※※●dddΓ§§¶ΞΠ_§§¶ΞΠжзкЯЯのポンちゃんはいますか?)
(います。居てます。こちらに、ラート様。でも、何故に、フルネームなのですか・・・)
火星の極軌道上に小型の船が出現する。カモフラージュを解いたのだ。
ビーとラートの戦闘中に到着したのだ が、戦闘が激しくて近寄れず、ここで待機していたのだ。
(ポンちゃん、あの子は連れてきていますか?)
(はい、怪我ひとつなく、後ろで呑気に、眠っています)
(そう、ありがとう。さて、ビー、この距離なら、難なくスキャンできるでしょう。あの小さな船をスキャンして確認なさい)
ビーは、ラートの言葉に怪訝に思いながらも、遠距離スキャンを行う。すると、そこには・・・。
(!!!)
(貴方の、知っている方でしょう?ポンちゃんに、連れて来て頂いたの。ポンちゃん、ご苦労さま)
(ありがとうございます。ビー様が居られませんでしたので、簡単でした)
(ダイチくん!ダイチくんをどうするの?殺すの?そんなこと許さないの )
(殺す?まさか、この子も 私が愛する子たちの一員です。ただ、少し、重積世界を楽しんでもらおうかなと思っています。ビーには、新たな目的、そう、この子を探し出すと言う目的を造ってあげようとかと思っているのです)
(この子の中には、ビーのスーパーコアがあるのでしょう?ならば、この子の寿命は我らと同じになるはず、今は変換期である為、まだのようですが、不慮の事故さえなければ、いずれ、頑強な体にはなるはず。私がこの子を重積世界の何処かにとばしたら、ビーは、当然追いかけるでしょう?)
(当たり前なの。ダイチくんはパートナーなの)
(お別れぐらいさせてあげます。ポンちゃん、その子を起こして貰えるかしら)
「(はい)、おバカさん、起きるのですの」
ガルポンは、麻痺を解除する。すぐに、大地はもぞもぞと 動き出す。
「あれ?ここは・・・」
大地はぼんやりとした目でガルポンを見上げる。
「おはようですの、おバカさん。貴方が眠っている間に運ばせてもらいましたの。ここは火星の近く、宇宙ですの」
「宇宙?」
(ダイチくん、ダイチくん、大丈夫なの?)
大地の頭の中にビーの声が響く。
「ん、ビー?」
「そろそろ、正気に戻っても良いのじゃないかしら、おバカさん」
「あれ、俺、ど~したんやろ、・・・あ、ガルポン、お前」
大地の頭が急速に覚醒する。目の焦点がガルポンを捕らえると怒りの形相へと変わった。
「ようやく、正気に戻った様ですの、戻っても、頭の悪さは変わらないようですの」
「 女の胸を揉んで喜んでいる女には言われたないは」
「 ああ、そう言えば、おバカさんも揉みたかったのでしたわねえ、それとも、揉まれたかったのですの。いやらしい、いずれにしても、変態ですわね」
「お前なあ」
(ダイチくん、ガルポンさんといちゃいちゃして、なんか、楽しそうなの)
(いや、これは、いちゃいちゃしとるんとは違うで)
「そろそろ、良いかしら」
船内に設置されたスピーカーからラートの声が響く。
「誰や?」
「私はラート、ビーの姉と、言えば判るかしら」
「ラート?、あんたがラートか」
「お前、様を付けなさいですの、殺しますよ」
ガルポンの殺気が大地に向けられる。
「いいのです」
「しかしですの」
「ポンちゃん!」
「はい、・・・おい、ラート様の御許しが出たからと言って、調子に乗るなですの」
「やれやれや、で、俺になんの用や」
「貴方にね、少し、 旅をしてもらおうかと思っておりますの。本当はね、貴方も愛する私の可愛い子供たちのひとり、できれば、貴方を巻き込みたくはなかったのですけど、ビーが聞き分けが無くって」
(そんなことないの)
「旅?ど~言う事や」
「ビーはどうしても地球を諦められないと言っていますわ、だから、優先するべき、新たな目的、貴方を探すという目的を造って差し上げようと思っていますの。なかなか良い考えだと思わないこと」
「俺を探す?」
「そう、貴方をもとめて、幾百万もの異世界を旅するビー。ロマンチックじゃありませんこと。会ったばかりで申し訳ないのだけれども、そろそろ行って頂くとしょうかしら」
「ポンちゃん、こちらに戻ってもらえるかしら」
「はい、問題ありません。では、良い旅をね、おバカさん」
ガルポンが、虹の光に包まれて消える。
「くそっ、行きやがった」
(転送か、ビー、俺を転送してくれるか?)
(ごめんなの、今、ビー、色々と封じられているようで、できないの。解除しようとはしてるんだけど・・・、ごめんね)
(え、ラートってそんなに強いんか?)
(う、うん。ビー、手も足も出なかったの。でも、諦めないって言ったら。ダイチくん、つれてきて。巻き込んでごめんなの~)
(そうか~、まあ、それは、しゃ~ないけど、でも、ビー、黙って行くのはあかんわ、ちょっと、俺、怒ってるねんで)
(で、でも)
(でもは、無しや)
(う、うん。ご、ごめんなさ いなの)
(もう、この話は、無しや。これからやけど)
「そろそろ、よろしくて」
「うおっ、ビーとの通信に没頭しとって、忘れとったわ。それで、俺をど~する気なんや」
今、ビーは、ある作業をしていた。体が動かないのは、第二頭脳が制限を掛けるから、ならば、その第二頭脳を切り離すか、粉砕すれば良い、と。それをする為には、この現象を造り出している、誤った指令をキャンセル出来る様、抗生ワクチンを作製すればよい。
観察者の肉体は、パソコンに似ている。複数の肉体を操る上で、より効率良く動かす為に選択された結果の構造なのだが、ラートは光のスペクトルの中と、ハイパー通信内のノイズの中に第三頭脳に体の制御系へのアクセスを阻害する 因子を紛れ込ましていたのだ。所謂、ウィルスの様なものだ。これを取り除くべく、ビーは、力を注いでいた。
それは刹那の出来事であった。
「それでは、良い旅をね」
ラートが大地に向かって重積世界への転送を開始する。
ある程度、制御系を取り戻した事を確認したビーは、己の第3頭脳内に光粒子反応弾を転送する。並みの兵器では、観察者の内部からの攻撃であっても傷ひとつ付けられない為だ。
ビーは己が造り出した痛みと戦いながら更なる手を打つ。頭脳の制御系を第一頭脳に一本化したあと、ラートの放った大地への重積世界への転送波を増幅しつつ、自身もその波にのり、大地と共に重積世界へと跳躍したのである。
現世界に於いては、今の状態のビーでは、何所に行こうとラートからは逃げ切れるものではない。いずれ、捕捉され、大地だけを重積世界へ飛ばされてしまうだろう。ならば、重積世界へ一緒に、今なら、大地と一緒に、それも、ラートが放つ転送波を増幅して行く先についてはだれも何所に転送されるのかは分からない。
ダイチと分かれるくらいならば、行くへの定めない転送など恐るるに足らず。
(ダイチくんが居なくなる。あれだけ、決心したのに、ダイチくんを見てしまうともう離れられないの。居なくなる。嫌よ、嫌なの、嫌。なにか、なにか、なにか、できないの?)
その思いで精一杯考え、導き出した結果にしたがったのだ。
ビーの思考は、重積世界への移行の途中で途切れた。
* * *
(やられましたわ。あの子だけを送るつもりでしたのに、ビーまでも、しかも、ご丁寧な事に、痕跡を消す様にジャミングまで掛けて・・・、流石は観察者、我が妹ということかしら。まあ、生きていれば何時かもどってくるでしょう。でもその時、ひとりなのか、ふたりなのかは判りませんが)
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