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05 はじめてのレベルアップ

05 はじめてのレベルアップ


 俺の嵌めていた腕輪から放射状の光が立ち上り、空中にホログラムのようなウインドウを浮かび上がらせていた。

 そこには『レベルアップしました!』という一文が。


「レベルアップ……? そういえば、利用のしおりに書いてあったな」


 生活保護ダンジョンでモンスターを倒すと、敵の強さに応じた経験値とポイントが得られると。

 経験値が溜まると、レベルアップしてさらに強くなれるらしい。


「なんだか、本当にロールプレイングゲームみたいだな。

 たしか、腕輪でステータスが見られるんだよな」


 俺は腕輪に彫り込まれていた『目』の形をした模様に指で触れてみる。

 するとウインドウは切り替わり、俺のステータスが表示された。


 名前と職業のほかに、『LV:2』と『NP:200』という表記がある。

 俺は地べたに座り込んだまま、利用のしおりを膝の上に広げてステータスの説明を読む。


「『LV』ってのがレベルで、『NP』はナマポイントか。

 ゴブリン1匹倒して200ナマポイントってことは、たったの20円かぁ……」


 さっきの戦闘は、いままでのどの仕事よりも命懸けだった。

 それなのに20円とは、ちょっと割りに合わなさすぎる。


「まあいいや、宝箱からの収入もあるかもしれないからな。

 たしかステータスの他に、スキルってのもあるんだよな」


 俺はその流れで、腕輪の『手』の模様に触れてみた。

 すると今度はスキルウインドウが現われる。



 破戒者の黒薔薇(ラフィアン・ローズ)



 そこには、スキルがひとつだけあった。


「浮かび上がっているスキル名に触れると、スキルの説明が見られます、か。どれどれ」



 破戒者の黒薔薇(ラフィアン・ローズ)

  パッシブスキル。

  窮地に追い込まれると、能力が向上する。



「パッシブスキルは、持っているだけで効果を得られるスキルのことです、か。」


 そして俺は、ゴブリン戦のときに感じた、不思議な感覚を思い出す。


「ゴブリンに襲われたときに、時間の流れがすごくゆっくりに感じたのは……このスキルのおかげだったのかな?

 まあ、これからもモンスターとの戦闘があるだろうから、いずれわかるだろう」


 ステータスの確認はちょどいい休憩になったようで、身体の疲れもだいぶ取れた。


「よし、それじゃ、探索を再開するか」


 あれだけ怖い目に遭ったというのに、俺の中には『帰る』という選択肢は無かった。

 なぜかはわからないが、強いて理由を探すなら、いまは好奇心のほうが勝っているような気がしたから。



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 それからも俺は、生活保護ダンジョンの1階を歩きまわる。

 この1階に来る人はあまりいないのか、他の冒険者とはほとんど会わなかった。


 利用のしおりによると、モンスターは倒し尽くしてもいなくなることはなく、定期的に復活するそうだ。

 宝箱も取り尽されるということはなく、ランダムで配置されるらしい。


 その原理については書いていなかったので、とにかくそういう仕組みなのだと思うことにする。

 ゴブリンとは何度か遭遇したが、いちど戦った経験があったおかげで、そのあとはなんとか立ち回ることができた。


 相手が2匹とかだとちょっと厳しかったけど、オヤジからは複数を相手にした場合の戦い方も仕込まれていたので、なんと捌けた。


「オヤジのしごきは辛くて泣きそうになったこともあったけど、まさかこんな形で役に立つ日が来るだなんて……。

 おっ、またレベルアップしたぞ」


 ちょうど6匹目のゴブリンを倒したところで、腕輪が光り出す。

 ステータスを確認してみたら、新しいスキルが増えていた。



 灰燼に帰す暗勁ダーク・ダスト・スマッシャー

  アクティブスキル。

  拳による一撃を放つ。

  憎しみを込めるほど、威力が上昇する。



「騎士なのに、拳の攻撃スキルがあるのか。

 でも斬馬流にも拳を使った技があるんだよな」


 斬馬流は斬馬刀を武器にしているので、大ぶりによるスキができやすい。

 また接近してきた相手は斬馬刀で斬りにくいので、殴って追い払うんだ。


 そういう意味では親しみのあるスキルだったが、気になる一文があった。


「憎しみを込めるほど威力があがるって……なんだそりゃ。

 でもまあいいか、次にゴブリンと戦うときに試してみよう」


 しかしそういう時にかぎって出会わないもので、俺は敵を求めてダンジョンの奥深くまで来てしまっていた。

 2階へと続く階段も見つけたのだが、下に行くほどモンスターは強くなるそうなので、ひとまずは保留にしておく。


 さまよっているうちに、業務用のエレベーターのようなものを見つけた。


 それはこのダンジョンの入口にあったような、ファンタジー風の昇降機ではない。

 現代文明をしっかりと感じさせる、機械式の立派なエレベーターだった。


 そしてエレベーターの前には、これならバカでもわかるだろうと言わんばかりの、デカデカとした看板があった。


『こちらは、銀の腕輪の方の専用エレベーターです

 木の腕輪をしている方はご利用になれません。他の方のご迷惑になりますので近づかないでください。

 もし利用された場合は理由のいかんに関わらず、損害賠償を請求しますのでご注意ください』


「銀の腕輪? そんなものもあるのか。

 しっかし、木の腕輪をしてるヤツをあからさまに敵視してるな……」


 いずれにしても関わると面倒なことになりそうだったので、俺は足早にそのエレベーターホールをあとにする。

 さらに奥へ奥へと進んでいくと、エレベーターなど比較にならないほど、ものすごいものを発見した。


 それは俺にとって2つめの宝箱だったのだが、最初に見つけたものとはなにもかもが段違い。

 日焼けマシンみたいに大きく、金の細工がほどこされており、それ自体が宝であるかのようにピカピカと輝いていいる。


 ロールプレイングゲームとかだったら、ダンジョンのいちばん奥にあるようなデザインの宝箱だ。

 その手前には間違いなく、ボスが配置されているような。


 俺は唖然としながらも叫んでいた。


「す……すげぇ! こんな宝箱が1階にあるだなんて!」


 俺は吸い寄せられるように宝箱に近づき、あちこち眺め回してみる。

 そして、もしかしたら罠かもしれないと思いつつも、好奇心を抑えきれなかった。


 宝箱のフタにガッと手をつく。

 表面に映り込んだ自分の顔と見つめ合い、大きく頷きあった。


「よぉし、いくぞっ……!」


 力をこめて押し開こうとしたが、フタは軽い力であっさり開く。

 しかも少し押しただけで、電動みたいに自動で持ち上がってくれた。


 ゆっくりと、もったいつけるように開いていくフタ。

 中に入っているのは何だろうと、ワクワクが止まらない。


 たっぷりの金貨か? あふれんばかりの宝石か? それとも伝説の聖剣か?


 しかし中にあったのは、そのどれでも無かった。

 なによりも強く俺の目を奪い、俺の心を激しく高鳴らせたそれは……。


「じょ……女子高生っ……!?」

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