:おまけのような
お狐さまがめずらしくロールケーキを買ってきた。何かを買ってきてくれたことがめずらしいのではなくて、めずらしい、のはロールケーキのほう。
―お茶にしないか?
うん、とにっこりと言って、僕はお茶の用意をはじめた。
ロールケーキ、久しぶりかもなあと、フォークで表面のふわふわかげんを確認しては、口のなかにつばを充満させる。生クリームのなかに潜む黄色や赤のくだものを見つめ、まずは目でいただく。ふうと、息を吐き、いよいよというようにフォークを立てる。口にひとかけらを含み、こんなに生クリームを好きだったかと自分の嗜好を再確認する。きっとお狐さまも、と思い見てみると、でも、奇妙な光景だった。
「あ、ねえ、そういうふうに食べるものではないよ」
あわてて言うと、
―知ってはいるのだがねえ
言ってお狐さまは、ロールをほどいて真っ平らになった、かつてロールケーキと呼ばれていたものをじっと眺める。
―うまく説明はできないのだが、なんだかこの真んなかのあたりが窮屈そうというのか
「窮屈?」
―まるまり… 押し込められ…
「ロールケーキって、そういうものなんだと…」
―いや、わかってはいるのだ
「なら…」
―しかしな、ダメなのだ。見てしまうと広げずにはおれんのだ
お狐さまは、誰かのカタキでも討つみたいな鋭さで平らなただのケーキにフォークを突き刺し、半ばうめくように口へと運んだ。
―これはこれでうまいものだが
巻き寿司はどうするのだろう。きっとお店のご主人に怒鳴られるだろうなあ、お狐さまと行くのはよしたほうがいいみたいだ。僕はその日、お狐さまについてまたひとつ大事なことを学んだ。




