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【そして引っ越し、でもね、お稲荷様のせいばかりではないのだと思いながらも、やっぱり冷蔵庫のなかは油あげでいっぱいだ】




 トゲが抜けると、いままで止まっていたものが一気に流れ出した。あれだけさがし回っても見つからなかった引っ越し先があっさり見つかった。となりの街の、お稲荷様の横の一軒家。僕にしてもお狐さまにしても、住み慣れた街を離れるのは苦しい選択だったけど、下見に行ったときお狐さまが「落ち着くことよなあ」としきりに言っていたのもあってそこに決めた。もちろん、となり街にもスーパー「39ベリマッチョ」はある。


 神社の背景にはやや似合わないシロツメクサがわんさと生えている庭で、お狐さまは毎日ひとつ、四つ葉をさがすのを、引っ越してから日課にしている。


「今日も見つけたの?」


―うむ。わけはない


 お狐さまは見つけてきたその四葉のクローバーを、ジャムをたっぷりのせたパンの上に置き、あまりにも無造作に口へと運ぶ。


―どうした?


「なんか、いいなあって」


―ん。四葉のことかな?


「うん」


―ならば明日、余分にとってきてやろう


「それはいいよ」


 目だけで「こういうのは自分でとらないとって思うから」と僕は答える。


―うむ。そのとおりじゃな


 いつものように表情だけでお狐さまは応じ、ミルクティーに口をつける。


 僕とお狐さまの、特に何も起こらない一日が、そうやってはじまっていく。









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