魔剣完成
クエストをこなしたり、鍛錬を続けたりしているうちにシロウから連絡が有った。
「おお、剣の付与ができたみたいだ」
俺は一目散に転移陣に駆け込んだ。
一瞬でエリザベスの店に着くのさえももどかしいくらいに気が急いた。
「できたんですね」
「アワテルナ」
転移陣の先では、クマゴロウに制止された。
邪魔するな。
「できたんだろ」
「デキテナイトハイッテナイ。オチツケ」
うーむ、ゴーレムに宥められるとは。
「ハイ、シンコキュウ」
悔しいが、言う通りに深呼吸する。
大きく吸って、大きく吐く。少し落ち着いてきたようだ。
「もういいわよ」
奥からエリザベスの声が聞こえたので、やはり慌ててそちらに向かった。
「できたんですね」
「できたわ。まあ、傑作と言っていいと思うわ。あなたが、慌てて飛び込んできそうだったので、クマゴロウに関所になってもらったのよ」
「えー、早く見たいですよ」
「こういうのは落ち着いて見なきゃダメなのよ。落ち着いたかしら」
「はい、落ち着きました!」
「まあ、六分の落ち着きだけど、いいわ。アイシャ、持ってきて」
奥からアイシャが鞘に入った剣を持ってきた。
鞘にも魔法陣が施されているが、抑えきれないような力を感じる。
赤の魔剣や青の魔剣と同じくらいのオーラを放っている様だ。
「これは、凄い」
俺の気持ちは逆に落ち着いてきた。
感動が心を静めてくれている様だ。
エリザベスの方を向く。
「抜いていいですか」
「どうぞ、抜いてみて」
アイシャから受取り、右手で剣を抜く。
まるで刀身が光り輝いているかのようなパワーを感じる。
鞘を台に置き、両手で剣を高く構える。
なにもしなくても体中に力が漲ってくるのがわかる。
錯覚もあるかもしれないが、これならウーコンやシロウとも戦えるように思える。
「嬉しそうね」
自分でも口角が吊り上がっているのはわかる。
「笑顔が怖い」
アイシャが真顔で心配そうな表情をしている。
「世界を手に入れそうな顔をしていますよ」
俺は左手で鞘を掴み、刀身をゆっくりと納める。
気持ちが落ち着き、心が澄んでいくのがわかる。
「シロウにそのまま返したいようなセリフだぜ」
「いえいえ、私はそんな大それたことは望みませんよ」
「望んではいないかもしれないが、魔剣とペンダントを身につけた時は、それができると思っただろ」
「それは否定しませんが」
やっぱり否定はしないんだな。
俺は剣をしっかり胸に抱き、三人に深く頭を下げた。
「ありがとうございました。この剣に恥ずかしくないよう、益々精進します」
顔を上げて改めて三人を見ると酷い顔をしていた。
興奮して飛び込んできたのでわからなかったが、随分徹夜を続けたんだろう。
「とても大変な努力をしていただいたと思います。ありがとうございます」
俺はもう一度頭を下げてから転移陣に向かった。
「ヨカッタナ」
クマゴロウも俺の喜びが分かる様だ。
「受け取ってきたぞ」
俺はおそらくだらしなくにやけた顔をしていただろう。
「リード、嬉しそうね」
「嬉しそうです」
一度は落ち着いた心だが、やっぱり嬉しさは隠せない。
「さあ、モンスターを狩りに行こうぜ」
「今から?勘弁してよ」
「もうすぐ夕ご飯です」
「冗談だよ、冗談」
こんなバカな冗談を言うくらいに嬉しいんだ。
「ウーコンはまだか」
「そろそろ帰ってくるんじゃない」
「帰ってきたらこの魔剣で叩き斬ってやる」
「馬鹿なこと言わないでよ」
「リードがお馬鹿さんになっちゃったです」
「まず、そのニヤニヤした顔を何とかしてよ」
「仕方ないだろ、嬉しいんだから」
「ちょっと抜いて見せてほしいです」
「そうね、見せて頂戴」
「ご要望とあらば」
俺は剣をスラリと抜いた。
両手で上段に構える。凄いエネルギーを感じる一方で気持ちが澄んでくる。
「これは・・・凄いわね」
「凄いです・・・」
「本当にウーコンを斬りそうなくらいのパワーね」
「誰を斬るって」
凄いタイミングでウーコンが帰ってきた。
「キャッ、びっくりした。脅かさないでよ」
「ただいまっていっただろ、聞こえなかったのか」
みんな魔剣に気を取られていたんだろうな。
剣を鞘に納める。
オーラは幾分収まったようだ。
「なんだ、もうしまっちまうのか。俺を斬るんじゃなかったのか」
笑っている。本気の斬り合いをしたいんだろうな。
「鞘に納めとかないと、本当にウーコンい斬りかかっちまいそうだよ」
「おお、いいじゃねえか。いつでもいいぞ」
「まあ、そういう機会が来るかもしれないが、今は未だ待ってくれ。俺ももう少し長生きしたいから」
「そうか、残念だが待つよ。その気になったらいつでも言ってくれ」
なるべくその気にならないように冷静を保つように心を鍛えよう。
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