祭りの前の静かな夜
文化祭の準備期間が終わり、いよいよ明日から文化祭が始まる。
俺達は放課後に集まって最寄り駅に向かっている。弥生さんが大学から帰ってくるのを待ち伏せしてるのだ。
「いよいよ明日から文化祭ねショーマ」
「だな、楽しみ過ぎて寝れねぇかも」
「今夜は寝かさないよダーリン」
「まぁ……寝れねぇよな、今日は」
ソフィアとそんな話をしていると、改札に見慣れた姿が現れる。弥生さんだ。
今日の彼女はウェーブをかけた髪をサイドでまとめて、白の半袖Tシャツに薄い青色のロングスカート。
周りの男性が振り返る程、その姿は美しく大人びていた。
「私達と2歳しか違わないのに……」
「ふむ、あれが大人の魅力か。エロいな!」
「さつきお姉ちゃんの胸、バインバインしてます」
俺達を見つけると、弥生さんは満面の笑顔で手を振り小走りでかけてきた。葉月が言ったように、その2つの武器は周りの男からしたら正に最終兵器。
「しょうく〜ん、みんな〜今日はどうしたの?」
弥生さんは俺達がいる事が不思議だったようで、駆けてきながら疑問を口にする。
「弥生さんお疲れ様!」
「お姉ちゃんお疲れ様です」
輪の中に合流するとそれぞれに労いの言葉をかける。そんな弥生さんは嬉しそうにはにかんでいる。
「別に大したことじゃないんだけどさ、明日から文化祭じゃん?」
「うん、そうだね。私も料理を出すのが楽しみだよ」
弥生さんは祖母の時子ときこさん達と一緒に創作料理をする。その準備で大学に顔を出していた。
「なんか、学校では前夜祭みたいな事やってるんだけどさ……俺はそういうの苦手だから」
俺の口調は少し頼りなくなっていたけど、睦希むつきとさつきがその後を引き継いでくれた。
「翔馬がみんなと一緒の方がいいって言ったから」
「うむ、私もその意見に同意でな」
「あの……クラスの皆も大事ですが、先輩やお姉ちゃん達と過ごしたかったです」
「そうね葉月、まぁワタシは元からそのつまりだったし」
俺達の意見に弥生さんは納得したように頷き。
「もぅ! みんなサイコー」
ギュュュュっと俺達5人をその柔らかな胸に押し当てて抱擁する。
「おわっ、弥生さん……人が大勢いる前で」
「おふぅ。これが、大人の弾力」
「ソフィ、そんな事言ってる場合かぁぁぁ」
改札口の一角で抱き合っている光景は異様だったかもしれないが、幸い通勤通学でごった返しているので周りは気にしていなかった。
「じゃあ、みんなで帰ろうか」
「おー!」
「ふふ、弥生お姉ちゃん楽しそうです」
「1人よりみんなでいた方が楽しいわよ〜」
葉月に抱きつきながら一緒に腕を組んで歩いている。俺は睦希の隣に行き、小声で話す。
「睦希、調子はどうだ?」
「う、うん……なんとか」
俺が耳元で話しかけたせいでビクッとなったが、本題は文化祭の方だ。
「出番は最終日だから今から緊張してもなぁ」
「そういうなら、緊張ほぐしてよ!」
「どうやって?」
「一緒にお風呂と一緒に寝るとかで……」
「そんなんでいいのか?」
肉食系女子達のせいで俺の感覚は狂っている。もはや一緒に寝る事やお風呂に入る程度では動じない。まぁ体の一部は動くのだが。
「そこから先までいいの?」
「却下だ」
「ほらね、だからお風呂と寝るで我慢するわ」
ソフィア達に比べたら睦希は常識人な方だ。俺が寝ている時に何をしているかは知らないが。
「とりあえず、明日と明後日は楽しんでいいんじゃないか?」
「そうね、明日は葉月と一緒に回るし、2日目は弥生さんとさつきとソフィアと一緒だから安心ね」
「空いた時間に俺も回ってやるよ」
「いいの?」
「あぁ、ここでソフィだけとか葉月だけとかは公平じゃないだろうしな。時間を見つけて全員と回るつもりだ」
明日のトップバッターはロシアンガールだ。肉食乙女の最先端にして最古参。正直、体が持つかわからない。
「ソフィアは手加減しないと思うわ」
「はは、お手柔らかに頼むと言っておく」
心の中を見られたようで俺はお手上げのポーズをとる。最終日の睦希には笑顔になってもらう為に俺は少しだけネタバレをする。
「最終日のライブ。楽しみにしてろよな」
「してろよ? 私が楽しませる側じゃないの?」
「まぁ、そうなんだが……それも含めてお楽しみだ」
「コソコソやってると思ってたけど、何する気?」
「秘密だよ、多分ビックリして腰抜かすぞ?」
「エロい事?」
「なんでそうなるッ!」
同居を初めてから、睦希の性知識に拍車がかかったと以前弥生さんから聞いた事がある。まぁ、その元凶が弥生さん本人なんだが、それは置いておこう。
「当日までのおあずけ、これ以上は言えない」
「実力行使は?」
「尚更ダメだ」
「寝込みを襲うのは?」
「やめてください、ごめんなさい」
ダメだ、俺の貞操が危ない。
「ふふ、冗談よ」
「その言葉を信じてるよ」
俺達は帰り道にスーパーに寄って、ほんの少し食材を買い足す。というのも商店街の挨拶回りをしたお陰で、食材には困っていないどころか有り余っている。
「よぉーし、帰って鍋にするぞー!」
「「「「うぇーい!!」」」」
「えぇ? こんな暑い日に鍋ぇ!?」
ロシアンガールソフィアちゃんだけが驚きの声をあげる。
「暑い日に熱い鍋……最高じゃないか」
「うむ! 全裸で食べる鍋はいいぞ」
「合法的に脱げるわね、お姉さんも今日は全裸よ」
「私も負けないですっ」
「金色の本気を見せてあげるわ」
「いや、お嬢さん方……脱ぐの前提で話をしないで。俺が食事どころじゃなくなるから」
「それなら勝負ね! ワタシも負けないわよ。景品はショーマの全裸ね」
「「「「賛成ッ!!」」」」
ソフィアさん、そんな訳のわからない勝負にノッちゃダメ。あと俺を景品にしないで。
その夜は、乙女達の鍋を舞台にしたホントに熱い戦いが繰り広げられた。ナニが熱くなったかは想像に任せる。
明日からは、文化祭。
文明開化の音がするぜ!




