準備と下準備
文化祭まで今日を含んで残り3日となった。俺達のクラスはお化け屋敷をやる事になっているのだが、俺の仕事はほとんどない。
生徒会の企画に参加しているのもあり、クラスの役割は生徒会に提出する書類作りや広報の担当になったのだ。
「ショーマがいないなんてつまんない」
「まぁ、1日目は一緒に回るから勘弁してくれ」
「うぅぅぅ」
俺の隣には黒いマントを翻し、銀色の髪が圧倒的存在感を放っている吸血鬼の姿をしたソフィアの姿があった。
「ソフィあんまり近づかないでくれ」
「なんでよ! 似合わないっていうの?」
違うそうじゃない。
「似合い過ぎてるから困るんだよ! その格好は俺の理性の限界を超えてる」
「……だきっ!」
効果音を口に出して、満面の笑みを見せるソフィアの進撃は止まらなかった。
「相変わらずお熱いねぇ、おふたりさん」
「春樹か、そっちはどうだ?」
声を掛けてきたのはキョンシーの格好をしたクラスメイトの春樹。唯一このクラスで心を許せる男子生徒だ。
「おう! 内装もほとんど終わってるからな。しかしこの学園は相変らすわ規模がデカイな」
「俺もそう思う」
この学園は文化祭が終わればすぐ夏休み。そして現在は授業は行われておらず目一杯準備に取り掛かる事ができる。
去年体験してるからわかるが、地域の祭り並に規模が大きい。
「ショーマは準備大丈夫なの?」
「俺は問題ないよ、先週さつきと一緒に最後の打ち合わせは終わったし、後は最終日のライブに向けて睦希のメンタルを整えるだけだな」
「ふふふっ楽しみね!」
「あぁ、どんな顔するんだろうな」
俺とソフィアの話に春樹は疑問顔で尋ねてくる。
「最終日になんかあるのか?」
俺達は悪い笑みをしながらその質問に答える。
「「秘密!」」
春樹はお手上げだと言わんばかりに苦笑いを浮かべて作業に戻って行った。
「ソフィあのさ」
「ん? どーしたのショーマ」
隣でニコニコしている吸血鬼ソフィアちゃんに少し緊張しながら話かける。
「今日の夜、部屋に行っていいか?」
「部屋に? 構わないけど……もしかして夜這い?」
「夜這いを予告するやつなんていない」
「勝負下着で待ってる」
「聞けよ!」
いつものソフィアらしいおちゃらけた返しに少し心も落ち着いてくる。
やっぱりソフィと話していると落ち着くな。
「……先輩、聞いてくださいよー」
「おぉ、いきなりどうした葉月?」
帰宅するなり葉月が俺にしがみついてきた。珍しくアタフタした様子はなく、そのかわり悲壮な顔をしていた。
「実は……文化祭で」
「うん、文化祭で?」
「空手部の演舞に出ることになったんです!」
「うぉっマジか! 葉月が空手してる所見れるのか。ラッキー」
「ワタシも楽しみだわ! 師匠がとうとう表舞台に」
「いつから葉月を師匠と呼んでんだよ」
俺とソフィアと葉月。
今日はこの3人で夕ご飯の準備だ。さつきは生徒会の仕事。弥生さんと睦希はカラオケで練習中。
俺の怪我も治ったので久しぶりに全力で料理がしたくなったのでキッチンに立っている。
「うぅぅぅ……目立つのは嫌ですぅぅ」
「元々葉月のクラスは何する予定だったの?」
ソフィアが話題を変える為に話をふる。
「……はい。私のクラスはたこ焼き屋なんですけど」
「それも行ってみたいな」
「確かにね! それで?」
「空手部の友達が過去の大会の動画で私を見たらしく……」
「なるほどね」
「一緒にやらないかと」
「ですぅぅぅ」
「葉月はお人好しだからな、断れなかったんだな」
「ショーマに対しては誰よりも強気なのにね。色んな意味で」
ふにゃふにゃと座り込む葉月。なんだかお餅みたいで可愛い。
「まぁ、動画が残ってたのは仕方ないさ。それでも、友達はそれを見て一緒にやりたいって思ってくれたんだろ?」
それとなく友達を気遣いながら葉月のメンタルの修復を試みる。
「それはそうですけどぉぉ」
まだ足りないみたい。なのでとっておきの切り札を使う。
「葉月が出たら、なんでも言う事を聞いてやるよ」
「!!」
葉月の目が輝きを取り戻す。いつもより増し増しだ。
「な、なんでも言う事を! ホントですか先輩!」
「あ、あぁ……エロ方面は禁止で」
「ちッです!」
珍しく葉月が舌打ちをしている。
普段は、お姉ちゃんズに遠慮している節ふしがあるので、どうやら頭の中ではエロ方面で考えていたらしい。
「葉月さん、それ以外ならオッケーだから。エロ方面は勘弁してくれ」
「うぅぅぅ、仕方ないです。何か考えておきます」
どうやら少し機嫌が戻ったみたい。
さて、料理の下準備に戻りますか!今日の献立は牛すじカレーになりました。




