84話「殺人愛好家」透真瞬一。
そろそろ夜もふけて参りました。しかし、皆さんの知見には驚くばかりです。私など、伝聞でしか語っておりませんからね。
今度の話もまた、友人からの伝聞です。ですので、その正確性については、お察しください。
これは友人から聞いた話なのですが。
その友人には、一つの奇癖がありました。
どうしても、犯罪を実行したい。そういった欲望を満たさなければ、生けていけなかったのです。
今回はその中のケースの一つをお話しましょう。
友人は犯罪行為を日常的に行っておりました。朝の散歩の途中、通りすがりの国会議員を殺害し、昼食を取りながら眼の前の産業ビルを爆破、夕食の後の腹ごなしに幸せそうな一家を惨殺。
意味や目的はありません。しいて言えば、殺傷こそ喜び。金銭目的で殺害した事はまだないはずです。
そして友人には前科もありません。毎日人殺しをしていながら、いまだに捕まってはいないのです。ここが一番のホラーでしょうか。
とは言え、日本全国での一日の死亡数に比べれば、殺人愛好家の友人でさえ、あまりに少ない。逮捕するまでもないのかも知れませんね。
・・・格好をつけすぎました。実は捕まっていないのには、トリックがあります。
友人には、それなりに友人が多く、いつでもアリバイの確保、道具の調達、施設警備レベルの調査など、多くの犯罪の協力を要請していたのです。
これらを個人でやっている人間が居たなら、それこそホラーでしょう。
そして私の願いは、そんな人間に出会う事。
私より多くの人間を殺傷した、本物に会いたい。
もしも皆様の知り合い、ご友人に心当たりがあれば、ぜひお教えください。いくばくかの謝礼も考えております。・・・ええ、本気なのです。私は。
では、次の方。