信長の戦い方
岡部元信「先の御館様が亡くなられたいくさに付いてであるが、どうやら信長は……。」
今川義元の動静を掴んでいたらしい。
岡部元信「我らは丸根と鷲津を落とした。これを信長は救う事が出来なかった。その理由は……。」
万全の態勢で今川義元が待ち構えていたから。
岡部元信「御館様は丸根鷲津を見殺しにしたら信長は外聞を失う事になる。きっと信長はやって来る。来たら殲滅するお考えにあった。しかし信長は来なかった。正確に言えば行く事が出来なかった。
丸根と鷲津は落ちた。信長は助けようともしなかった。信長の家臣の心は離れ、自壊への道を転がり落ちる事になる。そう判断された御館様は我らの権益内へ兵を移動させる事を指示。移動となればどうしても隊列は縦に伸びるもの。御館様の周辺が手薄となる所を……。」
信長は狙っていた。
岡部元信「たとえどれだけの兵を有していたとしても、大将を失えば戦いを維持する事は出来ない。信長はこの1点賭け、情報を収集。その結果が今の状況である。
元康は元康で情報を収集している事であろう。信長を動かす事により、背後に潜む不穏な者共を掃討する構えにある。信長が北部方面に割く事の出来る兵も算出した上での判断であろう。
『これであれば信長の侵入を防ぎながら、犬山を安定化させる事が出来る。』
と。ただ問題は……。」
信長の戦い方。
岡部元信「信長の戦い方で特徴的なものの1つに長槍がある。通常槍は2間半を採用している。それに対し信長は3間半。」
朝比奈泰朝「長いですね?」
岡部元信「うむ。」
朝比奈泰朝「しかし長いとなりますと槍は重くなりますし、小回りも利かなくなります。最初の攻撃を凌いだ後、馬で掻き乱せば……。」
岡部元信「実際にはそうならなかったそうな。信長が今の居城清洲を攻めた際、圧勝に終わったとか。」
朝比奈泰朝「何か秘密でも?」
岡部元信「鳴海に攻めて来た織田勢が棄てて行った槍を手に入れたのだが、我らが使っている物よりも軽く細い。その上、徹底的に乾燥させた物で拵えている。加えて信長の槍隊は……。」
突くのではなく叩いて来た。
岡部元信「『槍は敵を突き刺すもの。』
の固定化概念を逆手に取った事により、信長は兵をほとんど損ねる事なく勝利を収めたとの事。」
朝比奈泰朝「それでありましたら連続して使用する事が出来ますね……。それにただ叩くだけでありますから特別な訓練が施されていない新兵でも使う事が可能……。」
岡部元信「うむ。信長の戦い方はこれだけでは無い。」




