表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/56

王族の話し合い2

「さて……まずはフォルニール。第二王子と育ったゆえの柔軟な考え方かの。市井も見聞きしてきたお前のこれからにもワシは期待をしておる。が、今は感情に流されるな。物事の本質を見ようとし、それを見逃すな。

 ユウリが己の感情のままや誰かの言うなりに、善悪も考えず自然の力を操り害をなそうとすると思うか?これから先、共に暮らそうと思っておるユウリがだぞ?」


 王の口調は父親のものだった。柔らかな笑みを讃え、自分を見据える態度をかえた王の言葉にフォルは慌てて答える。


「ユウリは、そのような事をしません」


「ならば、そう事を焦るな。まずは、お前が臣下に下る事も含めた考えをユウリに話し了承を得る事が先であろう。ユウリが後から知れば、苛まれるだけだぞ。

 それに、この国の王はワシだ。誰にもその座を譲ってはおらん。ましてや、お前が臣下になる時期でもない。お前も王になるやもしれんのだぞ。国を支える力も一つの方法にこだず広い見識も身につけろ。」


 王は更にボタンを外し衿元をゆるめると、アースティンに顔を向ける。


「そして、アース。

 力と知識を持つユウリがいなくては他国と渡り合えぬほど、今の我が国は脆弱か?民は貧しく苦しんでいるか?

 そう思うならば考えろ。どうすれば民が豊かに暮らせるようになり、国を強く守れるか。我が国が他国と渡り合えるかを先をしっかりと見据えて采配をふるえるように考えろ。お前には、その資質がある。

 ユウリの力はユウリの物だ。ユウリの解説は、ワシが知識を願い叶えてくれておるにすぎん。しかもそれは本来はジュリアがせねばならぬ事。そして、この世界には無いものだ。

 言ったはずだ。過ぎた物は混乱を起こす毒にしかならん。扱い方には気をつけるべきだ。

 それとも、なにかあった時にはユウリの力に頼り強制的に使わせるつもりか?国としては確保しておきたい考えも分かるが、いずれ帰るであろうユウリの力にそこまで固執してどうなる。ユウリは帰るのだぞ。

 今までお前は確かな心得を身につけてきただろう。大丈夫だ。少し見方を替えてみれば、進む方向もお前なら見えてくるであろう。

 言いたくない事もケジメとして決断し言わねばなはない事や、悩む決断も出てくるだろうが、それも責務と割り切ろうとする努力もこれからは必要になるだろう。一歩引いた立場で冷静に状況を見る事を忘れなければ、なにが最善かの判断もできるはずだ。


 二人とも民の為に努力を重ねる事も忘れ、安易に取られる考えでユウリを囲いこもうとするな。


 ワシとしては、このようにお前らとくつろいで話せる時間のきっかけとなったユウリに感謝だがな」


 珍しくくつろいた様子の王の言葉や態度は父親だが、内容は王族に対するもの。最後の方は小さな笑い声まで出ていた。

 そんな様子が二人に、より深く王の気持ちを伝わらせ、神妙な面持ちで何も言えなくさせられてしまった。


「まぁ、妃を迎えれば側室を持とうにも最低二年近くの期間が必要だ。ユウリを側室に出来るほど、これからユウリからの信頼を得られ待たせられるのか?

 側室に迎えるという事は、感情的にも政治的にも問題が増える。守りきれるのか?

 臣下に下り領地を管理するにしても、その仕事は多岐にわたるぞ。その地に慣れ改良点や問題点が見えるようになりながら、人を育てまとめあげて信頼を得るように身を粉にして動かねばならん。その年単位の時間、ユウリと話し絆を深めるどころか寝顔しか見られない日の方が多いかもしれん。まぁ、婚約のみとなければ寝室も別にされても文句も言えず、顔を会わす事も朝食くらいになるかの。


 稀有な力を持つかもしれぬユウリを、他国に出したくはない事はワシとて同じだ。だがユウリは、いずれ帰る…いや、帰してやらねばならない存在。

 二人ともユウリとお互い想い合っているならまだしも、そのような理由で婚約や側室にするという事は、これまで以上にユウリを国に巻き込む事にもなるぞ。確実に騒ぎになる。


 だが…難題だ。

 とりあえずユウリに隠密はつける事にしよう。他の願いについては保留だ。

 お前達兄弟姉妹は、ワシが思うより出来た子らだ。これからも支えあっていけ。あの、わがままジュリアでさえ下手な恋愛物の書物より役立ちそうな書物の方が多かったぞ。お前達も妖精だ何だのと舞い上がらず少し頭を冷やせ」


 二人の解りましたの返事に王はソファーに背を預ける。


「さて、まだ寝るには早いな……。仕事も立て込んでおらん。せっかくだ、お前ら付き合え」


 いそいそと嬉しげに戸棚に向かう王に、顔を見合わせ首を傾げるアースティンとフォル。


 王が机に用意した物は、酒瓶とグラスとツマミと氷だ。

 この世界には冷蔵の魔法を箱にかけ食べ物を保存はしたが、冷凍の魔法は誰も使おうとしなかった。せいぜい攻撃魔法か、発熱時に氷のカケラを作る程度だ。どちらも、ある程度の魔力がいるために一般的ではないが。


 だが、それを兼ね備えた冷蔵庫の存在と利用方法をユウリから聞いた王は、夜な夜な自ら開発に勤しみ確かな物にしたそうだ。そして手放せなくなったそうだ。


「これで出来た氷を酒に入れると、冷蔵で冷やすとは一味違う酒になる。旨いぞ」


 息子二人と肩肘はらずに酒が飲め、尚且つ自分の冷蔵庫を披露できる滅多に無い機会を得た王は、喜々として喜々として酒宴の準備を整えていく。


「父上……」


 いつもの威厳溢れる王ではなく、気の良い親父となった信じられない姿を見てしまった様な顔のアーティン。


「どうりで父上がユウリとよく話していたと思ったら……。それは、本来はジュリアのすべき事なのでしょう?」


 呆れたようなフォルニール。これまで、しつこい位に聞かれていた市井の様子は王と、好奇心溢れる親父と立場は半分半分だったのだろうと納得出来た。


「さあ、まずは乾杯だ!」


 こうしていつ終わるとも知れない酒宴が始まった。そして翌朝には宰相と宰相補佐に、だらし無い格好で床に雑魚寝していた三人は叩き起こされた。

 二日酔いで頭を抱える息子二人も、宰相達が浮かべる額の青筋をなんとか消そうと、これが当たり前のような言葉を紡ぎ続ける王も、どこか楽しかった酒宴の翌朝の晴れやかな表情をしていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ