プロローグ 退屈な夜
退屈だ…実に、退屈だ。
ここのところ、本当に暇でたまらない。もっと日常に刺激がほしい。
今の僕は、本当に何もない、ただただ空っぽで無機質な存在。
別に、今の生活が悪いと言っているわけでもない。生活水準だってそこそこいいし、仕事が忙しすぎるわけでもない。まあ、忙しすぎないのが返ってつまらない日常を生み出しているのかもしれないが…
僕はそんなことを考えながら作業の椅子に腰掛ける。今日は珍しく残業があり、少しだけだが退屈ではない。
しかし、依然としてやる気は出ない。それもそのはず、自分にとってこの仕事は簡単すぎるからだ。
別に自分を高く評価しすぎているわけではない。だが、本当に簡単すぎて面倒臭いというだけなのだ。
作業と言っても、ちょろ〜っと紙に色々と書くだけの単純作業。やる気が出ないのは必然だ。
僕はふと、好きな小説の表紙に目を向ける。
その小説は良くある異世界もので、とある人間が異世界に行って自分の世界の知識なんかを生かして社会的地位を高めて無双する、本当によくある異世界無双系の小説だ。
僕はこの本にどうしようもなく見とれてしまい、何度も読み返してしまう。
「はぁ…僕もして見たいなぁ…異世界転移…」
異世界。もしも異世界があるならそれは一体どんな世界だろう。
そんなことを考えても異世界なんてものがあるわけないし、仮にあったとして転生があったとしても行けるわけではない。
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「zzz……zzz……」
「っ…!」
どうやら、寝ていたようだ。
まずい…作業をやっていないのにも関わらず呑気に寝てしまった。
…そうだな、もし今目を開けた瞬間異世界召喚ーー!とかだったら最高なのにな…
僕はそう思いながら瞼を開く。
しかし、そんな妄想は薄いガラスの様に砕け散る。
…やっぱり、そう簡単に異世界に行くことなんてできないかぁ。
そう言えば、異世界召喚とか転生とかって…小説とかで見かけるのは人生に絶望してる系の人とか、人生のどん底的な人が多いよなぁ。
例外はいくらでもあるとは言え、小説ではそういう人たちに注目されることが多い。
仮にそういう条件があったとして、果たして自分は条件に当てはまっているのだろうか…と聞かれれば答えは『いいえ』だ。
別に無職を見下して自分の地位に自惚れているわけではない。今考えていることは、自分にはそういうことが起こりうる機会がないということ。そう考えてみると無職の人達を少しだけ羨ましく思う。
なら自分も職を失ってみる…?いや、流石にダメだ。職を失えば異世界にいけるという妄想をしていたが、それだってただの小説あるあるに過ぎない。そもそも異世界がないという前提条件の元考え事をしていたっていうのに…
…だが、本当に異世界はないのだろうか。
昨今の世の中、常識は疑って行ったほうがいい。自分の職業だって常識に囚われていては発展に繋がらない系の職業だ。
もしも、自分の力で異世界を見つけることができるなら。異世界に行く方法を現代の技術力で見つけられるのなら。
さっきから考えがコロコロと変わっているのはきっと寝不足のせいだろう。だけど、その微睡んだ考えがもしかしたら新たな発想を産んでいるのかもしれない。
その結果が異世界に行く方法が何かしらあるのではないか、という発想。実に幼稚で、人に言えば呆れられるような発想…だが、その発想には確実に夢と期待の2つがあった。
…そうと決まれば、僕の人生の目標は決まったも同然。
現代の技術を駆使して、異世界に行く方法を見つける…!!!




