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73話:迷宮部隊参戦

「重傷者はいないな?体力が残っている者2名は裏門の警戒に当たれ。トンマーゾ、リロッコのための水を汲んで来てくれ」

「わかりました」


 こっちは一段落か・・・館の中はどうなっているか・・・ニンフェアとプルーニャにオルテンシア様もいるから心配ないとは思う・・・

 門の外には帝国騎士が10名以上残っている。これ以上人数を割くわけにはいかないが・・・

 フィオーレ名誉男爵は中々の魔法使いのようだ。これなら持ちこたえられるか。





『ロレンツォ大尉聞こえますか?』


【念話】か・・・つながった時点で俺が生きていることは分かっているから、無視はできない。


「わたしだ。定時連絡が遅れたな。こちらは問題ない。現在「迷宮」地下13階層を攻略中だ」


『ご無事で何よりです。リッチ侯爵様より、国王への報告もあるので一度戻るように、と』


 ちっ、順調にきていると言うのに・・・


『あと、フォンターナ中佐より、ゴブリン・ロードとコカトリスが、フラヴィオ様のいるエリカの町を襲撃する可能性もあるので、一度立ち寄るように、と』


 フォンターナ子爵か・・・たかが子爵だが、軍では一応上官だ。フラヴィオなどどうでもいいが、仕方ない・・・。


「了解した。エリカの町に立ち寄るとしよう」

『ありがとうございます。通信終わります』


 結局、この剣の秘めた力が分からなかったな。切れ味は良いが、それだけとも思えん。王都で調べてもらうしかないか。


「探索を打ち切る。参謀、()()()()を頼む。場所はナターレ館中庭だ」





「ぎゃああああああっ!!」


 なんだ!?トンマーゾが水を汲みに行った裏庭から悲鳴が聞こえた。警戒して見ていると、建物の影から幾人もの侯爵軍騎士が現れた。こいつら一体どこから!?


「なんでこんな所にゴブリンがいる?駐留部隊は何をやっているんだ?」


 コイツは・・・強いぞ・・・先頭に立つ騎士からプルーニャ並みの力を感じる。


「隊長、ゴブリンの群れですね。門が破られたのでしょうか?」

「まあいい、所詮ゴブリンだ。蹴散らせ」

「「「はっ!」」」


 騎士10名程がこちらに向かい駆けてくる。どうする!撤退・・・いや!ジプソフィーラ様がまだ治療中だ!逃げるわけにはいかない!!


「フィオーレ様!」

「勝ち目はないですよ・・・【泥沼(パルーデ)1】」


 騎士とこちらの間に泥沼が現れた。止まれなかった騎士4名が泥にはまり動けなくなる。すかさずナイフを投げて3名には防がれたが1名の眉間を貫く。


「なに!?」

「恩恵を使うぞ!このゴブリン!!」

「投擲も恩恵が効いてるな」

「ただのゴブリンではないようだ。本気でいけ!油断するな!」


 泥沼を迂回して騎士たちが迫ってくる。正面から戦っては勝ち目がない。食い止める者がいないと・・・


「【聖騎士3】!!」


 アレクが前に出て防御”スキル”を発動した。


「うっ・・・身体が勝手に・・・」

「なんだこれは!?」


 アレクから少し離れていた騎士が態勢を崩しながらアレクに向かっていく。アレクは4人の騎士の攻撃を方形の盾で受け止め、そのまま弾き飛ばした。2m近い体格は伊達ではないようだが、防御だけの”スキル”ではないのか?


「回り込んで囲め!」


 騎士が背後に回り込み一斉に攻撃を仕掛けると。


「【火炎3】!!」


 ボワッ!!


 3m近い火柱が上がり、アレクの背後から迫った騎士二人が火だるまになった。


「ぎゃああああああっ!!」


 新手の騎士にひるんでいた他の影たちも、アレクとルカさんの活躍に気合を入れなおし反撃にでた。

 しかし・・・数が足りない・・・このままでは・・・


「負傷した者は後ろに下がれ!フィオーレ様!」

「【泥沼(パルーデ)1】【泥沼(パルーデ)1】!」


 敵の動ける範囲を狭め、1対1で戦える状況を作り出す。先頭はアレクが盾を構え防ぎ、後ろから”魔法”や弓矢で攻撃をする。時間稼ぎにしかならないが、今はその時間が欲しいのだ。


「ちっ、いつまで遊んでいる!!恩恵部隊!」

「「「はっ!」」」


 マズい!敵の”魔法使い”が・・・


「「”炎よ舞い踊れ”!」」

「「”風よ吹き荒れよ”!」」


 ボウンッ!!ボワンッ!!


「ぐああああっ!!」

「くぅ・・・!」


 8人の影が負傷し動けなくなった。数が違いすぎる・・・一回の攻撃で立っているのはアレク、ルカさん、フィオーレ様とわたしだけだ・・・


「これであと4匹か。トドメをさせ」


 これまでか・・・





「ゴフッ・・・はぁはぁ・・・あんたも中々しぶといね・・・」

「それはこっちのセリフだ・・・いい加減くたばれよ、人外!!」


 ローブはボロボロになり邪魔になったので脱ぎ捨てた。体中傷だらけで、致命傷をもらってないのが不思議なくらいだね。背中の羽が鱗粉を振りまき、そこだけが元気に動く。


 ズバッ!!


「ニャ!?」

「ちっ!こっちも人間じゃねえっ!魔物のワーキャットだ!!」


 プルーニャのフードが切り裂かれ、猫耳があらわになった。プルーニャも傷だらけですでに【回復】を使う魔力は残っていない。


 まだ・・・プルーニャの体力が残っているうちに・・・


「プルーニャ!!ソフィー様を連れて逃げろ!!ここはボクがっ!」

「にゃに言ってるニャ!逃げるにゃらみんにゃ一緒ニャ!!」


 やっぱりそう言うよね・・・


 じゃあ、どうする・・・このままじゃ・・・


「「くたばれっ!」」


 ガキン!キキンッ!!


「くそっ!プルーニャ耐えろ!ソフィー様が治るまで!!」

「わかってるニャ!くたばったら承知しにゃいからニャ!!」

「アレクさんがんばって!!もう少しでソフィー様が!!」

「ああ!耐えてみせるさっ!!ソフィー様が病気に負けるわけがない!!」

「ああ~!ジプソフィーラ様の御姿を見ないと力がでません!!」

「プラトリーナ様との約束を果たすまではっ!!」





 バンッ!突然オルテンシア様の部屋の窓が開きました。


「はぁ、はぁ・・・【範囲拡大ガンマ・アンプリアータ4】・・・」


 この声はっ!?


「みなさん・・・ごめんなさい・・・遅くなりましたね・・・」


 窓枠を掴み、必死に立ち上がろうとする姿が見えました。


「「ソフィー様!!」」

「「ジプソフィーラ様!!」」

「きゅーっ!!」


 ふらついてはいますが、しっかり立ち上がり右手を空に向け、


「・・・【付与(コンチェーデレ・)魔術(ラ・マギア:フォ)体力(ルツァフィジカ)1】!みなさんがんばって!」


 ソフィー様の言葉には自然と【鼓舞1】の効果も乗っていました。

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