58話:スキル獲得確率
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今回の話はややこしい計算なども出てきますが、「低確率なんだな~」くらいで読んでいただけると幸いです。
「はっきり言ってこれで任務完了よ!!」
ミーナが茂みから顔だけだして完了を主張する。理由は聞くまい・・・
「そうだな~、侯爵軍の騎士様にコカトリスを倒せるとは思えないしなぁ」
「それでも俺たちが倒せ・・・てはいないけど調教できたくらいだ、突破される可能性はあるだろう?」
死に掛けていたミルが気楽なことを言うけど、俺たち4人でここまでできたんだ。侯爵軍の騎士だってできるかもしれない。
「あのね~、ここまでできたのはわたしたちだけの力じゃないのよ!?」
「どういうことだ?」
「姫様よ!!あんな非常識な力を見せられてまだわかんないの?」
確かに選んで”スキル”が得られたのはすごいとは思うけど。
「侯爵軍は1万はいるんだ。同じ”スキル”を持ってる奴もいるだろう?」
俺は当然の疑問を口にする。
「わかってないわね・・・いい?わたしたちはれべる20前後、侯爵軍人もトップ以外は同じくらい、得られる”スキルポイント”は10なのよ?」
「そうだな、それで?」
ミーナは何が言いたいんだ?スキルポイントの話は今は関係ないと思うが。
「も~・・・10しかないけどすでに”スキル”を幾つも持っていたでしょ?ディオの余ってた”スキルポイント”はいくつよ!?」
意味がわからないな・・・どういうことだ?
「3だな・・・」
「それで【熱感知2】をとったのよね?」
「そうだな」
ミルとデーア姉さんも「?}って顔をしている。ミーナは何に気づいたんだろう。
「あ~いい!わたしの話をした方が早いわ!わたしも余ってたのは3で【魔物調教2】をとったわ。でも、姫様の情報操作がなかったらどうなってた?わたしの取得可能スキルは24もあったわ。1/24よ!さらに2に上げるのに元々持ってたスキルと未取得スキルと、どれが上がるかわからないのに選んで【魔物調教2】にできた。2回目も同じスキルを上げられるなんて1/24x1/24・・・1/576なのよ!」
そう聞くとすごいことだな・・・超低確率を”付与魔術:情報操作”で引き当てたってことか?
「しかも【魔物調教】はみんなが取得可能な”スキル”じゃない。実際、影の仲間22人で持っていたのはわたし一人だった。取得可能なのは1/22。【魔物調教2】を取ろうと思ったら姫様の仲間で得ることが出来るのは1/576x1/22で1/12672。12672人いて1人が【魔物調教2】を取れる確率なのよ!ほら、侯爵軍の兵数を越えちゃった」
「ああああぁ・・・」
そうだ、そうなのか。元から【魔物調教1】を持っている奴もいるかもしれないから正確な数値ではないが、ジプソフィーラ様の作戦を行うための人員4名を集めるにはさらに低確率になる。それどころか50人いや100人に1人のスキルだったとしたら1万程度の人数では・・・
「わたしは姫様は、昔話にあった「恩恵の神」なんじゃないかと思うわ・・・」
恩恵の神とはこの大陸で昔から語り継がれるお伽噺だ。遥か昔の古代文明が栄えていたころ、人は皆不思議な力が使えたと言う。それをもたらしたのが恩恵の神だ。
みんなが沈黙する。
「へへ・・・神様か・・・俺たちのジプソフィーラ様はすげえ人だったんだな」
ミルが半笑いで頭をかく。
「あ、ああ・・・そうだな・・・俺たちはまだ体験していないが、ジプソフィーラ様の”付与魔術”は全部で12もあるそうだ・・・」
「そ、そんなに!?・・・そんな”付与魔術”を全部受けたらどうなってしまうのかしら・・・」
「わたしたちも~神の使徒になれるかもしれませんね~」
「「「!!!!」」」
デーア姉さんの何気ない言い方が、そうなって当たり前と聞こえた。どんな”付与魔術”があるのかは知らないが、たった一つの”付与魔術”でここまで混乱するんだ。12個すべての”付与魔術”を頂けたら、想像を絶することになるのだろう。
「さてと~ミーナさん~スカートと~パンツ乾きましたよ~」
全員”付与魔術”のことを考えてるかと思いきや、デーア姉さんは一人マイペースだった。ミーナのスカートとパンツを両手に持ってヒラヒラさせる・・・
「お、おいっ!」
「えっ!?」
原因を知っている俺は止めようとしたが時すでに遅く、ミルにもばっちり見られた。
「スライムさんの~アップリケが付いてる~おパンツ~です~」
「ばっ!なんで言うのよっ!!早く返して!!」
白い布地に薄紅色のスライムのイラストが付いているパンツが風に揺れる。
「見張りご苦労様」
「ああ、コカトリスはどうだ?」
「ちゃんと言うこと聞いてるわ。問題ないみたい」
「そうか」
あれから5匹のオオカミの調教に成功して、ベースキャンプの周辺を巡回してもらっている。俺の【熱感知】を除くとオオカミの嗅覚に勝る見張りはいないからな。
「ミルとミーナはコカトリスで疲れてるだろ?見張りは任せて寝ておけよ」
「ありがとう。でもデーア・・・姉さんの回復で疲れも癒えてるし、むしろ興奮して寝られなくてね」
パキパキッ
焚火の爆ぜる音だけがやけに大きく響く。
「俺たちみたいな、ニンフェアやプルーニャみたいな才能もない、昨日まで戦闘に関係ない諜報活動員だった俺たちが、コカトリスに勝ったんだよなぁ~」
パキキッ
「まあ、俺はほとんど何もしてないけどな、ははは」
「わたしたち4人で達成した偉業よ、その隊長はあなた」
「くっくっくっ・・・楽しいなぁ、あんなに死にそうな目にあったってのに、楽しくて仕方がねえよ」
俺の目からは涙がとめどなくあふれた。生きてる実感がした。俺にも何か出来ることがあるって、ジプソフィーラ様に教えられた気がした。
次の任務も無事に終えられたら、ジプソフィーラ様に忠誠を誓おう。そう決めた。
「隊長、フラヴィオ様からの使いの者が来たようです」
「使いだと?」
3人に護衛された伝令の者が丸めた羊皮紙を持ってきた。フラヴィオは俺の従兄にあたり、フラヴィオの母が俺の母の姉だ。
「フラヴィオ様から隊長に、と」
羊皮紙の蜜蝋をはがし羊皮紙を伸ばして目を通す。
「・・・エドアルドが死んだか・・・ゴブリン相手に不甲斐ない」
「迷宮」探索を中止して戻れだと?ばかばかしい・・・
何のための駐留部隊だ。「迷宮」探索の妨げにならないように露払いをするのが仕事だろうに・・・従兄殿も役にたたんな。
しかし、ゴブリン・ロードか・・・外の魔物でも神力や恩恵は得られるが、貴重な武具魔道具はでない。
まだ地下4階までだか、水没中に死亡した魔物が落としたと思われるアイテムが多数見つかった。下に降りれば降りるほど貴重なアイテムが手に入る。未だ踏破者がいない10階も水没していたとすれば、そのお宝を逃す手はない。
「斬れ」
「「「「はっ」」」」
俺の命令の意図を察した部下たちは速やかに動く。伝令と護衛3人を取り囲み一斉に斬りかかる。
「え?あ!何を!?ぐああああああああっ!・・・」
「ぎゃああああっ・・・」
「ぐえっ・・・」
「うっ・・・・」
伝令と護衛で来ていた3人の始末はあっさり終わった。
「我々の所にたどり着く前に魔物にやられるとは、不幸なこともあるものだな」
地面に横たわる4つの死体を一瞥し羊皮紙に火をつける。
帝国にある2つの「迷宮」も10階、20階、30階がボス部屋だ。噂によればそれぞれのボスの初回討伐時には強大な力を持つ武器防具が手に入ったらしい。
ナターレの「迷宮」の魔物は帝国の魔物より遥かに強い。そこのボスの初回討伐武具がどれほどのものか想像を絶する。
何としても幻の武具を手に入れなければ。
「探索を続行するぞ」
中間報告です。10/23現在本編は86話、幕間は14話まで完成しています。
100話完結を目指していましたがもう少しかかりそうです。
長くなりますがお付き合い頂けますよう、よろしくお願いいたします。




