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49話:ニンフェア無双

「一旦退却!態勢を整える!中衛は前衛を援護しつつ後退!前衛は盾を前面に隊列を整えて後退しろ!」


 ふふふ、うまくいってるようだね。そこそこ被害も出たしこのまま退却していくかな?

 ゴブリン達が追撃しているけど、騎士たちが口笛で馬を呼んで騎乗して後退しているから追いつけないか。

 さて、このゴブリンたちも始末しないとまた村が襲われかねないね。おや?

 森の中からゴブリンシャーマンがでてきた。本当にいたんだ・・・しかも2人も。

 ゴブリン達が追撃を諦め戻ってきた。なんか勝ち鬨みたいな奇声を発しているけど、君たちだけじゃ瞬殺だったんだけどね。ちょっとゴブリンに自信をつけさせちゃったかな?シャーマンがゆっくり歩いて他のゴブリンと合流するともみくちゃにされている。


「てめえやるじゃないか!見直したぜ!」

「あんなすごい恩恵が使えるとは知らなかったぜ!」

「シャーマン様様だな!次も頼むぜ!」

「え?え?」


 みたいな感じかな?

 ちょっと面白かったけどそろそろ倒させてもらうよ。


「突撃!!」

「うおおおおおおっ!!」


 あれ?もう立て直してきちゃったよ。5人は殉職しただろうに諦めないのか・・・

 そういえばソフィー様が、


『あくまで脅しですのであまり被害は与えないでください。被害を出しすぎると相手も結果を出さないといけなくなりますから』


 と言っていたね・・・なるほど、失敗分以上の成果を出さないと面目が立たないっていうやつか・・・

 10%の被害は出しすぎたか。ソフィー様の”付与”で思った以上に威力が上がっていたからなぁ・・・


 ソフィー様の希望は


 1、村を助ける

 2、侯爵軍を撤退させる

 3、ゴブリンを殲滅


 だね。一番難しいのが侯爵軍の撤退か。どうすれば撤退する気になるかな?

 ゴブリンに勝てばそのまま村に行ってソフィー様の捜索続行だろうし、負ければ撤退するけど援軍がくるかな?・・・


 隊長を討ち取るか・・・


 ソフィー様のためだ。やってみるかね。


 侯爵軍がゴブリンの所に到着する前にもう少し減らしておくかな。


「【爆発(エスプロジオーネ)3】、【短距離転移(テレトラスポート)1】、【雷撃(フルミネ)2】!」


 ボクは上空から爆発魔法を放ちすぐさま短距離転移で地上付近まで移動し電撃を放つ。

 こうすることでほぼ同時に着弾し、2人が同時攻撃したように見えるのだ。


「む!?くるぞ!盾構え!槍を撃て!」


 侯爵軍の前衛が盾を上に向けて構え、中衛が隊列の外の地面に向けて槍を突き刺した。


 ドオオン!!バリバリバリ!!


 爆発魔法は盾で耐えられ、雷撃は騎士から逸れて槍に落雷した。


「へ~やるね。いい指揮官みたいだ」


 もう対応してきたね・・・これだから人間はやっかいだ。


 侯爵軍とゴブリンたちが激突した。戦闘力でも数でも侯爵軍が圧倒的だけど”魔法”を警戒して及び腰だね。いい勝負になっている。しかしこのまま見ているとゴブリンが負けるのは確実。それなら、


「ん?な、なにっ!?た、隊長!後方からゴブリンの大群が!!挟み撃ちです!」

「なんだとっ!!馬鹿なっ!」


 幻想魔法で作った20匹のゴブリンを後方から押し寄せさせる。ボクの幻想魔法は数だけなら100匹でも生み出せるけど、自然な動きをさせようとすると20が限界だ。


「くっ!後衛は恩恵で迎撃!中衛の2小隊は近接装備に換装!後衛を守れ!」


 よしよし混乱してきたね。それじゃ仕上げだ!

 さっきは盾で防がれたけど、ゴブリンと戦闘中に上は守れないよね。






 ドオオン!!


「くそっなんて奴らだ!前衛が総崩れだっ!・・・」


 混戦になれば恩恵を使えないと思っていたが、まさか味方ごと前衛を吹き飛ばすとは・・・ゴブリンがなぜこんなに強いんだ・・・


 土煙で前衛の状況が見えん!混戦ではどうせ弓は使えない、援護に向かわせるか。


「中衛の残り2隊も近接装備に換装、前衛の援護にむかえ!」

「はっ!」


 2正面戦闘とは・・・なんて無様なっ!うおっ!?

 乗っていた騎馬が突然横倒しになった。わたしはとっさに飛び降り、転がりながら受け身をとる。

 起き上がった瞬間眼前にダガーの刀身が見えた。


 キキンッ!!


「なんだとっ!?」


 考える前に身体が動いていた。鞘から半分抜いた剣でダガーを受け止める。蹴りを放ったが躱されてしまった。なんだコイツは・・・

 目の前にいたのは小柄な()()()()だ。ダガーを逆手に持ち対峙している。コイツは強い・・・本当にゴブリンか?・・・


「やるね」


 しゃべった!?思った瞬間に殺気を感じ身体を捻る。いきなり背後から攻撃された!?


「はやいっ!!」


 それから数合打ち合い互いに離れる。なんだコイツは・・・ゴブリンのスピードじゃないぞ・・・しかも緩急をうまくつけて速い攻撃と超速の攻撃を使い分けてくる。目が追い付かない・・・

 ゴブリンが高速で左に回り込んでくる、止まっていてはやられる・・・わたしは逆回転でゴブリンと距離を取りながら隙を伺う。するとゴブリンが横移動から前進移動に切り替える。くるっ!迎え撃つためこちらもゴブリンに肉薄して突きを放つ。()った!避けられるタイミングではない!ないはずなのに・・・ゴブリンが消えた!?突きを放った一瞬の硬直を狙われ左腕を浅く斬られる。


「くそっ!」


 横なぎに剣をふるい距離を取る。懐に入られるとマズい!


 パキン・・・


 指輪の一つが砕けて傷を回復させる。貴重な回復の指輪が・・・


「”連撃剣”!」


 同時に4回の攻撃ができる恩恵の剣技を放つがあっさりと躱される。それならば!


「”飛翔剣”!!」


 目に見えない真空の刃がゴブリンに迫るがナイフを投げて相殺された。

 その後も様々な恩恵を使い攻撃するがすべて受け止められるか躱される・・・


「ゴブリンごときがあああああっ!!」


 ゴブリンが懐に入ってきたところを狙い、虎の子の石化の腕輪の能力を開放する。石化の呪いが込められた腕輪で半径3メートルの相手を石化させる。


 パキキッ・・・


 ゴブリンの右腕から石化し始め・・・パリンッ!石化が解除された。


「なっ!?・・・石化・・・耐性、だとぉ!?」


 コイツは・・・帝国の第二「迷宮」の最深部のボスより強いぞ・・・

 ただのゴブリンに見えたが上位種か・・・ホブなどではない・・・キング・・・いや、まさかロードか!?

 これほど強いのに時々存在感が希薄になる・・・目の前にいるのにそこにはいないような・・・幻惑されているのか・・・はっ!?


 ドシュッ!


「ぐあっ!」


 一瞬の隙をつかれ懐に入り込まれてしまった。咄嗟に後ろに下がったが軸足の右足を斬られた・・・これでは避けることが・・・

 やむを得ん・・・ゴブリンごときに使うのはもったいないが!


「見せてやるぞ!!【秘剣(スパーダセグレート)(テンペスタ)3】!!」


 両手で握った剣に強烈な風が纏わりつき、振るった剣の先に暴風が吹き荒れゴブリンを跡形もなく吹き飛ばした。はぁはぁ、まさかわたしの最大恩恵まで使うことになるとは・・・


「あ~ごめん、名前を聞きそびれちゃったね【雷撃(フルミネ)2】」


 背後から声が・・・!!バリバリバリッ!!





 ゴブリンの幻想魔法を解き、隠密1を発動する。

 

 ボクの縮地や短距離転移にも反応出来たくらいだし、それなりの人物なんだろうね。

 名前くらいは聞いておきたかったけど、ソフィー様の脳力、魔力、魔法攻撃2の”付与”を受けた雷撃の直撃はオーバーキル過ぎた。今なら迷宮のトカゲでも一撃だろうね。


 浮遊で空中に浮かび戦況を見回すと侯爵軍の前衛とゴブリンがほぼ相打ちで全滅。ゴブリンシャーマンとゴブリンの子供が必死に逃げているけど、生き残った騎士が追いついて・・・討ち取った。これでゴブリンは全滅だね。侯爵軍は前衛15名が殉職で中衛10名も同じく。初戦での5名と隊長を合わせて31名が溶けた。


 侯爵軍の生き残りは29名か。

 対峙していたゴブリンの群れの幻想が消え、しばらく戸惑っていたようだけど、やがて戦死した隊長を布で包み馬に乗せ、他の者は遺品だけを回収してエリカにむけて撤退していった。


 最後尾にいたフードを目深にかぶっていた男?がちらっとこちらを見た気がしたけど、隠密がかかってるし見えるはずもない。気のせいだね。


 一応ゴブリンを殲滅させたので侯爵軍の勝ちだし、援軍を率いて戻ってくることはないかな?


 侯爵軍が遠く霞んで見えなくなるまで見送ってからソフィー様の元に帰還する。


 これで任務完了だ。

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