32話:仲間
やっと地下22階への階段が見えたニャ・・・もうへとへとニャ・・・
ソフィー様の”レベル”がさくさく上がったので、新たに”付与魔術:力”と”付与魔術:体力”をかけてもらって、25階から23階まで一気に登ってきたニャ。
「25階より23階のほーがキツかったニャ~・・・」
わたしは階段に座り込みダラ~ンとすることにしたニャ。もう動きたくないニャ・・・
「まさか”魔法”を使ってくる魔物ばかりとはね・・・」
「そうですね・・・魔法耐性ほしかったですわ・・・」
「おかげで盾にされたニャ~・・・」
「ごめんなさい、たすかりましたわ」
ソフィー様を守るのは当たり前だからいーんだけどニャ。”魔法耐性”と”付与魔術:体力”にゃかったらヤバかったニャ・・・
「ボクも次は”魔法耐性”をとるよ・・・」
ニンフェアも疲れ果てたみたいで、階段に座りそのまま上半身は横になってるニャ。
ここで少し休んで22階の小部屋でも探さにゃいと・・・階段で寝る・・・わけに・・・は・・・
どれくらい時間がたったのかニャ?3分?30分?1時間?・・・
「敵ですわ!」
はっとなり飛び起きたニャ。ヤバいニャ・・・見張りも立てずに寝てしまったニャ・・・
「22階側より敵影2!空飛ぶ虫です!」
ソフィー様の声を聞いて見上げると、階段の一番上に飛んでいる巨大カブトムシが見えたニャ。
ニンフェアも寝ていたみたいで階段に座ったまま上を見上げてるニャ。
急いで武器を手に取り飛び出そうとすると、
「必中のナイフ!」
ソフィー様がナイフをヒョロヒョロっと投げ、途中から加速したナイフがカブトムシに命中したニャ。はじき返されたけど・・・ニャ。相当堅そうだニャ・・・
「【雷撃2】!」
ようやく起き上がったニンフェアが雷撃を放ち、わたしが飛び上がった時援護も来たニャ。
「【付与魔術:加速1】!」
「ありがとニャ!」
一気に間合いを詰めダガーで斬りつけるも表面に傷つけるのがやっとだったニャ。ちょっと硬すぎニャ・・・
一旦階段に下がりダガーをしまって、切り裂きの剣に切り替えたニャ。ロングソードはあまり得意じゃにゃいんだけどニャ~。
「【付与魔術:吸収1】!、【付与魔術:力1】!、【付与魔術:体力1】!」
ソフィー様から続けて”付与魔術”がとんできたニャ。助かるニャ~♪
4つも”付与魔術”を得ると能力が底上げされ、別人みたいににゃった気がするニャ。
「援護いくよ!【雷撃2】!」
再び雷撃をくらったカブトムシが墜落したので、切り裂きの剣を上段に構え一気に振り下ろしたニャ。
カブトムシの体液で汚れた切り裂きの剣を、布で拭いながら階段に戻ってくると、ニンフェアがソフィー様に土下座してたニャ。
「申し訳ありませんソフィー様!ソフィー様第一の家臣で護衛なのに寝てしまうなんて・・・」
「ニ、ニンフェア、か、顔をあげてください!それだけ疲れていたのです。わたしの方こそ負担をかけすぎて申し訳ありませんわ!」
う~みゅ・・・わたしもしにゃいといけにゃいよニャ・・・ニンフェアの一段上の階段でわたしもソフィー様に土下座することにしたニャ。
「ソフィー様に見張りをさせてしまってごめんにゃさいニャ」
「プルーニャもやめてください!わたしはいつも守ってもらってばかりで、少しでもお役に立てるならうれしいのですから!」
ソフィー様は十分役に立ってるのにニャ。”付与魔術”のすごさにまだ気づいてにゃいのニャ~。
「と、とりあえず!ここは危険なので小部屋に移動しましょう!ね?」
ソフィー様に無理やり立たされて地図をわたされたニャ。わたしたちが寝ている間に”鑑定”で22階の地図を描いてくれてたニャ。へたっぴだったけどニャ♪
少し歩くとその小部屋があったニャ。5分くらい歩いたけど、その間に魔物とは遭遇しにゃくてよかったニャ。
「念のため付与魔術更新しますね。【付与魔術:加速1】・・・」
ソフィー様がふらっとして地面に座り込んだニャ。
「「ソフィー様!!」」
「大丈夫・・・です・・・少し、貧血でしょうか?・・・」
ニンフェアがポケットの中から魔石を取り出してソフィー様に握らせる。
「魔力の使い過ぎです・・・まだ先ほどの”付与魔術”が残っていますから休んでいてください」
「プルーニャ速攻で制圧しよう!」
「アイアイニャ~!!」
小部屋の中には巨大にゃトンボが2匹いたニャ。左右に分かれて飛んでいたので、雷撃では一匹にしか当たらにゃい。どーするかニャ?
「左はボクが!右を頼むプルーニャ!」
「りょーかいニャ」
「【爆発1】!」
ニンフェアが”爆発魔法”を範囲型から単体型に落とし、左のトンボを吹き飛ばしたニャ。壁に激突し墜落したトンボの真上に縮地で現れると、手に持ったインセクトスレイヤー(昆虫系ダメージ増加)で胴体を突き刺したニャ。ガーゴイルを倒した後に出たナイフで、ソフィー様の”鑑定”で昆虫魔物に特化してる武器と分かったナイフニャ。
わたしもニンフェアの攻撃と同時に飛び出し、切り裂きの剣で連撃を浴びせたニャ。一撃目は避けられたけど、二撃目でトンボの羽を斬り落とすと、回し蹴りで壁まで吹き飛ばしたニャ。トンボが地面に落ちる前に追いつくと、腰から抜いたダガーで細い首を斬り落としトドメを刺したニャ。
ニンフェアと二人してテキパキと休める状態にして、ソフィー様に横ににゃってもらったニャ。
【揚水の杖B】を床に突き刺しコップに水を汲むと、横からニンフェアがひったくり、ソフィー様に差し出したニャ。ま~いーんだけどニャ・・・
「ソフィー様お水です」
「あ、ありがとう。プルーニャも」
一部始終を見ていたソフィー様はわたしにも労いの声をかけてくれたニャ。
ニンフェアがソフィー様の前に座ると、改めて土下座して謝罪しはじめたニャ。
「申し訳ありませんでした。ソフィー様・・・」
「ニ、ニンフェア、もういいですからやめてください」
「いえ、疲れていたでは言い訳になりません。疲れて護衛が疎かになるのでしたら、事前に休憩するべきでした」
ま~、確かにそうだけどニャ。最後は連戦ににゃってしまったから、休憩場所の確保が難しかったニャ。
「ニンフェア・・・わたしのことを大事に思ってくれるのはとてもうれしいです。けれどわたしは・・・」
ソフィー様が体を起こしニンフェアの前で正座したニャ。お話しがあるみたいにゃので、わたしもニンフェアの隣にちょこんと座ったニャ。
「この迷宮に入ってから明日で一週間になります。わたしは今までこんなに長い時間お父様、家族と離れたことはありません。ジニアとは長い間一緒に暮らしてきましたが、どんなに近づいてもわたしを主人の娘と一線を引いてきます。ニンフェアとプルーニャと一緒に迷宮に入り、ここまで生き延びてきましたが、わたしには戦う力がなかったので結局守られてばかりで、やはり主人の娘なのかと思いました」
ソフィー様が苦しそうにスカートの裾を握ってるニャ。
「ですが、わたしにも付与魔術という力が手に入り、やっとお二人の役に立てるようになりました。やっと、主人の付属物である娘という下等な立場から、対等な立場になれると思ったのです」
ああ・・・そうだニャ・・・わたしは・・・
「下等だなんてボクはそんなこと!・・・」
「そうだニャ・・・確かに最初はそうだったニャ・・・」
「プルーニャ!?」
何か言おうとしていたニンフェアの言葉を遮っても、言わにゃいといけにゃいことがあるニャ。ニンフェアには言えにゃいことだから。
「わたしは最初ソフィー様が泣いても、ジニア様に叱られると思っていたニャ。ソフィー様が怪我したら、ジニア様に殺されると思っていたニャ。確かに主人の付属物である娘と思っていたのニャ・・・」
「プルーニャやめろ!!」
「・・・続けてください」
ニンフェアが本気で怒っているニャ・・・怖いニャ・・・でも、
「わたしが本当に心配していたのは・・・ジニア様が悲しまにゃければいいニャってことだったニャ・・・ソフィー様が死んだらジニア様が・・・」
「・・・それは仕方がありません・・・お二人・・・は、ジニアに育てられたようなもの・・・ですし・・・」
ソフィー様が泣きそうな、それでも必死に耐えてるようなお顔をされてるニャ・・・
「最初はそうだったニャ・・・でも今は・・・」
たぶんソフィー様がほしいのはこの言葉にゃんだろうニャ・・・少しうつむいているソフィー様の目には涙があふれているニャ・・・ニンフェアには無理だからわたしが・・・わたしがあげるニャ!
「でも今はソフィー様・・・いえ、ソフィーはわたしの仲間だと思ってるニャ!」




