31話:三本の矢ならぬ、三人の娘
プルーニャの”スキル”は決まったみたいだね。次はボクの方だ。
覚えられる”スキル”は・・・
取得可能スキル:斬撃1、貫通1、斧術1、体術1、剛腕1、忍耐1、拳闘1、俊敏1、縮地1、魔法耐性1、毒耐性1、麻痺耐性1、睡眠耐性1、魅了耐性1、石化耐性1、隠密1、農耕1、行政1、踊り子1、娼婦1、調合1、料理1、音楽1、操船1、火炎1、暴風1、魅了1、飛翔1、応急措置1
相変わらず”魔法”系がほとんどない・・・ランダムにまかせると一生”魔法”を覚えられなかったかもしれないね・・・”スキルポイント”は残り5。”レベル”が一気に上がったね。【スキルリセット】で覚えた【爆発3】、【雷撃2】、【短距離転移1】の強化は今はいいかな。そうすると”魔法”系なら、火炎、暴風、魅了、飛翔か・・・爆発と雷撃を覚えると魅力を感じないな・・・
火炎はルカ君が使っている魔法だ。爆発があれば問題ないか、暴風は風魔法・・・雷撃があるしこれも今はいらないな。魅了は・・・ソフィー様に・・・いけない、ボクは忠誠を誓ったんだ。飛翔は空を飛ぶ魔法だろうね。「迷宮」では役に立たない。
困ったな・・・”魔法”は全滅だ・・・そうなると耐性系か職業系か。
「ふぅ・・・迷うね」
「そんなに多いのニャ?」
「まあ、数だけはあるね。”魔法”は4つだけだけど」
「魔法を選ぶのではないのですか?」
「今持っている魔法の下位互換みたいなのだから迷ってるんだ」
「それじゃ耐性系かニャ?」
「物理耐性があれば欲しかったけど・・・あいにくね。それ以外だと隠密、農耕、行政、踊り子、娼婦、調合、料理、音楽、・・・」
「「料理!?」」
「え?」
ソフィー様とプルーニャが過敏に反応した。
「それニャ!」
「ニンフェア、主人の命令です!料理スキルを覚えなさい!」
「・・・え~~~~~・・・」
なんだろう・・・ルカ君が合流すれば済むはずの【料理1】を取る羽目になってしまった・・・残り4か・・・
結局、紆余曲折を経て【縮地1】が戻ってきて最後に【応急措置1】をとった。
【縮地1】を取ったのは使う能力が違うからだ。【縮地1】は体力、【短距離転移1】は魔力だ。魔力が切れても使えるようにね。
応急措置は回復系の魔法ではないけど、治療の一種ではあるようだし、何かの役にたてばいいのだけど・・・スキルポイントはあと2余っているけどもう少し考えてみることにする。
その後ソフィー様も”付与魔術”の吸収を取り(魔力も考えたけど、魔石が有り余っているので)、いい時間になったので今日はここまでにすることになった。
さっそく活躍することになったボクの料理は「不味くはないかな?」という評価・・・”スキル”をとって人並みにならないとは・・・元々ウサギ肉が不味いのでこれでも効果があったとも言えるが。
食後再び沸いた牛頭魔物を倒し、2交代で眠りについた。明日からは地下25階を目指しアレク達との合流を急ぐことにしよう。
「みゅ、魔物だニャ」
「数は?」
「みゅ~・・・5,6・・・」
「念のため付与魔術を上書きします!【付与魔術:加速1】、【付与魔術:吸収1】!」
わたしは付与魔術をかけた後3歩下がります。風の杖(17回)を構え後ろを向き、
「後方警戒にはいります!後方敵影なし!」
「きたニャ!トカゲ型4、オオカミ型2!」
「優先オオカミ!【雷撃2】!」
ニンフェアが雷撃を放ち5匹を貫通します。オオカミの頭を持った人型の魔物1匹が壁を蹴りかわしてきました。この階層でも魔物は人型だけです。
「ニャアアアア!!」
接近してきたオオカミをプルーニャが迎え撃ちます。オオカミの爪が伸びて剣のようになり攻撃してきました。
ガキンガキンガキン!!
攻撃速度を上げたプルーニャの攻撃を捌いていくオオカミ。速度は互角ですか・・・手ごわいですね。いくつかオオカミに手傷を負わせてはいますが、プルーニャも無傷ではなくほっぺや腕に赤い血の筋が浮かんでいます。
しかし数合打ち合うと少しづつオオカミの動きが鈍くなってきました。これが吸収の効果の一つです。
付与魔術:吸収は戦っている相手からじわじわと体力を吸収するスキルでした。削るのではなく吸収なのでオオカミの体力は減り、プルーニャは増えていきます。つまり、
「そこニャ!」
動きの鈍ったオオカミの爪を掻い潜り、プルーニャのダガーがオオカミの右腕を斬り落としました。
ギャアアアア!!
オオカミが腕を抑えて後ずさりします。
腕の切り口からは血が煙のようにたなびき、プルーニャの傷に吸い込まれていきます。
オオカミはプルーニャを睨みつけていましたが、睨みつけたまま絶命しました。オオカミの背中から心臓に向けてプルーニャのダガーが突き立っているのが見えます。オオカミは死んだことにも気づけなかったようです。
プルーニャの体中の傷に血煙が吸いこまれると、キレイな肌が再生します。これが吸収のもう一つの効果、わずかですが怪我を癒やすこともできます。
あれ?これってわたしが回復魔法を使ったことになりませんか?なりませんね・・・
光の粒になりオオカミが消えると、プルーニャの背後に復活した魔物たち5匹が迫ってきていました。
「【縮地1】!【爆発3】!」
瞬時にプルーニャの背後にニンフェアが現れると、5匹の魔物に向け爆発魔法を放ちます。
範囲が広いため魔物たちは躱せず吹き飛びました。
唯一足の速さで手前に来ていたオオカミは、プルーニャの方に吹き飛んできましたが、身動きのできない空中にいる間に光の粒にされました。
「ソフィー様!」
「はい!」
後方警戒をしていたわたしは、倒れているトカゲに向かって必中のナイフを投げます。あいかわらずヒョロヒョロっとした投擲ですが(これでも真面目に投げているのです・・・)、途中からスピードを増したナイフは、トカゲの眉間に突き刺さり光の粒に変えました。
残りは3匹でしたが、そのうち2匹は爆発ダメージでしばらくしてから光の粒になり、最後の一匹は接近したプルーニャがトドメをさしました。
「地下25階層も26階層とあまりかわらにゃいニャ」
「むしろ数が増えてるけどね・・・」
「・・・ニンフェアもプルーニャも余裕そうですけど、地下25階層ってそんなに強くはないのですか?」
二人がわたしをじっと見て沈黙してしまいました・・・だって、余裕で倒してるじゃないですか・・・
「まあ、仕方ないか」
「そうだニャ。こんにゃ状態ありえにゃいからニャ~」
「どういうことですの?」
プルーニャが魔石を拾い集め一本のロングソードも拾ってきました。ニンフェアは握っていた魔石をポイ捨てしてプルーニャからロングソードを受け取り眺めます。
「お?ソフィー様”鑑定”してください」
「あ、はい・・・ってそうじゃなくてですね!」
「ん~っと、まずボクだけど、はいコレね。【スキルリセット】なんて反則技みたいな方法で魔法を覚えたけど・・・」
話の途中で渡されたロングソードを鑑定しながら続きを聞きます。
「あれがなかったらボクにはトカゲ一匹倒せないよ」
ニンフェアが苦笑します。
「え?・・・」
「ボクが武器で魔物を倒したのは地下4階が最後だよ。”魔法”がなかったら地下10階まで行けたかどうか」
余裕なんてなかったのですね・・・
「”鑑定”終わった?」
「え?あ、・・・はい。切り裂きの剣、斬撃スキル2常備剣ですね」
「へ~結構いいものだね」
「そうですね・・・」
「そしてプルーニャだけど、元から”スキル”は良いもの持っているけど、ここで前衛するには絶対的に硬さが足りないんだ」
「硬さ、ですか?」
「アレクみたいな敵を引き付けて耐えられる硬さだね」
確かにガーゴイルと戦っていた時のアレクはやられてはいましたけど、最後の方まで引き付けてくれていましたね。
「ガーゴイルの時プルーニャは一撃でやられたでしょ?アレクは何回も耐えていたのに」
「そういえばそうですね」
「ここでも同じなんだ。プルーニャはトカゲやオオカミからまともに攻撃受けたら一撃でやられちゃうよ」
「えええ!?」
「そうだニャ。基本ニンフェアの雷撃で魔物がしびれてる間に倒してるだけニャ。しかも、しびれててもわたしより速いからソフィー様の”付与魔術:加速”と”吸収”でなんとか勝ってるのニャ。さっきのオオカミとのタイマンはきつかったニャ~”吸収”がにゃかったら負けてたニャ」
そんな・・・
「わたしもニンフェアと同じで一人じゃトカゲ一匹倒せにゃいニャ」
言葉がでてきません。なんて言ったらいいか・・・
「ソフィー様、ソフィー様のおかげで『余裕っぽく』見えてるんですよ」
「え?」
「ボクが”魔法”を覚えて、プルーニャが”加速””吸収”攻撃ができて、はじめて余裕があるように見える戦いができてるんです」
余裕があるように・・・見える?
「ここが狭い通路でなければ、魔物の動きを止められる”雷撃”が手に入らなければ、この階層でも効く”爆発”がなければ、”吸収”で魔物を弱らせられなければ、魔物の攻撃速度と渡り合える”加速”がなければ、それを活かせる戦士がいなければ・・・」
「誰か一人でも欠けていれば、わたしたちみんにゃ下の階で死んでたニャ。にゃはは・・・」
「ソフィー様、ボクたち三人だから・・・三人いたからこそ・・・生き残れてるんですよ」
魔法使いのニンフェア、戦士のプルーニャ、そして・・・
一歩を踏み出せた気がします。付与魔術士としての一歩を。
いつも背中から見ていた、二人のお顔が見えます。
わたし・・・
初めて二人に並べた気がしました。




