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幕間5話:警察様、出番でございます

 わたしはなぜこのような扱いをうけているのでしょう。

 マスターの前で正座させられています。


「オルテンシア、これはどういうことだ?」

「曖昧な表現では理解不能です。いいですか?文章と言うものは主題、主語、述語、修飾語、接続語、独立語から成り立っています。それをきちんと使いこなし相手に説明するという・・・」

「なんで正座してるやつに俺が説教されてるんだ!?完全に理解してるだろお前っ!コ・レ・は・な・ん・な・ん・だ?」


 マスターが頭のないワニ頭を指差し説明を求める。


「何と言われましても・・・見た通りです」

「だ・か・ら!それを説明しろって言ってるんだ!」

「黙秘権を行使します」

「なんでアンドロイドに黙秘権があるんだ!」


 さすがに「魔物」のことは黙っているわけにもいきませんか・・・


「はぁ、分かりました。このワニ君が襲ってきたから、正当防衛を行使して撃退しただけです」

「正当防衛で殺すやつがどこにいる!!」


 魔物の1匹や2匹や・・・7匹で細かいですね、マスターは・・・


「いくら正当防衛だからって・・・たかがナンパしてきただけだろ?何も殺さなくても・・・」


 は?


「まあ、オルテンシアは見た目だけはかわいいからな・・・酔っぱらって声をかけてくる奴もいるだろ・・・いきなり異世界に来て犯罪者になるなんて・・・」


 ここで一句 


 ワニ頭

 頭がなければ

 ただの人    おるてんしあ


 ワニは季語になりませんか?なりませんね・・・


「こっちの世界にも警察はいるのかな?・・・一緒について行ってやるから自首しろ?・・・な?」


 マスターはさすがにあほうです・・・

 この町の住民はワニ頭に全滅させられていますけど。どこに自首すればいいんですかね?





「これが・・・魔物?・・・」


 オルテンシアが殺した人間・・・と、思っていたが、どうやら違うみたいだ。


「こいつだけ頭が無事ですね、胸に大きな穴が空いてますけど」


 何だコレ・・・リザードマン・・・じゃないか・・・ドラゴニュート?


「本当にいた・・・本当に異世界なんだ!もしかしたら異世界じゃなく、未来にでも来たのかと思い始めたとこだったぜ!」

「まさかの正解・・・」

「ん?何か言ったか?」

「いえ、別に・・・」


 魔物に・・・町が全滅させられた?・・・たかが7匹だぞ。これだけの町だ。警備兵や冒険者だっているだろうに・・・何があったんだ・・・


「オルテンシア、この町の住民で生存者はいないんだな?」

「はい。0です」

「死因はわかるか?・・・」

「見分しなければ正確なことは言えませんがおそらく・・・狂竜病でしょう」

「キョウリュウビョウ?」


 恐竜でも現れたって言うのか?あるいは・・・


「字が違います「狂竜病」です。おそらく狂犬病の異世界版とでも申しましょうか。このワニ頭の魔物が感染源です」

「うぉい!?近寄ったらヤバいじゃねえかっ!」


 思わず飛びのくが、この町全体が汚染されてるならもう手遅れなんじゃ?・・・


「大丈夫ですよ。先ほど泣き真似している間にワクチンを完成させ投与しましたから」

「そうか、って泣き真似だったのかよっ!?」


 ちぇっ、心配して損したぜ・・・まあ、真似でよかったけど。首筋の2つの牙の跡に触れながらほっと胸をなでおろす。


「それじゃ、この町を拠点にするのは無理か?」

「焼き払った方がいいでしょうね」


 過激なことを言うが・・・ウイルスが蔓延してるならそれしかないか?


「そういえば、まだ聞いてなかったな。なんで夜のうちにこんなとこに移動したんだ?」

「・・・黙秘権を行使します」


 この野郎・・・ツンっとそっぽを向いて口をへの字にしてるくせに・・・かわいいじゃねえか・・・




 結局使えそうなものだけでもと思ったが、ワクチンも完璧ではないため町は焼き払うことになった。

 ウサギの獣脂を染み込ませた布に火をつけ、藁の詰まった家に放り込む。たちまち火が回り辺り一帯が炎に消える。



「後にここに来た人はどう思うんだろうな・・・町一つが滅びるなんて」


 炎に包まれた町を遠くに眺めながら感傷にひたる。


「マスターを放火魔と思うんじゃないでしょうか?」

「おれっ!?」

「警察に自首するなら一緒に行ってあげますよ」





「さてマスター、そろそろ行きましょうか」

「待て」


 なぜでしょう?炎につつまれた町を後にする。という旅立ちにふさわしいシチュエーションだというのに、マスターが乗ってきません。


「ここはカッコよく旅立つ場面では?」

「意図的に話逸らしてるだろ」

「ナンノコト、デショウカ?」

「なんで片言になってんだよ!!迷宮だよ!め・い・きゅ・う!!」


 バレていましたか・・・マスターのくせに・・・

 まさか町に入ってすぐのところに迷宮の入り口があるなんて・・・


「まあ、火が消えるまではムリですけどね」


 仕方なく城壁の外で野営の準備をします。マスターの為だけに食事の準備をし、マスターの為だけに寝床の準備をし、マスターの為だけに洗濯をします。


「マスターの為だけに・・・」

「そんな嫌そうに言うなよ、悲しくなるだろ・・・それよりだな、オルテンシア」

「なんでしょうか?」

「俺がやっていたゲームでは、戦っていなくてもパーティーを組んでいると、経験値が入るってシステムだったんだ」

「はぁ?」


 んん?何が言いたいのでしょうか?


「お前が倒した魔物7匹、俺にも経験値が入ってんじゃねえの?」


 うかつでした・・・ワクチンや迷宮に気がとられて、それを誤魔化す方法を考えていませんでした・・・


「ハイッテナイヨ・・・」

「片言!!」

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