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幕間4話:感染と弱体化

 ワニ頭は倒しました。しかし静かな町に鳴り響いた、ワニ頭の唸り声で残りの6匹が近寄ってきます。


「思ったより素早いですね」


 正面、斜め前、左右、屋根の上、取り囲むように包囲を縮めてきますね。知性はあるのでしょうか?


 ヴォオオオオオ!!


「少し威力を落としますか【光線エネルジーア・ラッジョ2】オート連射」


 ピシュンッピシュンッピシュンッピシュンッピシュンッピシュンッ・・・


 上、左右、斜めから襲ってきたワニ頭を吹き飛ばし、最後に正面のワニ頭の顔面を吹き飛ばします。


 ビシャシャッ!!


「あ!」


 と思いましたが、返り血を浴びたのはマスターだけだったので良しとします。


「拭いておけばバレませんよね」


 マスターの顔にかかった返り血をハンカチで拭いポケットにしまうと、拭き残しはないかじっと見つめます。起きるとやかましいですが寝ている顔はかわいいですね。わたしを製作してくれたマスターのお母様によく似ています。・・・もちろん、わたしを毛嫌いしている妹様とも・・・ブラコンめ。

 マスターの寝顔を見ていると、唇に残った血に気づきました。


「まだありましたか」


 再びハンカチを取り出そうとして、手が止まりました。・・・そう、めんどくさかったのです。


 ・・・ハンカチを取り出すのが・・・ただそれだけです。


 ・・・他に理由はありません。


 左右をキョロキョロして・・・ペロ・・・




 7匹の魔物を倒してマスターはレベルが上がりました。


 わたしは上がりません。


 人類?もしくは生物のみに適応されるシステムなのですね。まあ、問題はありませんが。


「念のためマスターのレベルを再確認しておきますか【鑑定(バリュータジオーネ)1】」


【*****】(通称:マスター)

 古代人:男

 管理者特性:スキルポイント10

 年齢:15

 レベル:36(SP18+10)↑up

 ()()()()()()()

 身長:152cm

 体重:48kg

 力 :B↑up

 体力:D↑up

 俊敏:C↑up

 器用:E

 英知:F

 脳力:C↑up

 魔力:E

 スキル:君主2(7)、加速攻撃1(2)、衝撃波1(2)、剣士1、斬撃1、力1、体力1、俊敏1、脳力1、物理耐性2(3)、魔法耐性1、混乱耐性1、農耕1、測量1、道化師1、管理者権限【F1】0 (計25)


「レベル36ですか・・・寝てる間に随分上がってしまいましたね・・・ん?」



 ()()()()()()() 



 なんですかこの表示は?先ほどまでこんなものはありませんでした。


「再鑑定!【鑑定(バリュータジオーネ)10】!」


 状態:キャリア・・・解析中・・・ウイルス感染を確認・・・解析中・・・感染源:未知の血液・・・解析中・・・狂犬病に類似・・・解析中・・・病名不明・・・体内に類似するウイルス情報を発見・・・通称「ワニ頭」の血液から同じウイルスを検出・・・


 な、なななな、なんですかコレはっ!?


「狂犬病なんて、すでに撲滅しているウイルスです・・・わたしのライブラリーにもワクチン情報がありません・・・狂犬病の致死率はほぼ100%・・・それに類似しているウイルス・・・」


 愕然としている暇はありません!対策をたてないと!


「わたしの「解析」を鑑定!鑑定結果を元に「ウイルス解析」専門に再構築!」


 わたしの体内のナノマシンが一斉に動き出します。

 体内に新しいパーツが組みあがり「解析室」が作られます。材料不足は・・・仕方ありません、利用頻度の低い順にシステム放棄。

 解析システム構築のため他のパーツを流用します。「力」を抑制、「体力」を抑制、自己修復機能の一部を凍結。


「力と体力が落ちましたか・・・自己修復機能も・・・でもまだ足りません!続行!」


「体力」を流用します。「体力」を流用します。「体力」を流用します。「体力」を流用します・・・

「ウイルス解析室」が完成しました。


「ワニ頭の血液を、ウイルス解析開始!」


 マスターは、絶対死なせません!!



 夜が明けました。解析はまだ終わっていません。ここにいてはマスターが不審に思います。場所を移動しなければ・・・村の近くにいきますか・・・ダメです。感染しているマスターを連れて行けば、感染拡大の可能性があります・・・どうしましょう・・・





「う~ん・・・朝か・・・オルテンシアおはよう・・・」

「おはよう・・・ございます。マスター・・・」


 なっ!?オルテンシアが泣いているっ!?な、ななな・・・


「何があったオルテンシア!?」


 寝ていた俺の側で座り込み、膝に両手をついてうつむいているオルテンシア。アンドロイドが泣くだって!?そんな話は聞いたことがない・・・俺は跳ね起きてオルテンシアの正面で片膝をつき肩をつかむ。ん?・・・ここは?


「申し訳ありません・・・わたしは()()()()()()()()()

「う・・・そ?・・・ま・・・~たまた、冗談かよ。あ!まさか寝言で性格設定の解除コードでも言ってしまったのか?」


 そうだと言ってくれ・・・100種もあるんだからそんな性格もきっと・・・


「ここは、迷宮側の町です・・・人は一人もいません・・・」

「えっ!?町!?迷宮!?ど、どういうことなんだ!?」

「すみません・・・う、うぅぅ・・・うわああああああああん!!ひっく、ひっく、ごべんにゃざい!!」


 ああああああ、俺はどうしたらいいんだああああっ!!

 オルテンシアが子供みたいに泣いている!!ああああぁ・・・あれ?・・・なぜか落ち着いてきた・・・混乱耐性でもあるのか?・・・

 ま、まあいい冷静になってみよう。まず一番にしなければならないのは・・・


 俺はオルテンシアの頭を引き寄せると軽く抱きしめる。右手でそっとオルテンシアの頭を撫でる。何度も何度も。


「オルテンシア、泣かなくていい。泣かなくていいんだ。俺にはオルテンシアしかいない。オルテンシアがいなければ、俺は一日だって生き残れないだろう。オルテンシアが例えミスしようが、例え隠し事しようが、例え嘘をつこうがすべてを受け入れる。俺にはオルテンシアがすべてなんだ。だから泣くな」


 ・・・何か言ってくれ・・・オルテンシア・・・


「マスター・・・」


 オルテンシアが俺の背中に手を回し抱きついてきた。


 こんな時だけど・・・

 オルテンシアの髪からはいい匂いがした。抱きしめた身体はあったかいというより熱く、柔らかい。ずっとこのままでいたい・・・

 首筋にあたるオルテンシアの唇の感触が、少し濡れていて柔らかく・・・


 カプッ


「あああああああああああああっ!!いってええええええええっ!!」


 オルテンシアを突き放そうとしたががっしり抱きついて離れない。なんてやつだ!牙をつきたてやがった!!




 ギリギリでした・・・いえ、マスターが目覚めてしまったのでアウトですけど。

 泣いている最中に「ウイルス解析」が完了し、大急ぎでワクチンを製造しました。

 マスターが抱きしめてくれたおかげで、説明の必要なくワクチン注射ができましたね。これでマスターは助かります。

 ワクチン製造でもかなりの能力が持っていかれました。かなり弱くなってしまいましたが・・・問題ありません。


 マスターの為なら・・・


 体温上昇を確認・・・ワクチン製造でオーバーヒートしたのですかね?仕方ありません、自動冷却装置・・・も・・・解析に流用しましたっけ?起動しません・・・


 さて、これから説明しなければなりませんが、ミスも隠し事も嘘もすべて許してくれるようですから、なんとか辻褄を合わせて・・・。





【オルテンシア】

 セルラ・オートマタ:女性型

 種族特性:自己修復【停止中】

 製造経過年数:14

 レベル:1(SP165)

 状態:恋慕

 身長:164cm

 体重:53kg

 B:89cm

 W:56cm

 H:78cm

 力 :B(76%)↓down

 体力:C(43%)↓down

 俊敏:D(05%)↓down

 器用:SS(97%)

 英知:SSS(00%)

 脳力:SS(49%)

 魔力:SSS(00%)


 スキル:鑑定10(55)(要:魔力S)

 索敵10(55)(要:英知S)

 光線10(55)(要:脳力S、魔力S)

 解析10(0)

 (計165)

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