23話:責任取ってください
わたしが目を覚ました時、目の前にアレクさんの顔がありました。えええ、ち、近い!?
「すまない、たまっていたのにルカ君の身体を気遣ってやれなくて」
ど、どういうことです!?アレクさんは何を言っているんですか!?
「たまって・・・身体・・・ちがうんです!鼻血がでたのはそーゆーことじゃなくて!・・・」
どんどん顔が熱くなっています。きっとゆでだこのように真っ赤になってることでしょう。
「わかっている俺のせいだ、すまないルカ君を欲求不満にさせてしまって!」
な、な、な・・・誤解です!!魔力の使い過ぎで鼻血がでてしまっただけなんです!タイミングがあれなだけで・・・
「欲求不満!?えっとえっと、ちがくてですね・・・えっと誤解なんです!・・・」
慌ててしまって言葉がうまく出てきません・・・アレクさんの真剣な顔が・・・目を合わせられません・・・無意識にアレクさんから距離を取ろうとしたら足が滑りました。
「あっ」
後ろに倒れそうになったわたしの腕をアレクさんがつかみ抱き締められました。
ええええええええええええええええっ!!!!ど、ど、ど、どうしたら・・・
「もう逃がさないよ。おとなしく寝よう」
顔を上げるとわたしを見つめるアレクさんの顔が、顔が・・・
「あ、あ、あ、あ、あ、アレクさん!!!ダメえええええええ!!!」
胸の前で組んでいた右腕をアレクさんの顔めがけて突き上げました。
ゴッ!
「へぶしっ!」
近すぎてアレクさんの顎を突き上げる形になりました。アレクさんの頭が後ろに倒れ、身体も後に続きました。ノックアウトしてしまいました・・・
「アレク、さん?・・・」
大の字で気を失ったアレクさんを見下ろしてほっとすると、わたしの腰の力が抜けへなへなと座り込みました。・・・あぶなかったです・・・色々な意味で・・・
「やっぱりアレクさんは・・・気づいていますよね・・・わたしが女だってことを・・・」
どうしましょう。ソフィー様達と合流するまでアレクさんと二人きりなんて・・・
そういえば先日ニンフェアさんが・・・
『そうですね、あまり匂うと魔物を引き寄せてしまうかもしれませんし、アレクを興奮させてもいけませんし』
と言っていましたね・・・今のうちに水浴びをしておきましょうか。
誰もいないことはわかっていますが思わず周りを見回してから革鎧の留め金をはずします。服に手をかけて脱ごうとしましたが、仰向けで倒れているアレクさんが目に入ります。
・・・念のためうつ伏せに寝て貰います。よいしょ。
服を脱ぎズボンに手をかけて・・・
・・・念のため手を後ろ手にしばっておきましょうか。うんしょ。
下着に手をかけて・・・
・・・目隠しもしておきましょう・・・
「”水よ”」
水流を上に向けて放つとしばらくして滝のように落ちてきました。
ザブン!!
「ふぅ!きもちいい!」
頭を振って髪の水分を飛ばします。
そういえば「迷宮」に入ってから丸4日、水浴びどころか汗を拭いてもいませんでした・・・
匂うでしょうか?くんくん
「冷た!?んな!?縛られて、目隠しも!?」
アレクさんが起きてしまいました!あああ、水浴びをした水がアレクさんの所まで流れて行ってました・・・失敗です。
「アレクさん!少しまってください!!」
「ルカ君!?これはいったい?・・・」
急いで背嚢からタオルを探します。身体を拭いて下着をつけようとした時、アレクさんと目が合いました・・・アレクさんは態勢を変え座り込み、目隠しは半分ずれていました。わたしは片足を上げ下着を履こうとした姿勢で固まっています。
「ル、ルカく・・・・ん?・・・」
「いやあああああああああああああああああああ!!!!”水よ”!!!!」
大量の水がアレクさんを押し流し壁に激突しました。アレクさんの目が覚めるのは夜になってからのことです。
最初に持ってきていた食料は底をつきました。残っているのは「迷宮」で手に入ったウサギ肉7日分。少し癖のある堅いお肉ですが、ナイフの背で叩いて塩とスパイスをまぶし少し寝かせてからシチューを作りました。うん、いけますね。
アレクさん喜んでくれるかな?想像すると顔が熱くなってきます。
なんでしょう、アレクさんにはだ、はだ、はだか・・・を見られてしまったので、もう責任を取っていただくしかありません。アレクさんはがっちりした体型で男らしいですし、先ほども積極的なアプローチをされましたし。
女性とばれたら軍は辞めないといけないかもしれませんが、お婿さんを連れて帰ればお母さんも喜びますし村の働き手だって。
・・・ただ一つ気がかりなのは、わたしの髪が短いことです。
髪を・・・軍隊に入隊する時髪を切ってしまいました。女性は髪を切ってはいけません。髪の短い女性は罪を犯して罰を受けた証拠ですから、自ら切る人はいません。
しかし軍隊に入隊する時、男性の振りをするため自ら切ってしまいました。結婚をあきらめて、田舎のお母さんや妹弟たちの生活を守るために軍隊の道を選んでしまったから。
こんなわたしでも、アレクさんは受け入れてくれるでしょうか?・・・
「うぅ・・・俺は一体どうしたんだ?・・・」
アレクさんが気づきました。もう迷ってはいられません!ふぅ・・・深呼吸深呼吸。頑張るのよ、ルカ!
「アレクさん!」
「あ、ルカ君。どうしたんだい?」
「ア、アレクさんはわたしのことがす、す、好き!なんですか?・・・」
言えました・・・
「??もちろん好きだが?」
もちろん!!はぁはぁ!
「わかりました。わたしは16歳になったばかりですが料理には自信あります!」
「うん、ルカ君の作る料理はおいしいよ」
おいしいですって!望みはあります!
「胸は・・・そんなでもないですがまだまだ成長期ですし!」
「?そうだね、鍛えれば大きくなるだろう」
鍛える!?ま、まさか・・・アレクさんが手伝ってくれる?
「なので・・・アレクさんが望むのであれば・・・」
はぁはぁ、心臓が止まりそうです!!
「お、お、お・・・お嫁さんになってあげてもいいですよ!!」
やったよわたし!!
「はっはっは、ルカ君は冗談がうまいな。びっくりしたよ」
「へっ?」
「男同士で結婚できるわけないじゃないか」
頭の中で何かが崩れていく音が聞こえました・・・




