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20話:スキルリセット

 意識を保っているのはわたしとニンフェアだけのようですね。

 崩れ落ちたガーゴイルの側でニンフェアがぼーぜんと座り込んでいます。

 レベルが上がったことで足の火傷も癒えましたが、ブーツは底が抜けています。


「どーして倒せたんだ?・・・」


 ガーゴイルを燃やし高温にした後急激に冷却することで、除熱急冷効果で破壊しました。

 おそらく純粋なダメージとしては1割も削れてはいなかったでしょう。レイドは伊達ではありません。

 周りを見回すと、斜め後ろの壁にもたれかかり気を失っているアレクの姿があります。レベルがあがったおかげで怪我は癒えているようですが、疲労は完全には消えません。寝かせておいてあげましょう。


 すぐ前には女の子座りから後ろに大の字で倒れているルカ君。ルカ君もレベルが上がり怪我はないようですが、顔が血だらけです。怪我ではなく鼻血ですが。乙女の情けです。わたしはハンカチを取り出して顔をキレイにしてあげました。


 ゆっくりとガーゴイルの残骸に向けて歩いていくと、わたしに気づいたニンフェアが振り返りました。


「ソフィー様・・・倒したんですか?・・」

「見てのとおりですよニンフェア」


 ガーゴイルの残骸の先を見ると猫のように丸まって寝息を立てているプルーニャが見えます。

 おそらく無意識にダメージを減らそうと身体を丸めたのでしょう。


 目の前の宝の山を見ると七色に輝く宝玉が5つ見えました。これが【スキルリセット】です。


 皆には昨夜の作戦会議の後、わたしとニンフェアに【スキルリセット】を譲って欲しいと頼みました。

【スキルリセット】は1人1個出る基本報酬で部屋にいた人数分得られます。

 当然のようにアレクとルカ君は「すべてソフィー様のものですから」と所有権を辞退しました。


 ・・・ちがうのです。わたしを領主の娘だからとか、貴族だからとかではなく、1人の人間としての頼みと思ってほしいと言いました。

 アレクとルカ君は困ったような顔をして無言になりました。貴族のいる封建社会に産まれ生きてきたのです。貴族に逆らう恐怖は刻み込まれているのです。人として見てほしいと言っても貴族が気に入らないと言えばそれまでなのです。やはり貴族として受け取るしかないのでしょうか、わたしと皆の間には見えない壁があるのでしょうか・・・すると、


「そーだにゃ~、譲ってもいいけど代わりにお宝が出たら好きにゃ物を1つもらえるかニャ?」

「えっ?プルーニャ・・・」

「・・・ダメかニャ?・・・ソフィエッタ・・・」


 プルーニャが少し甘えるように聞いてきました。わたしとは幼少時から一緒にいたのです。わたしが笑っている時も泣いている時も、常に一緒にいたのです。わたしがソフィエッタの愛称で呼ばれていた頃も、壁一枚を隔てた護衛として・・・


 そして今、壁を飛び越えてきてくれました。


「いえ・・・ええ、ええ、構いませんとも!わたしは【スキルリセット】だけでいいのです!」


 わたしはプルーニャに抱きつきました。


「ありがとうプルーニャ!」

「にゃはは」


 うれしさで涙がこぼれたのでプルーニャの首筋に顔をうずめて隠しました。

 それを見ていたアレクは「ははは・・・」と相好を崩し、


「自分は、いや俺は、盾があれば欲しいですね。”スキル”に不満はないので皆を守れるような盾が」


 そう言って、急ごしらえの不格好な盾を掲げて笑った。


「そうね、その盾じゃね。ふふふ」


 プルーニャの肩越しにアレクを見て笑顔になる。

 ルカ君はわたしとアレクを交互に見て、


「えっと、えっとわたしは!・・・わたしは・・・お、お、お、お金!・・・」

「お金?で、いいのですか?」

「え、あ、いえ・・・」


 ルカ君が顔を真っ赤にしてうつむいてしまいました。

 それまで傍観していたニンフェアが


「ルカ君、今すぐ決めなくてもいいよ。プルーニャみたいにお宝を拝んでから欲しいものを探すのもありだよ」

「そ、そうします・・・」


 ルカ君はまだ少しわたしに遠慮しているようでしたが、必死に代わりの物を考えてくれました。


「ありがとうルカ君」


 こうしてレイドに挑むことが決まったのです。




 そして今レイドに打ち勝ち、討伐報酬を目の前にしています。


「ニンフェア、これが【スキルリセット】ですよ」

「これで、()()()も魔力を使う”スキル”が手に入る・・・」


 ニンフェアがローブのフード部分を背中に落としながら【スキルリセット】をみつめている。

 ニンフェアは強がっていますが望まないスキルしか手に入らず、もどかしい思いを抱えていました。しかしそのもどかしさを表に出すこともできず、任務に没頭することで考えないようにしていたのでしょう。

 そして今、やっとその呪縛から解き放たれて本来の柔らかい女の子の表情を見せています。


「ありがとうございます、ソフィー様」


【スキルリセット】をそっと胸に抱きしめてニンフェアが呟いた。





 まだ皆が起きてこないけれど、ニンフェアの【スキルリセット】が行われました。【スキルリセット】1つで1つのスキルが消えます。

 まず【縮地3】以外の2つのスキルを消したところ、選べるスキルリストが頭に浮かんだそうです。欲しいスキルを3つ見つけましたが、【縮地3】だけはどうするか迷っていたようです。しかし結局「脳力を生かすため」【縮地3】も消去しました。


 新しいスキルがニンフェアを生まれ変わらせてくれることでしょう。




 さて、わたしもそろそろ消えることにしましょう。ソフィー、欲しいスキルはもう決まったかしら?


 まだ、決められないわ・・・あなたの代わりになるものなんて・・・


 まあ、わたしが消えてからゆっくり考えるといいわ。【完全記録1】の維持はキツイからそろそろ休ませてもらうわね。最低限必要な知識は残していくけど、【完全記録1】は人の身には余るスキルよ。次にレベルが上がったら・・・ニンフェアも薄々気づいてたみたいだけど、自我が崩壊するでしょう。

 ”神”がなぜ【完全記録1】をわたしに与えたのか()()()()けど、過去の世界から来たオルテンシア様と関係しているのかしらね?あの方、”神”に嫌われてるし。


 フィーラ・・・本当にこれしか方法はないの?今すぐ消えなくても皆に相談して・・・


 ソフィー、わたしの人格ははるか昔に亡くなったオリジナルを元に作られてるわ。【完全記録2】を手に入れて、自我崩壊を起こしたオリジナルをね。

 あなたはオルテンシア様を助けるためにもレベルを上げなくてはいけない。でも、レベルを上げると自然に【完全記録2】になってしまう・・・


 【スキルリセット】を手に入れる為とはいえ、今回のレイドもレベルが上がってしまった。本当に危険な賭けだったのよ。これ以上の危険は冒せないわ。


 それじゃそろそろいくことにするわ、がんばってね、わたし。


 ごめんなさい、ありがとうフィーラ。


 そしてわたしも【スキルリセット】を使い、【完全記録1】スキルを持った【分割人格2】を消去しました。

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