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19話:レイド

 アレクが扉を開け中に突っ込む。

 続いてプルーニャ、ルカ君、ボクで最後がソフィー様だ。


 アレクは部屋の中ほどまでに進むと正面の石像を睨む。

 あれが”レイド”ボスのガーゴイルだ。およそ3mほどの、翼のある悪魔の彫像がゆっくりと動き出す。

 アレク以外は入り口付近で待機して、アレクとガーゴイルの一騎打ちが始まる。


「こいっ!」


 カァァン!!

 アレクが剣と昨日作ったばかりの簡易盾を打ち鳴らす。

 その瞬間アレクが薄い青い光に包まれた。”スキル”【聖騎士1】の発動だ。

【聖騎士1】は防御力を引き上げ相手に一騎打ちを挑ませる”スキル”で、しばらく他には目もくれなくなる。


「今です!ニンフェア、ルカ君!」

「「はいっ!」」


 ボクとルカ君がアレクの左右に走り出し攻撃を始める。


「炎の杖!」


 杖に魔力を流すと手のひら大の炎が飛び出しガーゴイルの胸に命中する。

 ルカ君の持つ筒から太い糸が吐き出されガーゴイルの腕に巻き付く、そして


「【火炎2】!」


 ルカ君が筒から出た糸の根本に指を突きつけ炎を発現させると、炎がものすごいスピードで糸を伝いガーゴイルに命中する。元々射程の短い”スキル”だけど、こうすればはるか先の魔物でも攻撃できる。

 しかしガーゴイルにはたいしたダメージがないのか気にせずアレクに攻撃をしかける。


「ぐはっ!」


 急ごしらえでは役に立たず一撃で盾が砕け散る。アレクはすぐさまプルーニャに借りていたショートソードを抜くとロングソードとクロスにしてガーゴイルの攻撃に耐える。クロスした剣では隙間も多く何度もガーゴイルの攻撃がアレクをよろめかす。アレクのスパイク付ブーツはうまくいっているものの、アレクが動かない分攻撃ダメージが逃げず足がガクガクきている。


「プルーニャ!回復を!」

「アイアイニャー!【回復2】!」


 アレクの傷が癒え、足に力が戻ってくる。


「ルカ君は指示があるまで攻撃続行で!ニンフェアは3発撃ったらわたしの護衛をお願いします!」

「「はいっ!」」


 しばらく同じ攻防が続いた時ガーゴイルの動きが変わった。顔がルカ君の方を向いたのだ。


「アレク!【聖騎士1】発動!」

「こいっ!石像野郎!」


 アレクは盾がないので剣同士を打ち合わせる。

 カアアアアァン!!


 ガーゴイルは再びアレクに狙いをつけ突進してくる。

 ガーゴイルから嵐のような連撃が襲ってくる。基本攻撃は殴りでやや短い脚での攻撃はない。石のくせにユラユラ動いている尻尾は隙を伺っているようだ。

 しばらく攻撃に耐えていたアレクだけど”レベル”差がありすぎてボロボロだ・・・


「ぐふっ!」


 ガーゴイルの拳が剣の隙間を抜け鳩尾にヒットする。アレクが口から血を吐いて片膝をつく。


「いけない!プルーニャ連続回復!」

「【回復2】!【回復2】!【回復2】ニャ!」

「うらああああっ!」


 回復したとたん目の前にガーゴイルの顔があったせいか、アレクは立ち上がる勢いのままガーゴイルに頭突きを食らわせる。

 顔面が血だらけになる。相手は石像だよ・・・


「おまけで【回復2】ニャ!」


 ガーゴイルの顔がプルーニャを見ている。


「指示あるまで回復おさえてください!アレクもう一度【聖騎士1】を!」

「おうっ!」


 アレクはすごい奴だ。血だらけになりながらむしろ闘志はあがっている。

 その間にもルカ君の攻撃は続いている。

 ポケットに詰め込んだ魔石を一握り取り出すと、


「【火炎2】!【火炎2】!」


 ガーゴイルが接近したせいで直接顔面に攻撃を当てている。


 プッ!


 ルカ君が鼻血を噴き出し頭が後ろに倒れる。ボクはとっさに縮地で背後にまわるとルカ君を受け止める。

 無茶だ、体内の魔力では足りず直接魔石から魔力を引き出して”スキル”を発動している。


「あ、うぅ・・・はっ!すいません!大丈夫です!」


 ルカ君は袖でぐいっと鼻血を拭くと、握っていた魔石を投げ捨てた。


「ルカ君無理をし・・・」

「大丈夫です!がんばります!」


 再び魔石を取り出し炎を連発する。左手の人差し指は常にガーゴイルに向け、右手はポケットに突っ込んでは外に魔石を放り出すの繰り返しだ。

 本当にくやしい。何もできないなんて・・・


「これでもくらうニャ!」


 プルーニャがジャケットに差していた火炎瓶をガーゴイルにぶつける。液体燃料がガーゴイルの顔にかかり引火して燃え上がる。


「ニンフェア追撃1!」

「は、はい!炎の杖!」


 ソフィー様の指示は的確で確実にダメージを与えているはずだけど、生身じゃないガーゴイルはその動きが変わらない。どの程度ダメージがはいっているのか・・・


「もう少し・・・みんながんばって・・・」


 どれくらい攻撃を続けただろうか?気が付くとガーゴイルの上半身がオレンジ色に染まりつつある。炎のダメージが蓄積してきている?

 あのトドメが本当に効くのかどうか・・・


「ニンフェア、ルカ君最後の攻撃を!」

「炎の杖!!」

「【火炎2】!・・・」


 ルカ君が盛大に鼻血を吹きだす。顔は血だらけで目の焦点も合っていない。ユラユラと揺れて力尽きたのか上を向いた状態で膝を着きゆっくりと後ろに倒れた。


「ルカ君!」


 ガーゴイルの頭は燃え盛り赤く染まっていく。それでも動きは変わらない。冷静に一番の強敵、ルカ君に再び視線が行き一歩を踏み出そうとした時。


「指輪よ!力を貸してくれっ!【剛力】!!」


 アレクが剣を手放し両手でガーゴイルの尻尾をつかみ、


「うおおおおおおおおおおっ!」


 そのまま力任せに引き倒した。すごい・・・アレクが追撃しようと今度は足を掴みに行ったがガーゴイルの裏拳で吹き飛ばされた。

 壁に激突したアレクはズルズルと崩れ落ち座った状態で気絶した。ガーゴイルは翼をはためかせアレクに狙いをつける。


「アレク!逃げて!」

「プルーニャ!トドメを・・・」

「アレク!!【回復2】ニャ!」


 ソフィー様の声が届く前にアレクを心配したプルーニャの回復”スキル”が発動する。

 その瞬間ガーゴイルの視線がプルーニャを捉える。

 アレクが気絶し【聖騎士1】の効果が消え、【回復2】を使ったプルーニャが狙われた。


「いけない!」

「ふぎゃっ!」


 プルーニャがガーゴイルのしっぽで弾き飛ばされた。壁近くでバウンドしてそのまま転がり動かなくなる。


「プルーニャ!!」


 カラン・・・


 その時、ボクの目の前にプルーニャの手を離れた【揚水の杖B】が転がった。

 トドメ用の杖が。


「ニンフェア!おねがい!」


 ソフィー様の声が聞こえた。

 ガーゴイルはプルーニャに向け突進している。

 ボクは【揚水の杖B】を握り”スキル”を発動する。


「【縮地3】!」


 翻ったローブから薄緑色に光る羽が広がり、鱗粉だけを残し一瞬でガーゴイルの肩に立つ。


「今だけは、縮地をくれたことを神に感謝するよ」


 赤熱したガーゴイルの熱でボクのブーツが燃え上がるが、気にせずそのまま脳天に杖を突き刺す。


「くたばれっ!!」


 杖を全開で捻ると周囲から吸い上げられた水が一気にガーゴイルの頭に降り注いだ。


 ジュワッ!!


 凄まじい水蒸気が上がりあたり一面ホワイトアウトする。ボクもバランスをくずしガーゴイルから転がり落ちた。ブーツの底は焼けてなくなり足の裏から煙が上がっている。


 ピシッ


 ピキッ


 何か音が聞こえる。何の音だ?


 ビキキッ!ガラガラガラッ!!


 霧の中うっすらとガーゴイルの姿が見えた。一瞬緊張したけど、よく見ると半身が崩れ落ちていた。


「たおし・・・た?」


 次の瞬間光が溢れ、辺り一面光の粒が舞い踊った。


 普通の魔物とは違う幻想的な光だった。そして地面にはその光を反射する魔道具や黄金の山が残されていた。

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