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5.交錯・心の闇

ケガしていて遅くなりました。どうもスミマセン。


中学の時から清水の周りには常に人が集まっていた。

まるで彼女の明るさに惹かれるように。

昔の僕は、清水とは反対の位置にいた。

孤独だった。

極度に人見知りが激しかった僕はいつの日からか、誰とも話をしなくなった。

それが周りの人間の反感を募らせ、僕はクラスメイトから無視されるようになった。

その日から毎日が地獄だった。

他者に自分の存在を認められない事が何よりも苦しかった。

話したくても言葉思いが浮かばず、煩わしさは苛立ちに変わり、ついには自暴自棄な行動へと変わっていった。

一年が経つ頃には僕は学校にいる時間を一人で過ごしていた。そんな僕とは反対に、清水は同級生にもちろん、先輩や後輩からも慕われ、多くの友人たちに囲まれていた。幼い頃から唯一の理解者に、近づく事さえ出来なくなっていた。僕は、他人と明るく接する事が出来る清水を羨ましく、そして恨めしく思った。中学の卒業式に、僕は出席しなかった。大勢の中にいる事は、僕にとって苦痛でしかないからだ。後日、一人だけ校長室で卒業証書を受け取った。

会話もなく、ただ証書の入った筒を渡され校長室から出た。

僕が出た後、校長室から、ようやくさよならできた、と言う声が聞こえてきた。結局、僕は最後まで存在を認められた気がしなかった。この卒業証書は所詮形だけのものだったのだ。くだらない。そう思って、証書を破り捨てた。

校門を出ると、いきなり後ろから声を掛けられた。振り返ってみると、そこには清水がいた。「なんで証書を破ったの?」

清水の声からは、落胆が感じ取れた。

「お前には関係ないだろ。」

関係ない。まさにその通りだった。幼なじみといっても、全く違う立場で中学を過ごしたのだ。僕らの関係性はこの三年の間に断ち切れてしまっていた。幼い頃の思い出など戯れでしかない。今の僕にはただ辛いばかりの現実しかなかった。

「関係ある。幼なじみだし同じ卒業生でしょ。」

「いまさら友達面すんじゃねえ!大勢の人間と過ごしていたお前に、いつも1人だった俺の気持ちがわかるか!?」

僕はいつの間にか声を荒げていた。僕の言葉を清水は黙って聞いていた。

清水が悪い訳ではない。それなのに俺の怒りの矛先は清水へと向けられた。それは常に抱いていた清水への憧れと劣等感、そして取るに足らぬくだらない嫉妬心、それらが一気に爆発した瞬間だった。どのくらい時間が経っただろうか。いつの間にか小雨が降っており、僕と清水はその中で立ち尽くしていた。僕は逆流した感情が押し寄せて、呼吸が荒くなっていた。

ゆっくりとした口調で清水が沈黙を破った。

「‥ごめん‥‥。」

違う。清水が悪い訳じゃない。そう言おうとしたけど声が出ない。心の中でいろんな思いがせめぎ合い、まだ呼吸が荒かった。清水は先ほどと同じ口調で続ける。

「私‥ナオトの事を考えていなかった‥。小さい頃からずっと一緒だったのに‥。ごめん、ナオト。」

違う。僕は清水にそう言わなければならない。そのためには自分自身と向き合わなければならなかった。

「違うんだ、清水。悪いのは俺なんだ。俺はお前に憧れていた。同時に劣等感や嫉妬心を抱いていたんだ。生まれつき人見知りの激しい俺は、お前ほど他人と打ち解けることが出来なかった。だから幼い頃の親しい人間は清水しかいなかった。それでも小学生の頃は、完全に打ち解けないまでも普通に会話を交わすことぐらいは出来るようになった。

でも中学に入って知らない人間が増えた。

俺はそいつらとどう関わっていったらいいのか分からなかった。

小学校で話をしていた奴に新しい友達が出来ていた。

たまに廊下で見かけると、数人で笑いながら話をしていた。

しかし俺がその中に入る事は無理だった。

ただ知らない人間というものが恐ろしく、そして怖かった。

俺にはもう、清水しかいなかった。

唯一の幼なじみしか、まともに自分の言葉を伝えれないと思った。だけど清水はいつの間にか、俺の知らない人間達に囲まれていて、楽しそうだった。それを見て、俺は急に独りきりになった気がした。耐えられなかった‥‥。だからもう二度と、他人と関わらないと誓った‥。独りでいようと決めたんだ‥‥。こんな事になったのは俺自身が決めたからなんだ‥‥。」

言い終えて、僕は清水の顔を見た。静かに涙を流していた。自分のせいだ。無意味な怒りで清水を傷つけてしまった。失意と後悔の念に駆られる僕に、清水は優しく言った。

「ナオトだけが悪い訳じゃない。幼なじみなのに気付かなかった私も悪いよ。だから、自分を責めないで。」

清水の言葉が、僕の心に染み込んでいった。何故か喉の奥が熱くなった。

「‥‥泣いても、いいのかな‥‥‥。」

僕は清水に聞いた。

「もういいんだよ‥‥。我慢しなくても。」

「そうか‥‥‥‥。」


僕は泣いた。静かに、涙だけが全てを洗い流すように溢れていった。

零れた粒が雨と混じって地面を濡らしていた。

時間はできた。後はアイデア探しです。

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