第10話「二人のこれから+人物紹介」
第1章完結です!
1月からずっと仕事が続いていたので、ストックのありがたみが本当に分かりました。
私の名は天宮蓮奈。私は今大変困っている。何に困っているかというと、なんと!住む家を失ってしまったの!
鹿鴉雄と病院から戻ってくると家がボロボロの状態になっていて全く住める状態ではなかった。襲撃されたというのは事前に聞いていたとはいえ、ここまでボロボロにされるとは思ってもいなかった。
「お嬢様、お待ちしておりました。旦那様よりご伝言がございます」
家の門の前に私の世話役のメイドがいて私を待ってくれていた。
「しばらく住む家がないので旦那様と奥様は別荘の方に行かれました。お嬢様も来て構わないということでしたが……」
「でしたが、の後何?もったいぶらないで言ってよ」
「粕男——いえ、鹿鴉雄様と一緒に住むならそれでもいい、むしろそうしなさいということでした」
「ええーっ!ちょっと待って!い、いきなり鹿鴉雄と同棲しろって言うの!?」
今日真実を告げられて、今日恋人になって、今日これから同棲しろって展開早すぎでしょ!?
「まあもう日は変わってるので昨日ですけどね」
そんなツッコミはいらないのよ!同棲するかどうかって話が問題なのよ!
「蓮奈は僕の家見たことないよね?一度見に来る?それからどうするか考えてもいいんじゃない?」
「う、うん。確かに一度も行ったことないし、見てみたいってのはあるかも」
※
「はあっ!?何この高級マンション!信じられないんだけど!」
鹿鴉雄に連れられてきてみれば超が何個もつくような高級マンション!一人で住むには広すぎるし、部屋も余り過ぎ!
「鹿鴉雄ってこんなお金持ちだったの!?」
「裏稼業の人間だよ?僕は中学から裏社会でやってきたからね。それなりに稼ぎはあるよ」
「ちょっと待って!じゃあ粕男がお金を借りに来たのは何だったのよ!?」
「ああ、あれは粕男を演じてたから本当にはお金に困ってた訳じゃないよ。それに借りても親伝えでお金返してるからね」
「え?じゃあ私が貸したお金も親に返してたってこと?」
「そうだよ。蓮奈の方に戻すから安心しろって言われてたから大丈夫だと思ってたけど違った?」
全然知らなかった。ずっと踏み倒されてると思っていたのに……。
「鹿鴉雄って本当にどこまでもクズを演じていたのね……」
「愛する人のためならどんなことだってするのが葛原家だからね。それでどうする?ここなら部屋も余ってるから蓮奈の部屋として使ってもらってもいいし、交通の便なんかもいいから蓮奈次第で……」
「住む!ここに住む!だってここなら誰にも邪魔されずに鹿鴉雄と過ごせる!」
もっと貧相で6畳一間みたいなアパートをイメージしてたから一緒に住むってなると色々と恥ずかしいなって思ってたけど、ここなら安全だし安心!ちゃんと私のプライベートも守れるし、何なら鹿鴉雄の部屋に行って……って何を考えてるの私!
「蓮奈?大丈夫?何か顔赤いけど?」
「あっ!いやっ!な、何でもないのよ!こ、これから鹿鴉雄と一緒に住めると思うとドキドキしちゃってさ……。ははははっ」
「しばらく仕事も休みだし、ちょうど色々揃えたりできるからこれから寝て起きたら買い物に行こうか」
「うん!それでね、鹿鴉雄。ほ、ほら今日は布団とかないから、鹿鴉雄のベッドで一緒に寝たいな~、なんて思ったりしてるんだけど、いい?」
「僕は別にいいけど、恋人になったら蓮奈って積極的だね?」
「べ、別に変な意味で言ったんじゃないわよ!今日は色んなことがあり過ぎて疲れちゃったから鹿鴉雄の胸の中で眠りたいって思っただけ!」
「大丈夫だよ。変なことはしないから。ただ蓮奈からそう来るとは思わなかったから意外だなって思っただけだよ」
こうして一番近くにいた幼馴染と初めて一緒のベッドで本当の意味で一番近い距離で一夜を過ごした。
※
Side???
ここは裏稼業の人間が利用する闇の病院。今、ここには鹿鴉雄の祖父である虎太郎の弟、象次郎が入院している。
「叔祖父、目が覚めたか」
鹿鴉雄の兄である豹一郎が朝一番に象次郎の元を訪れると、そこには目を覚ました象次郎がいた。
「ここは?ううっ!頭が痛い!」
「ここは闇医者のいる病院だ。叔祖父は催眠術をかけられていたんだ。頭痛は催眠が解けた反動だろう」
「催眠?儂がそんな催眠にかかるような柔な男ではないぞ」
「だが実際に催眠にかけられていたんだ。これを見てみるといい。あんたがやったことだ」
豹一郎は昨日起きた天宮商事襲撃事件と天宮家襲撃事件の記事が載った新聞を見せた。
「な……、こ、こんなこと……。儂が、儂がやったというのか」
「そうだ。しかも血の掟を破ってまで本家を潰そうとしてきたんだ」
ちょうどその時、鹿鴉雄が蓮奈を連れて病室までやってきた。
「おはよう兄ちゃん。叔祖父も目が覚めたみたいだね。よかったよ」
「鹿鴉雄、ちょうどいいところにきた。今叔祖父から話を聞いているところだ」
「ベストタイミングだね。叔祖父、僕らを襲った記憶はあるかい?」
「今、豹一郎から新聞を見せてもろうた。まさかこんな愚かなことをしてしまったとは我ながら情けない。すまんかった」
「何か催眠をかけられたとかそういうのは分からない?」
「正直なところ、催眠をかけられたというのがいつなのか、誰にかけられたのか全く分からん」
「まあ、それはこれから治療を行えば分かるかもしれない。とりあえずは叔祖父が元に戻ってよかった。それで鹿鴉雄、お前は何か心当たりがあったりはしないのか?」
「催眠術ってことは心理学系の学問を修めた者がやったと思うんだよ。そこに蓮奈が関わってくるとなると、西平大学あたりが怪しいかなと思ってる」
「え?なんで私と西平大学が関係あるの?」
自分とは全く関係のない大学の名を出されたことで蓮奈が疑問を発した。
「蓮奈と西平大学というよりかは西平大学のバックにいる帝成商会だね。あそこが天宮商事と一番のライバル会社だから。帝成商会は西平大学にかなりの額を寄附してるんだ。それと西平大学には心理学の権威がいるからね。僕の見立てではそこが繋がってるような気がするんだ」
「帝成商会か……。あそこはそう簡単に尻尾は出さんぞ」
「そうだね。多分今回の件が裏で帝成商会が引いてたとしてもそこまでは辿り着けないと思う」
「あの、それってどういうことですか?」
「裏稼業の者達は依頼主が誰なのかを言わないことが当たり前なんだが、命の危険に晒されると自分の命を失いたくないがために依頼主のことを口にする者がいるんだ。蓮奈ちゃんの場合はほとんどが口を割っている。だが帝成商会で依頼されたと思われる者は絶対に口を割らないんだよ」
「僕もそうだね。裏で帝成商会が引いてるって口を割った者はいないね」
蓮奈も帝成商会の存在は知っている。そして天宮商事最大のライバル会社であることも。帝成商会に対していい噂を聞いたことがない。そう考えると裏社会を利用していてもおかしくはないと蓮奈は思うのであった。
「じゃあ僕らはこれでお暇するよ。何か分かったら連絡ちょうだい」
「なんだ、早速カップルでデートか?」
「違う違う。蓮奈と同棲することになったんだ。それでこれから物を揃えに出かけるんだよ」
「鹿鴉雄、それをデートというんだよ。しかももう同棲するなんてお熱いこった」
からかう豹一郎に鹿鴉雄と蓮奈は顔を赤くするしかなかった。
※
どうしよう!豹一郎さんにデートなんて言われたから変に意識してしまって鹿鴉雄にどう接すればいいか分からない。
「蓮奈、そんなに緊張しなくてもいいんだよ。これがデートだというなら、蓮奈と初めてのデートなんだから楽しもうよ」
そうだ、中国旅行の時、鹿鴉雄と一緒の時間を過ごして思い出を作りたかったって思ったんだった。それに人生初デート。楽しまなきゃ損だよね!
「そうよね!じゃあまずは家具から揃えましょ!」
楽しい!好きな人と一緒にあれやこれやと選びながらお買い物するのがこんなに楽しいなんて!そうよ!こういうことがしたかったのよ!
「あー!すっごい楽しいっ!でもちょっと疲れちゃったかな」
「そんなはしゃぐ蓮奈は初めて見たよ。じゃあちょっと早いけどお昼にしようか?」
「そうね、鹿鴉雄は何が食べたい?」
「僕は和食がいいけど、蓮奈の食べたいものに合わせるよ」
「私のお買い物に付き合ってもらってるみたいなものだから鹿鴉雄に合わせるわよ」
ということで鹿鴉雄が選んだのは和食チェーンのレストラン。あんな豪華なマンションに住んでいるからもっと高級なところに行くと思っていたけど、庶民的でよかった。この前昴君を助けるために大金を使ったから節約でいきたいのよね。
「鹿鴉雄もこういうお店来るんだ?」
「ん?僕はこういうお店しか行かないよ。誤解しないでもらいたいけど、僕は裏稼業で稼いでいるからって豪華な暮らしをするつもりはないんだ。あのマンションは僕の正体を知られないようにするために購入しただけ。プライベートは守られるからね、あそこは」
「そうだったのね。ねえ、私に正体がバレないようにしていた時って大変だったんじゃない?」
「大変だとは思っていないよ。だって蓮奈のためなら何でもするって覚悟でこれまでやってきたからね。それにここは僕のことを知らない人ばかりからこうやっていられるけど、僕を知っている人がいれば僕は粕男に戻らないといけない。いつもの日常みたいになってるから苦ではないよ」
「私だったら無理だなー。だってオンオフの切替みたいに人格を変えないといけないんでしょ?そう考えると鹿鴉雄ってすごいよね」
「そんなことないよ。でもさ、昨日蓮奈がこれからは鹿鴉雄のままでいられるためにお互い仕事を辞めて探偵事務所を開こうって言ってくれて嬉しいんだ。やっぱり素のままの方がいいからね」
そう、私が昨日鹿鴉雄の耳元で囁いたのはお互いに天宮商事を辞めて探偵事務所を開かないかという提案。
私は鹿鴉雄と一緒にいたい。だから覚悟を決めた。天宮商事を継がずに素の鹿鴉雄と添い遂げることを選択した。
じゃあ跡継ぎはどうするの?って話になるけど、それはもう決まっている。私達の子供に任せればいい。もちろん子供が望めばだけどね。
「でも社長は納得してくれるのかな?ずっと蓮奈を次期社長にしたいと思っていると思うんだ」
「そこは私がちゃんと説得するから気にしないで大丈夫。それより早く注文してお買い物再会しましょ!」
今日は粕男の時代も含めて鹿鴉雄との一番充実した楽しい一日になった。これからいっぱい思い出を作っていくんだろうなと思うと楽しみで仕方がない。
鹿鴉雄、大好きだよ!これからも私のこと護ってね!
人物紹介
天宮蓮奈
今作の主人公。幼少期より天宮商事の次期社長を期待されてきた才女。学生時代は成績優秀、スポーツ万能、皆を引っ張るリーダーシップを遺憾なく発揮し、高嶺の花と呼ばれていた。しかし恋に関しては疎く、内なる鹿鴉雄に潜在的に惹かれていたが、それに気づくことなく厄介者として扱っていた。そして一番のトラブルメーカーでもある。幼少期より鹿鴉雄が護ることで回避できていたがその数は数えきれないほど。そのおかげで鹿鴉雄が裏社会最強となる実力をつけることができた。
葛原鹿鴉雄【世間体では葛原粕男】
裏社会最強の男。コードネームはカラス。幼少期より蓮奈を護るために地獄のような鍛錬を積んできた。普段はクズでカスな粕男を演じている。誰よりも蓮奈のことを考え、自分のことを犠牲にしてでも蓮奈の幸せを願ってきた。刀と銃のみならずあらゆる武器の扱いに精通している。
葛原鷹司【世間体では葛原柔男】
鹿鴉雄の父で元最強と呼ばれた男。コードネームはホーク。鹿鴉雄と同じく普段はクズでカスな柔男を演じている。妻である優美のために命を賭けて戦ってきた。引退をしていたが、星廉会での戦いを経て現役に復帰した。刀の熟達はそれほどでもないが、銃において鹿鴉雄に次ぐスペシャリスト。
葛原優美
鹿鴉雄の母で鷹司の妻。元々は蓮奈同様、柔男を演じる鷹司のことを軽蔑していたが、ある事件をきっかけに鷹司の本性に気づいてからは鷹司からの愛情をこれでもかと享受している。息子である鹿鴉雄と娘である美鶴と雀朱のことを気にかけている。特に鹿鴉雄には幼少期より裏稼業を意識した鍛錬をさせていたことに後悔の念を持っている。
葛原虎太郎【世間体では軽男】
鹿鴉雄の祖父で元元最強。コードネームはトラ。鹿鴉雄と蓮奈と同様に幼馴染の関係であった絹江のことを護ってきたが、それを知られることなくずっと裏で絹江を護ってきた。最終的に家族からのカミングアウトで絹江には伝えられ、虎太郎と結ばれた。銃の扱いはできないが刀一本で最強まで登り詰めた最強の接近戦の男。
葛原絹江
鹿鴉雄の祖母で虎太郎の夫。こちらも同様に軽男を演じる虎太郎に嫌悪感を抱いていた。見るに見かねた家族が絹江に虎太郎の本性を伝え、自分をずっと護ってきてくれたことに対して愛情を感じ結ばれた。幾度となく危険な裏社会の仕事を受ける虎太郎に対して気苦労が絶えなかったが長い年月を経て、虎太郎のことを受け止められる器の広さを持てるようになった。
葛原猫子【世間体では美代子】
虎太郎の娘で鷹司の妹。コードネームはキャット。鹿鴉雄とは叔母の関係にあたる。一度は引退したが、マスターの気まぐれで鹿鴉雄と対峙。圧倒的な差で敗れ血の掟により蓮奈の護衛の任を受ける。作中ではそこまで裏社会の人間としては活躍できていないように思った方もいるかもしれないが、一緒に営業活動をしている時に何度も蓮奈の危機を救ってきた実力者。鹿鴉雄と蓮奈が早くくっついてほしくてじれったいと思っていた。
葛原豹一郎【世間体は聡】
鹿鴉雄の兄で次期葛原本家の跡取りとなる男。まだこの人だ!という女生と会えていたにため、ふざけた人間を演じることなく生きている。鹿鴉雄や虎太郎、鷹司のように実践向きのタイプではないが、ハッキングや諜報活動に優れており、所謂頭脳タイプとして裏社会を支えている。だからと言って実力がないわけではない。あくまで三人には見劣りしているだけで実力は十分に備えている。
葛原美鶴【世間体は美月】
鹿鴉雄の双子の妹の一人。コードネームはツル。大学4年生で天宮商事に就職が決まっている。蓮奈のことを実の姉のように慕っており、蓮奈も実の妹のように可愛がっている。元気で明るい性格で美人なため、言い寄ってくる男性が多くて困っている。
葛原雀朱【世間体は涼美】
鹿鴉雄の双子の妹の一人。コードネームはスズメ。美鶴同様大学4年生で天宮商事の就職が決まっている。美鶴よりも蓮奈のことが大好きで常に一緒にいたいと思うくらいに慕っている。言葉数は少なく、周囲からはクールだと見られているが、ただ単にコミュ障だと自覚している。
葛原象次郎
鹿鴉雄の祖父虎太郎の弟。コードネームはエレファント。鹿鴉雄とは叔祖父の関係にあたる。本家である鹿鴉雄達一家に血の掟を破ってでも潰しにかかろうとしたが、鹿鴉雄一人の圧倒的な力でねじ伏せられた。実際は何者かに催眠術をかけられており、その正体が現段階では分かっていない。
葛原幻狼
象次郎の息子。コードネームはウルフ。自分の親の覚悟を受け取り、天宮商事、葛原本家を襲った張本人。実力では鹿鴉雄には全く歯が立たなかったが九州を拠点にしているため、九州ではかなり知名度が高い。
マスター
バー「ロウタイド」の店主。裏社会の依頼を一手に受けているかなりの手練れ。虎太郎とは旧知の仲である。蓮奈の裏社会へ足を踏み入れたことによる成長に目をかけ、彼女の成長に期待している。
大唐昴
鹿鴉雄の影武者。鹿鴉雄の正体がカラスだとバレないように表向きは昴をカラスとして演じさせている。攻撃など手を汚すことは鹿鴉雄から禁止されているので、あくまで鹿鴉雄のサポートに徹している。現在は蓮奈の運転手として働いているが、探偵事務所を開くことになったので今後のポジションはどうなるか不明。
主要人物だけ掲載しました。他の登場人物のまとめも書いてほしいということでしたら随時掲載していきます。
これで第1章は完結です。次章からは探偵事務所編がスタートです。
基本各章は10話で終わらせるつもりです。応援よろしくお願いいたします。




