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第5話 アカデミーでの目標

「アキトはさ、どうしてアカデミーへの入学を決めたの?」


 開口一番、席についた僕は質問を投げかける。対するアキトは、箸で摘んだロースカツを口に放り込むなり、モグモグさせながら答えてくれた。


「そりゃお前、ここに入学してくる奴なんて大体似たようなモンだろ? 数年前に確立された新技術、魔法という光に魅せられたのさ。お前だってそのクチなんじゃないか?」

「まぁ、その通り……なんだけど。僕が知りたいのはその先なんだ」

「先?」


 僕の言葉がイマイチ理解できないのか、首を傾げるアキト。確かに、先なんて曖昧な言い方では分からないだろう。僕は自分の言葉足らずを反省しつつ、もう少し詳しく説明する事にした。


「なんて言えば良いのかな……使えるようになった魔法でどういう事をしたいのか、とか。学んだ知識をどこで活かしたいのか、みたいな。そういう事を僕は聞きたいんだ」


「ふぅん、成程ねぇ。要は将来設計ってヤツか」


 考えるアキトの口に再び、一切れのカツが運ばれていく。咀噛音が響く中、彼は無言のまま理由を探しているようだった。やがて喉を鳴らした後、ゆっくりと口を開く。視線を僕に合わせながら。


「お前はどうなんだ?」

「へっ?」


 逆に尋ねられるとは思わなかった僕は、思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。


「いや、だから。お前はどういう将来を頭の中で描いてるんだ? 参考までに聞かせてくれよ」

「僕、は……」


 返答に詰まる。実のところ、明確なビジョンは何も無かった。ただ漠然と、魔法というモノを知りたいと思っただけで。アカデミーに入学した理由なんて、その程度だ。


「まだ決まってない、かな。正直言って、魔法がどういうモノなのか全く知らないんだ」

「知らないって……そりゃそうか。何しろ詳細は一切明かされてないしな。教えられたとしても、外部には漏れないように指導を徹底される」


 そう。一般社会では魔法の詳しい情報が秘匿されているのだ。言うまでもなく理由は、何にでも応用できる魔法の利便性と危険性にある。微弱なモノであったとしても、使い方を誤れば世界中に多大な被害をもたらす。それ故に、アカデミーは魔法に関する情報を厳重に管理しているのだとか。

 ――話を戻そう。つまり、今の時点で僕は魔法に関する知識がほとんど無いに等しい。なのでアカデミーで学んだ後、自分に何が出来るようになるのか。どんな仕事に就けるのか。そういった将来が想像できないでいた。


「……だけど、アカデミーにいる間の目標はあるよ」


 分からない、では終わらせない。僕はアキトの目を見据え、自分の考えを告げる事にした。


「僕は魔法を知り尽くしたい。そして、それを役立てる方法を見つけてみたい。ここで学んだモノが今度にどう活かせられるか。アカデミーにいる内にドンドン考えていけば、将来やりたい事が見えてくると思うんだ」


 僕の話を聞いたアキトは、目を丸くして驚いている様子だった。しかし、それも束の間。すぐにニヤリと笑うと、楽しそうな口調で呟く。


「ほぉ~、ノープランの癖にご立派な目標じゃねぇか。氷の令嬢サマを口説こうとする奴は、やっぱり違うねぇ」

「……それは、関係ないんじゃないかな」

「おっと、こりゃ失礼」


 僕の反論に肩をすくめるアキト。気がつけば、彼の皿の上には料理が綺麗サッパリ無くなっていた。


「……あ」


 しまった、話に夢中になって食べるの忘れてた。刻々と迫る昼休みの終了時刻に焦燥感を募らせ、僕は急いで食事をかき込む。


「おいおい、そんなに慌てんなって。俺が代わりに食べといてやるからさ」

「それ、君の腹が膨れるだけじゃないか」

「ハハハ! バレたか」

「バレるよ!」


 そんなこんなで昼食を終えた僕たちは、次の授業に備えて教室へ戻っていく。

 途中。アキトから入学した理由を教えてもらっていない事を思い出したものの、それを聞く時間は残されていなかった。

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