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脱出――落ちた神棚

 桂馬一茶と若頭菅原は下っ端組員と共に、電動式指詰め裁断機『エンコ詰六号機』を眺めていた。

 掌を差し込みギロチン式に切断させるという物騒な装置だ。電動なので手首を固定しまえばスイッチを押すだけの簡単操作だ。血で汚れることもない。


 菅原は声を出して説明書を読む。

「五号機にくらべ小型軽量、豊富なアタッチメント、指の滑りを改善し切れ味ましまし……か」


 一茶は傍らの下っ端に言う。

「波平」

「へい」

「左手の小指、入れろや」

「えっ」

 冷徹に言う一茶。

「試し切だ」

「ひえっ……お、おかしらそれだけはっ」

 ガバッと床に手をつく波平。

 それでも一茶は冷徹だ。

「あんな小娘に手間取る馬鹿、いるか?」

「勘弁してくだせぇっ次からはビシッとっ」

 菅原も同調する。

「不始末、つけるにゃそれしかねえ――おいこら逃げんのかっ」


 波平はすっ飛んでいくと、冷蔵庫からゴボウを持ってきた。

「お、おかしらこっ……これで……」

 波平は涙声になった。

 若頭は波平の差し出したゴボウをひったくった。

「えらく、ぶってぇな……しかたねえ、お頭これで試しましょうや。掌をここに入れて固定して、と……入らないな……アタッチメントを付けかえるか」

 設置が終わり一茶がエンコ詰六号機の電源を入れる――


 スパーン――


 ゴボウの先端がとんでもない勢いで吹っ飛び、壁に当たり跳ね返る。波平は腰を抜かした。

 三人はその凄まじい切れ味の光景を見て無言になった……。

「おかしら……こ、これを、澪に? チッと可哀想では……」

 菅原は目を丸くして見つめている。

 桂馬一茶もあまりの衝撃に言葉を失っていたが――

「つ……使うかどうかは……高ぇかね出したんだ……ジジイの出方次第だ……」



 熱帯夜で寝付かれない夜を過ごした山城澪。

 開け放たれている天窓からは、朝日と共に熱風もやってくる。


 今日も暑くなりそうだ。


『逃げられるわけ、ない』

 澪はまんじりともせず、ベッドをおり、部屋の隅で体育座りになると顔を埋めた。

 祖父江の言葉を心から信用していない澪。信用しないことで心の平穏を保とうとしていた。

『信じたあたいはバカだよ……ここで殺されるんだ……ああ……おおじいじ……死にたくないよう……』


 天窓から日の光は絶望の光りとなって、澪の精神状態を不安定にさせていった。



 午前七時

 澪の牢獄に向かって足音が谺する。

 時計もない牢獄だ。時間の感覚はなくなっているが、腹具合からすると食事の時間だろうと澪は思った。


 最後の晩餐――と言う声が澪の頭の中で響く……。


 案の定、下っ端の波平が高級仕出し弁当を持って牢屋の前に立ち、牢屋の下の隙間から弁当を滑り込ませた。

「朝飯だ、喰え」

「いらねえよっ」

「なんでぇ昨日の夜は美味そうに喰ってただろ。喰えよっ」


『もうそろそろだ……いるんだろうな』

 計画を反芻している祖父江の部屋にまたしても、悲鳴が聞こえた。


 ビシッ……バシッ……


 部屋の外、若頭の菅原の大きな声がした。

「ケンジッ見てこいっ」

『また始まったか』

 立ち上がる祖父江。


 幽閉された場所にいくと両頬を真っ赤にした波平がいる。

 普段は鍵のかかっている軟禁部屋が開いている。

「おまえ、開けたのか?」

「喰わそうと思って開けたんでやす……」

「逃げたらどうするんだ。――代われっ」

「へ……へい……」

 逃げるように波平は部屋から出て行く。

「おまえ、何しに来たんだよ。喰わねえからな」

 そういうと絶望に打ちひしがれた澪は座り込、両手で顔を埋めた。


 今日が最後だ……指が切り落とされる絶望感が澪を襲う。


 その時――天窓から甲高い音がする。

 それは天馬の口笛だ。

 それを聞いた祖父江は決断した。

「飯喰うな」

「え?」

「肩に乗れ」

「ええ?」

「いいから早く」

 言われるまま澪は祖父江の肩に乗った。

 そのまま立ち上がる祖父江。普段から鍛えている祖父江には造作ない。

 頭上には鉄パイプが走っている。

「パイプ掴め」

「届かないよう」

 祖父江は掌を返し、重量挙げ選手のようにぐいっと澪を持ち上げた。

『届いたっ』

 澪は反射的に配管を掴んだ。そしてぐぐっと力を入れる。

「窓に手をかけろ」

 祖父江の指示に従った澪は、必死になって窓枠に手をかけた。


 潮風が頬を舐める。朝日が熱い。貨物トラックの地響きがする。

 澪は窓から身を乗り出し、外を見る。

 倉庫の裏側だ。

 隣の倉庫の間に白いワゴン車が、幹線道路からの視界を遮るように横付けされている。

「飛び出せ」

 祖父江の声が下から届く。


『た……高い……』

 目が回りそうだ。思わず足が震える。躊躇する澪。


「早くしろっ」

 祖父江の声が飛ぶ。祖父江も必死だ。ここで桂馬が来たら元も子もない。

「で……でも……」

 真下から女の声がする。

「飛び降りて」

 下では両手を広げている女が見えた。

「大丈夫、受け止めるからっ」


 その女は天馬だ。


「時間がねえっ」

 祖父江の必死な声と手を振る天馬に思い切って窓枠を蹴る。

 髪の毛が逆立つ。アスファルトの地面に激突する瞬間――天馬はバイオボーグの左足に力を入れ左腕一本で澪を受け止める。

 しなる左腕――衝撃を和らげるように天馬は腰を落とし尻餅をつく。


 見られてはいけない……


 必死の思いで寺家は駆け寄り、転がった澪に白い布で被せる。

「乗ってっ」

 何が何だか分からないまま、ふらつく澪。寺家は咄嗟に澪の腰を押した。澪はなすがままワゴン車に押し込められた。

「御手洗さん!」

 天馬は御手洗を呼ぶ。振り向くと澪に化けている御手洗が震えている。


「いくよわっ」

 しゃがんだ天馬はバイオボーグの左腕で御手洗を天窓目掛け投げ上げる。まるで砲丸投げだ。

 天窓に悠々と手がとどく。

 御手洗は髪の毛を触る。


 大丈夫だ、取れてない……


「パイプ掴め」

 祖父江の声に天窓に足をかけ、頭上の配管を掴む。――そして落下。

 受け止める祖父江。

「うわ!」

 転ぶ御手洗。

「痛てぇ」

 天馬と違い二人とも派手にひっくり返った。


 菅原がチンピラ二人に命令した。

「妙な音がしたぞ……次郎吉、波平、見てこい」

「分かりやした」


 二人は澪の独房へ行くと部屋の隅で向こうを向いたまま、黙々と弁当を平らげている『澪』がいる。

 その傍らでは両腕を組んで見張っている祖父江がいる。


 二人に気がつき祖父江は言う。

「どうした?」

「音がしたから様子を見てこい、と若頭が……」

 祖父江は顎を上げる。

「飯喰え、としばいた」

「だから音がしたんでやすね。さすがケンジさん」と妙に感心する波平。


 次郎吉はふと腕を組んでいる祖父江を見た。

「ケンジさん、腕どうかしましたか?」

「腕?」


 見るとうっ血したように両腕が真っ赤だ。御手洗を受け止めた時の衝撃で出来たのだ。

 じんじんと腕が痛むが祖父江は平然とした。

「しばいた跡だ」

「やっぱ半殺しのケンジさんだ」

 二人は妙に納得したような顔をした。


 しかし祖父江の目から見ると、白い短パンと茶色のTシャツの色が微妙に違う。

 それに幾ら完璧に変装したとは言え、騙し通せないことはわかっている。

 祖父江にとっても気が気ではない。

 

時間との勝負だ――


 その中でも御手洗は悠然と、澪ならこうするだろうと想像しながら、お茶を啜り、後ろを向いたまま『澪』は空になった弁当箱をつい、っと差し出した。

 受け取ろうとした祖父江だが、じんじんと腕が騒ぐ。

「わっちが受け取りまさあ」

 そう言うと波平が代わって受け取る。

 その瞬間、愁いを含んだように見える御手洗の横顔を見た。

『中学生だよな?』

 一瞬、波平は不審に思った。だが波平は澪だと思い込んでいる。

「飯喰ったって若頭に報告しまっさ」

 そう言うと二人は出て行こうとするのを祖父江は呼び止めた。

「鍵おいてけ」



 倉庫の裏では天馬を残し、ワゴン車が走り出した。行く先は山城組事務所だ。

「やっぱ戻る……」

 揺れる車中澪が呟いた。

「なにを言っているの?」

 寺家は微笑む。

「違うのっ」

 澪の声に寺家は問いかけた。

「何が?」

 耳まで真っ赤にして怒る澪。

「戻してっ。あたいが逃げたら、祖父江のあにさん、殺されちゃうっ」

 寺家はそっと言う。

「大丈夫、ちゃんと手は打ってあるから」

 運転の越狩も言う。

「祖父江の兄ぃは不死身でやんす」

 それでも澪は駄々をこねる。

「あたい、覚悟決めてんだから――降ろしてッ、降ろしてよッ」

 越狩は陽気に車を止めた。

「はい到着~」

 

 組事務所前では事前に知らされていた東雲しののめが数人の組員と待ち構えていた。

 ワゴン車からゆっくりと降りる澪。

「お嬢だッ」

 東雲をはじめ歓声が沸き上がる。

「本物……だよな……?」

 東雲は疑ぐり深い目で澪を見た。そうでなくても一度はすっかり騙されたのだから……。

 東雲が髪に触れようとした。


 バシッ……


「なにすんだよっ」

 澪は東雲の頬を勢いよく叩いたのだった。

 手を頬に当てた東雲は感慨深く言った。

「モノホンのお嬢だ……」

 その声に組員一同直角にこうべを垂れる。

「お嬢、お帰りなさいませっ」

 感動の瞬間だが――「お嬢が戻ればおめえらに用はねえ。さっさとぇんな」

 寺家と越狩は唖然とした。

「無事に取り返したでやんす。それはないでやんしょう」

 抗議する越狩に東雲は冷淡だ。

ぇれぇれ」

 憤慨する澪。

「東雲、恩を仇でかえすんかよっ。礼を述べるのがスジってもんだろ」

 ドスのきいた澪の声が轟く。

「いいんですよ」

 寺家は静かに言う。

「御礼を聞きたいわけではありません。ただ澪さん」

「はい?」

 寺家は内ポケットから封筒を取り出し、澪の手に握らせた。

「この手紙を、必ずおおじいじに渡してください……さ、越狩さん引き上げましょう」

 そして二人はワゴン車に乗り込んだ。

 東雲しののめはにっこりと澪に微笑みかけた。

「さあさ、お嬢、参りやしょう。社長が待ってやすぜ。さあ、そんなったねえ手紙捨てて……」


 バシッ、ベシッ……


 憤然とした澪は、今まで以上の力で東雲を引っ叩いた――



 一方の杉田にも焦燥感があった。

 自由に動けるならともかく、今は車椅子の移動しか出来ない。

 もちろんそれなりの手は打ってある。しかし微妙なずれが生じたら元も子もない。

『山城五郎右衛門……上手く引き延ばしてくれよ……』

 祈るような杉田の前にワゴン車が到着した。




「菅原、ジジイに連絡きたかよ?」

 桂馬一茶は傍らの菅原に問いただした。

「なんせ時間がかかりやすんで」

「直ぐ返事は来ねえってのか」と一茶。

「秘匿性の高いアプリだと、山城のジジイにはちんぷんかんぷんで。組頭経由でないと」

「ちっ、手間のかかる耄碌ジジイだ」

「こうなりゃ猶予もありませんぜ。さっさとエンコ詰用意いたしやしょう」

「……動画も撮って送ってやろう」

 菅原は渋い顔をした。

「下郎の指がスッパーン、と?」

「あの威力を見りゃあな……あんまり気乗りせんが脅しには充分だぜ」

 二人が話し合っていると、倉庫管理人が顔を出した。

「電話でやす、社長。サシで話したいと山城五郎右衛門から」

「山城のジジイ……アシ、ついたらどうすんだ」

「アプリの意味が全くないな」

 舌打ちする一茶は電話口に出た。

「山城、決心はついたかよ……」

「決心はついておる」と五郎右衛門の声。

「権利書と引き換えに孫娘くれてやる」


「権利書か……」


「そうだ先に渡せよ。確認出来たら返すからよ」


「先に渡せというのか……」


「そうだ山城の旦那。先に返すなんざできっこねえ」


 勝ち誇るような一茶に五郎右衛門は言い放った。


「孫は諦める」


 予想もしない山城五郎右衛門の声に、桂馬一茶は驚く。

「その言い草はなんだよっ、どうなっても良いのか?」

 電話口の山城五郎右衛門は言う。


「孫娘の命より利権が大事じゃ」


 聞いた瞬間、一茶の頭に一気に血が上る。

「はっきり言いやがったなジジイっ」

 山城五郎右衛門は決心したかのように静かな口調だ。


「孫は……山城組の犠牲になる運命だったのじゃ」


「糞野郎ッ、両腕たたき切ってコンクリで埋めるぞ」


「構わん」


 いきなり電話を叩きつける一茶。

「菅原ッ菅原ッ」

「へい」

「エンコ詰め六号もってこいっ」

「どうしやしたおかしら

 菅原の問いかけを無視して怒鳴りつける。

「次郎吉、波平、下郎引きずり出せっ」

「へ、へいッ」



 いきなり電話は切られたが、山城五郎右衛門は静かに受話器を置いた。

 その傍らで澪が成り行きを静かに聞いていた……。



 ドタバタと緊迫した音がする。

 御手洗が危ない――祖父江は立ち上がった。


 しかし腕のしびれは癒えていない。


「ジタバタするんじゃねえっ、このあまっ」

 引き出された御手洗は無言で激しく抵抗する。

 波平と次郎吉、男二人ががりで御手洗を抑えこむ。

「こっち、来いっ」

 事務所に引き釣り込まれる御手洗。

 汗で化粧が流れだした。

「下郎、腕ェ載せやがれっ」

 もがく御手洗。

 腕が強引にエンコ詰六号機に乗せられる。


 そして――カツラが飛んだ。


「て、てめえっは?」

 驚きで、一瞬手が緩んだ。

 唖然とみる桂馬一茶と菅原……

 覚悟を決めた御手洗は無言でニッと笑う。

「この野郎っ」

 菅原の拳が御手洗の顔面を襲う。

 容赦ない鉄拳でボコボコに殴られる御手洗――蹴られ転がる御手洗――

 血を吹き出しながらも百地の声が響く。

『立派な役者になるのよ……』

 無言を貫く役者魂の御手洗。


 組員数人が事務所に躍り込む。

「全員でコイツ、押さえつけろッ。菅原、腕切り用アタッチメントに早く取り換えろッ!」

 興奮する桂馬は大声で怒鳴る。

「血の海になってもかまやしねえっ。たたき切ってやるッ!」

 数人で押さえつけられ、身動き出来ない御手洗。

「アタッチメント取替やしたぜ」

「右腕載せろっ」

「へいっ」

 組員が寄ってたかって、御手洗の右腕をアタッチメントに乗せる――


「わ」と言う声と共に組員が倒された。


 倒された先から祖父江が顔を出す。

 一茶は祖父江を睨んだ。

「てめえっ」

 一茶は全てを理解し激怒した。

「はめやがったなっ糞野郎っ――やっちめぇ!」


 そして――狭い事務所で乱闘が始まった。


 腕が振るえない祖父江。解放され部屋の隅に退く血だらけの御手洗……

 祖父江は足を使ってなぎ倒す。

「木刀もって来いっ。叩きのめせ」

 怒り狂った一茶は組員に命令する。


『へっ――雲行きが怪しくなってきたぜ』

 乱闘に倉庫管理人はタバコを持って倉庫の外へ出た。事務所の乱闘騒ぎを他所に、外は容赦なく太陽がギラついている。

 倉庫入り口でタバコに火をつけると、吐き出された煙が風に煽られ舞っていく。


『ん?』


 二号倉庫前に警察の護送車が止まっている。

『何だ、あれはよ』


 次に倉庫管理人の目の前に、猛烈な勢いでトラックがバックしながら迫ってきた。


 危ねえっ!


 タバコを放り出した管理人の横を、掠めるようにトラックが倉庫事務所に突っ込んでいく。

 轟音が倉庫に谺し、事務所が派手に揺れた。

 倉庫に突っ込んだトラックが停車する。

 後部ドアが、ばん、と開いた。

 天馬が叫ぶ。

「乗ってっ!」

 勢いよく荷台にすがる祖父江と御手洗。

 天馬は左腕の豪腕を振るい御手洗を荷台に放り込み、同時に祖父江の腕を掴む。

 祖父江の腕が悲鳴を上げる。

「早く、捕まえろっ」

 怒鳴る桂馬。

 押さえ込もうとする組員を祖父江が蹴り上げる。

 波平は出入りの時のために神棚に隠してるトカレフを思い出した。

 神棚から拳銃を慌てて掴む。

 

 バキバキッ……


 その瞬間、弾みで神棚が崩れ落ちた。


 壊れ落ちた神棚を見つめる桂馬一茶。しかし波平は「次郎吉、チャカでえっ」


 無闇矢鱈と発砲する波平と次郎吉。


 パン……パン……


 谺する銃音。


 天井に穴。剔られる床。

 銃弾が扉に当たり貫通する。


「いくよ~っ」

 トラック運転手の願成寺が言うと、悲鳴を上げるトラックが勢いよく倉庫から離れた。


「逃がすかっ」

 発砲を繰り返しながら倉庫から飛び出る二人。


 思うつぼだ。


「発砲確認ッ」


 その声と共に護送車から盾を持った宝来警察の機動隊員が躍り出た。

「やめろっ警察だっ」


 拳銃を向ける波平。

 だが――カチッカチッと拳銃が虚しい響きを上げるだけだった。

 

「KHKニュースの時間です。午後三時頃横浜の芦穂埠頭で暴力団同士の抗争が発生し……」





 スケロク倉庫内に佇む杖をつく五郎右衛門と澪、その後ろにしたがう東雲。

「時間稼げたかな?」


 澪から手渡されたメモには『時間を稼いでくれ』と書かれていただけだ。


 五郎右衛門の問いに車椅子の杉田が頭を下げた。

「充分でした。ありがとうございます」

「礼を言うのはこちらだ。東雲が無礼なことを言ったそうだな」

 東雲は縮こまる。

「孫娘を助けた御礼をせねば、ヤクザの矜持に触れる」

「命があるだけで充分です」と杉田。

 澪は心配するかのように言う。

「祖父江のあにさん、御手洗さんどうなりました」

「二人とも病院に行ってますよ。ご心配かけますね」

「そう……あの天馬さんにも御礼言いたいけど」

「彼女は現場に向かってますんで」



 五郎右衛門は見渡す。

「随分と暑いな」

「エアコン壊れてますので。冷たい麦茶しかありませんが……」

 管弦はお盆に載せたコップを三人に勧める。

 申し訳なさそうに受け取る東雲しののめ

 閃いたように山城は言う。

「そうじゃ。エアコン取り換えてしんぜよう」

 山城の声に杉田は言う。

「滅相もありません」

「良いのだ。孫娘の御礼じゃ。受け取れ」



 スケロク倉庫を出た山城の前に、まさに夕日が沈みかけようとしていた。

 無言で目を細める――三人の姿がオレンジ色に染まっていくのであった。


 

 第12話 完







※本作は、執筆における誤字脱字の校正および構成の補助として、AIツール(Gemini、Copilot、ClaudeAI、ChatGPT:全てフリー版)を利用しております。物語の核となるプロットや描写は、作者自身の手によるものです。


第12話ここで完了します。ここでも7千文字を超えましたが、途中できるとなんか中途半端になりそうで。一気に投稿しました。

次の第13話、暫くお待ちくださいませ。

え? いつまで続くんかって?

そ……そんな……(;゜ロ゜)

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