表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/360

61.アベルくんと魔素の秘密。

61.アベルくんと魔素の秘密。




 相も変わらず魔法と剣の修練は続いている。

 剣はまだ形と素振りだ。


 爺ちゃんの教え方は単純かつ有効だ。

 褒めてから修正点を提示。

 それだけだ。


 「よし、その形の素振りは鋭くて良かった。次は止めたときのブレをいかに無くすかだな。」

 こんな感じ。


 自分の良いところ悪いところが素直にわかって、教えられる方は気持ちがいい。


 と、ずっとこの調子で形と素振りが続いているわけだが、3歳の身体なら当り前だろう。

 打ち込みとか、筋トレとかは出来ないしね。


 さて、魔法である。

 母さんは俺が魔法を使えることを知って、どこまで使えるか、何を事象として昇華できるのか、それを調べるために躍起になった。


 特に魔改造最強ファイアーボールXのような、攻撃力の高い魔法を使えることに危機感を覚えているらしい。


 まあ、当然だね。

 3歳の子供が扱う魔法としては、危険過ぎるもんな。


 あとは、ロッティーと一緒にイメージ力強化と、魔力操作の練習にいそしんでいる。

 目の前で、魔力固定なしで、炎を3つ浮かせるくらいにはなった。


 ちなみ、母さんに魔法を使えるとバレたとき、5本指の先に炎を灯したんだけど、これは魔力操作をしなくても灯せる。


 魔力を指に通すだけだ。

 ね、簡単でしょう?


 魔力操作はロッティーの方が格段にうまい。

 操作の仕方が繊細なんだろうな。


 例えば、浮かせた炎で円を描こうとすると、ロッティーの方が真円に近い。

 俺は焦ってしまって歪な楕円になってしまう。

 

 もっと精進せねば。


 そして、アンネはいまだに魔素呼吸の練習だが、そろそろ魔素タンク化の種明かしをしないと、中身も身体も3歳のアンネローゼは混乱してしまう。


 現に冒険者ギルドでやらかしてしまったからなぁ。

 

 そしてその混乱によって、魔素タンクが母さんたちにバレてしまうだろう。

 だから母さんたちにあらかじめ説明した方が賢明なんだ。

 きっとね。


 よっしゃ、いっちょ告白してしまいますか。


 嫌だ、告白なんて恥ずかしい。


 「母さん、ちょっといい?」

 俺たちの練習を眺めながら、炎でお手玉やっていた母さんに話しかける。


 「どうしたの?アベル。」

 母さんは、すべての炎をさっと消し、俺に問いかける。


 「魔素のことで母さんたちに話ことがあるんだよ。」

 俺はあくまで真摯に話しかける。


 ふざけても仕方ないからね。


 「実はね、僕とアンネは魔素溜りが普通とは違うんだ。」


 「またぁ、あなたはいつも驚かせようとして。なに、早く言ってみなさい。」

 母さんは、眉間にシワを寄せビクッと驚いている。


 うわぁ、スゲー嫌な顔してる。


 「魔素が魔素溜りからあふれ出して、身体中に溜まっている状態になっているんだよ。」

 あ~あ、言っちゃった。


 「なに、それ?そんな症状は効いたことないんだけど。」

 まあ、ビックリするよね。

 そりゃあさ。


 「赤ん坊の時にね、トレーサ神から教えてもらったんだ。」

 俺は自分で見つけたけどね。


 アンネを外部操作で魔素タンク化したのは、トレーサがそうしろって言ったから。


 「トレーサ神が言ったのね。なんであなたとアンネちゃんなの?」

 母さんの追及は続く。


 「アンネローゼは聖女の力で、すごい回復魔法が使えるって前説明したよね。」

 

 「そうね、あなたはそう言ったわよね。」

 母さんは俺のかをお覗き込む。


 「それでトレーサ神は、人は身体中を魔素で埋めることができる。遥か昔は皆それが出来た。しかし、2千年もの間に、その技術はすたれ、魔素溜りのみで人は満足するようになった。」


 「2千年前の技術だっていうの?」

 俺の話を聞いて、半ば呆れたような顔をする母さん。


 「そう、アンネローゼにそれを施せば、回復魔法が使い放題だって言ってね、アンネの魔素溜りにある蓋を開けて魔素が体にあふれるように細工をしたんだ。僕はついでだって。」


 「なんで今まで黙っていたのよ。告白の時に言えたでしょ。」

 きっとこう言われると思ったんだけどさ、あの時は他のことを言うだけで、いっぱいいっぱいだったんだよね。


 まあ、これから体裁整えるけど。


 「あの時は、俺も混乱していたしね。まだアンネも魔法の修練を、し始めたばかりだったからさ。まさか、冒険者ギルドでアンネの魔素が魔素溜りからあふれるとは思わなかったんだよ。だから、皆が混乱する前に話をしようと思ってさ。母さんならわかってくれるよね?」

 俺はちょっと最後に甘えた口ぶりをした。

 

 「それで、今、あなたの身体の中は魔素でいっぱいなのね?」

 「そうだよ。だから魔改造最強ファイアーボールX程度なら何発でも撃てる。」

 

 「あれを何発でも撃てるですって!?」

 母驚愕。


 「うん、結構卑怯な感じがするよね。あ、何発って言っても、50発くらいかな。やっぱりあれは、結構魔素を削るからね。でも撃ったことないからわからない。普通のファイアーボールだと、魔素が全然減った感じがしないんだ。」

 元素である酸素を生成すると、なぜか魔素の減りが早いんだ。


 「その魔素溜りの蓋を開けるのは、私たちにも施すことができるの?」

 うん、そう思うよね。


 「トレーサ神が言うには、5歳までなんだって。それまでにその施術を行わないと、魔素溜りの蓋が開かなくなるんだそうだよ。僕らは赤ちゃんだったから、開いたけど。言葉がその時喋れたなら、姉さんにもやってあげたかったよ。」


 「そう、それは残念ね。」


 ちっとも残念そうじゃなさそう。

 そんなもんなくても大丈夫って自信の表れだ。

 実際、母さんはすごい魔法使いだしね。


 「トレーサ神が言っていたのは、2千年前、大きな戦争があちこちであって、人は魔素を身体中に満たし、強力な魔法を使って殺し合いをしていたんだって。ところがずっとそんなことをしていたせいで、人が少なくなって戦争も、その技術もなくなってしまったんだって言っていた。」


 母さんの顔が神妙なものに変わって行く。


 「戦争ばかりしていた人たちは、生まれた子供を自分が取り込んだ魔素を使って魔素溜りを満たし、子供の魔素溜りの蓋を開けていたんだって。その技術が無くなったんだ。ところが、今から1500年前に、身体中を魔素で満たした人が現れたって驚いていた。その人の名は、英雄王ノヴァリスだった。」


 英雄王の名前を出したら、母さんの目が輝く。


 「ふーん、英雄王ノヴァリス様がアベルと同じ能力ね。アベル、あなたも英雄になれるのかしら?」

 またこの人は突拍子もないことを言う。


 「ならないよ。僕と一緒されたら英雄王が迷惑しちゃうでしょ。」

 俺は笑いながらブンブンと顔の前で手を振った。


 「そうねぇ、アベルは基本のんびり屋だからノヴァリス様のように働けないわよね。」

 あら、よくご存じで。


 「まあ、そういうわけで、僕とアンネは魔素を人の何倍もためることができるんだ。それとね、母さんは知っているかもしれないけれど、魔素溜りにもっと魔素を詰め込むことができるよ。」


 母さんは不思議なものを見る顔をして

 「そんなのできるの?」

 母は訝しんだ。


 「うん、魔素をぎゅうぎゅうに詰め込むイメージをすると、どんどん奥に隙間なく詰まっていくんだ。」

 「あなた、それもトレーサ神から教わったの?」

 

 今のを聞いて、ちょっと考えている風の母さん。

 いや、この人、今試してる。


 「いや違うよ。赤ちゃんの頃は暇だったからね。いろいろ実験していた。」

 実際、歩く事も話す事も出来ないし、何もできなくて暇だったしね。

 

 俺がそう言うと、いきなり母さんが素っ頓狂な声を上げた。

 「あ!ホントだ。」

 ああ、声に出さずとも、やっぱり試していたな。


 そして母さんは、呆れたように俺に呟いた。

 「やっぱりあなたは変な子ね。」 

 


 

 ごもっとも。



ここまで読んでいただき、有難うございます。

続き読みたいなぁって思ったら、是非ブックマークしてやって下さい。

作者が喜びます。

外されると病みます。

嘘です。

とにかく気に入ってくださると幸いです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ