37.アベルくんとお城のセクション。
37.アベルくんとお城のセクション。
俺は組織の改編から話を始める。
「そうだね、まずは組織の改変から考えなくちゃ駄目かな。まず領主。これは父さんね。騎士団は領主直轄、代表はチャールズ騎士団長。そして執事。家令と呼んでも…いや執事でいいか。ヨハンがこれ。実質的な父さんの補佐官。そしてここからが違ってくるかな、文官長としてネス。文官と官僚の長としての役職。最終的な取りまとめ。ネスが父さんに仕事を持ってくるようになるね。ここから実務だよ。軍務部。騎士団と駐屯してるノヴァリス国軍の事務関係をここで処理する。剣を振り回してるだけじゃ兵站は管理できないからね。次は財務部。税務や収支、お金全般を取り仕切る部門。法務部。ノヴァリス王国の法をヴァレンタイン辺境伯領で取り仕切る部門。刑罰を決めるのはここになるね。」
ここまで話して二人を見たら、ポカンて顔してほうけてた。
「どうしたの?」
と、二人に聞いてみる。
「坊主、やっぱりお前スゲーな。」
ギルおじさんの目が点だ。
父さんは
「あ、ああ、ごめん、続けて。」
なにかに馬鹿されたって顔をしてる。
「じゃ続けるよ。行政部。各種行政の調整。上申書や報告書の取りまとめ等など。雑務が多そうな部門になるかも。最後が公共農業部。公共事業と農業の取りまとめだね。今までは部門ごとに別れては居たけどザックリだったからね。父さんの負担も大きかった。これだけ細分化して、専門職員を育成できれば一気に楽になるんじゃないかな?おっと!大事な部門を忘れていたよ。ダンジョン部。深紅の大穴を中心としたダンジョンの状況把握、管理を行う部署だね。これはギルおじさんのところと密接な関係が必要になる。」
「アベル、これを自分ひとりで考えたのかい?」
ちょっと引くほど驚いているローランド父さん。
「うん、そうだよ。初めは姉さんと相談しながらって思ったんだけど、今がちょうどいい機会だったからね。というか、セイナリアの宮廷ではこれができているんだよね。参考にしたのはそれだけど、なぜうちで出来なかったのが不思議だったんだ。」
「宮廷はほら、宰相閣下が、いや、セントクレアのお義父さんがいるからな。」
父さんはちょっと苦笑いしている。
「ウィリアム爺ちゃんて、やり手?」
宰相閣下のウイリアム・セントクレア侯爵は、アリアンナ母さんのお父さんで、ロッティーと俺の爺ちゃんに当たる。
「うん、凄くな。しかし、シャーロットもアベルもセントクレアの血が濃いのかもな。うちは武芸の血だから。」
ローランド父さんはちょっと寂しそう。
「わかんないよ、僕も剣術始めれば、父さんの足の小指ほどの実力を発揮するかもしれない。」
剣を振るふりをしながらローランド父さんに言う。
「アベル、なんだよそれ。よし、今度から剣術の修練な。」
父さんは、さっきと打って変わって目に力が出てきているね。
「ハハ、父さんが忙しくなくなったらね。ところで学校の話をしていい?」
俺は強引に話を変えた。
「そうだったね。聞かせてもらおう。」
頷きながら父さんは俺を見据える。
「まず募集は、貴族の子息、息女、市民、エルフなどの他種族。まあ、あれだね、その中身は、冷や飯食ってる優秀な次男や令嬢なんかをすくい上げたいなと。市民の中もね、身体が弱くて冒険者になれない、頭が優秀な人とかいればいいなぁとか、エルフ、ハーフエルフやドワーフでも居てくれたら、他種族しかわかんないことに気づいてくれるかなんて思うんだ。ただプライドの極端に高い奴とかは駄目だろうね。まあ貴族だとその傾向が強いと思うんだけど、学校に入った時点で階級は無しって頭で居てくれないと、途中からでも追い出したほうがいい。そんな頭で何十年も務められたら、トラブルの基でしかないもんね。」
「坊主、やけに貴族に辛辣だねぇ、何かやられたのかい?」
ギルおじさんが訝しんだ感じできいてくる。
「僕はまだお城から出たことがないからね、何かやられたとか、そんな事はないよ。ただ貴族ってだけで他人を見下す人間は多いって聞いたからね。そう言うのは嫌だなって思ったんだよ。と言っている僕も貴族だから、自分で言ったようにならないよう気をつけないとね。」
前世でも、出自、年収、学歴でマウントを取ってくるやつは、腐る程いたからな。
まして封建制度真っ只中だもの。
そりゃその手のマウントは当然あるよね。
前世の職場の主任は旧帝大卒ってだけで威張っていたな。
こっちに迷惑はかからなかったけど、部下だった連中はパワハラを受けていた。
有名大学卒ってだけで、なんでそう威張れるんだろうね?
「うん、十把一絡げに貴族はそうだって言うことは出来ないけれど、そう言う思考の貴族は少なからず居るよね。僕も冒険者をやっていた時にそう言う人達に迷惑を受けたよ。」
昔を思い出して、苦笑いの父さん。
「まあ、威張り腐っている奴はどこにでも居るな。しかも下級貴族の次男坊、三男坊が市民に威張ったりするんだ。あれは見てらんない。」ま
た渋い顔をしたギルおじさんが腕を組みながら言った。
また窓から、スーッと涼しい風とともに、遠くの修練場からチャールズ騎士団長の号令が響く。
俺は「うーん」と伸びをしてから腕を下ろし「ふぅ」と息を吐いてから
「そうだねぇ、あまり威張らない人が来ないことを願いつつ、最初に話した人員を募集の対象にしたいね。希望者が多いようなら入学試験をやろう。あとは授業内容だけど、これは父さんと爺ちゃん、ヨハンとネス、ロッティー姉さん交えて決められればなって思う。」
と、言った。
それを聞いて父さんが「試験の内容はどうするんだい?」
と、聞いてきた。
「試験の内容は、基礎学力、ああ、読み書きと算術ね。基本的にこれは出来る人が集まると思うんだけど、あまり得意じゃない人も来ると思うんで、そこはふるいにかけなきゃ駄目かなと。あとは、このノヴァリス王国の法や概要を大まかに知っている人のほうがいいなって感じで。これはまあまあ分かってればいいやくらいの感じかな。とりあえず、そんな問題を出すことになるだろうね。」
そう父さんに向かって言う。
「うん、なるほどね。アベルの考えはわかった。みんな集めてあとで話し合ってみよう。全体の資料は作れるかい?」
ローランド父さんは今までの話を頭の中で整理しているんだろう、ちょっと難しい顔をして俺に聞いた。
「そうだね、姉さんに相談して、詰めてみてから文官に手伝ってもらって作ってみるよ。一人か二人文官を借りることになるけど?」
「ああ、それは構わないよ。今日のうちに僕は親父にこの話をしてみよう。アベル、おかげで有意義な午後になったよ。なあ、ギルバート。」
幾分晴れやかな顔になったローランド父さんがそう言うと
「おお、俺も職員養成学校の案を持ち帰ってみるぜ。ローランド、坊主を後でいいからギルドに来させてくれないか?さっきの話を副ギルド長と他の連中にも聞かせてやりたいんだ。」
言いながら、ニヤリと笑うギルおじさん。
「ああ、勿論だ。いいよね、アベル。」
父さんは優しげなまなざしで俺に聞く。
「うん、いいよ。」
俺はにっこりと笑って頷いた。
そして、ローランド父さんは俺を抱きかかえると、優しく頭を撫でた。
投稿50話目だそうで。
ここまで私の駄文にお付き合い有難うございます。
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