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35.アベルくんとお城の書斎。

35.アベルくんとお城の書斎。




 たまたまギルド長が城に来て、ローランド父さんと父さんの書斎で茶飲み話をしていたときに、何故か俺もそこに居合わせた。

 本来ちょっと薄暗く、棚に多数収められているある書籍が圧迫感を感じさせる書斎だが、ちょっとだけ開けた窓は、爽やかで涼しい風を運んでくれる。


 天井に吊られた魔道具が、書斎の薄暗さを緩和してくれている。


 そんな中、ギルドの職員数がギリギリってギルド長から聞いたんだ。

 俺の職員増やせば?

 って、質問には

 「みんな職員が足りないのは知ってるんだ。それだから、きつい仕事だって言って誰もやりたがらない。冒険者の連中も素行の良い奴ばかりじゃなくて、職員に当たる様なバカな奴もいる。ギルド職員なんて割に合わないって思うんだろうな。」

と、言って、ギルド長は大きくため息をつく。


 「それに、国民のほとんどは読み書きも計算もできる。だから、なんとか自分で仕事を見つけてギルドの仕事は避けてるんだよ。」

と、ほとほと困ったと額に手を乗せるギルド長。


 「アベル、なにか考えはあるかい?」

 ローランド父さんはティーカップを片手で持ち、目を細めた余裕のある顔で俺を見て言った。


 「父さん、3歳児にそれ聞くの?」

 俺はびっくりして父さんを見る。

 いくらなんでも3歳児に聞くことではないだろ、まったくもう。


 「いや、心底ギルバートが困っているようだからさ、アベルやシャーロットならなにか知っているんじゃないかなって。お前たち、物知りじゃないか。」

 ローランド父さんはそう言って紅茶を口に含んだ。


 ちなみにギルバートとは冒険者ギルド長のことだ。

 A級冒険者からヴァレンティア支部のマスターになった人だ。


 見た目、身長が2m近いかな。

 身体つきは筋骨隆々。

 The前衛って感じ。

 こんなのが前に居たら安心感半端ないだろう。

 髪の毛は短髪で切りそろえてあり、その下に左の目じりから唇にかけての切り傷があり、いかつい顔が張り付いてる。


 デカい筋肉だるまは、禿ってイメージだったんだが、この人は違うな。

 ローランド父さんとは、元A級冒険者同士ってわけで仲が良い。

 深紅の大穴では、パーティーも組んでいたそうだ。


 ちなみに俺はギルおじさんと呼んでいる。


少し強い風入りカーテンが揺れる書斎で、びっくりした顔を隠さないでギルおじさんが父さんに聞く。「坊主がなにか解決策を出してくれるのか?」

 父さんはゆったりしたまなざしで俺を見つめながら

 「ああ、シャーロットとアベルは特別なんだ。僕やアリアンナより物事をよく知ってる。楼閣主が、辺境伯じゃもったいないって言っているよ。」

 と、言ってまた紅茶を一口飲んだ。


 「へ~、あの楼閣主にねぇ。坊主スゲーな。」

 ギルおじさんはガハハと笑いながら言う。


 「それだけじゃないんだ、なんと、成人したら筆下ろししてやるとまで言われたんだ。アリアンナとシャーロットが怒っちゃって大変だったよ。」

 父さんは、ニマニマとちょっと悪戯っぽく笑いながら俺を見つめて言った。


 「マジかよ!へぇ~、坊主よぉ、マジ羨ましいぞ。」

 心底羨ましいって感じで身を乗り出してくるギルおじさん。


 「二人ともやめてよ。楼閣主の婆ちゃん、600歳だろ。考えられないよ。」

 うん、あくまで3歳児のスタンスで行こう。


 「でもな、坊主。あの人と一夜を共にするのは、とても名誉なことなんだぜ。名だたる領主や金持ち、名を馳せた冒険者でも、仕事や人格をちゃんと見極められて、気に食わない相手はみんな袖にされる。それでも相手をした奴は、ヴァレンティアだけじゃねぇ、首都セイナリアまでも名が轟くんだ。一流の人間だと認められたって事だからな。」

 ギルおじさんが遠くを目を細めて見ながら俺に説明する。


 「15歳で名を轟かせたくないんですけど。」

 俺はため息混じりに返事をした。


 この国では15歳が成人だ。

 楼閣主の婆ちゃんは、15歳の少年を狙っているわけだよ。


 「今はまだ3歳だからね。どうなるかわからないし、気にしなくてもいいよ。」

 おかしそうに笑ってる父さん。


 「冗談はここまでにして、人員増の案を出すよ。いい?」

 俺は真面目な顔をして二人に話題を変えた。


 「ああ、やっぱりあるんだね。教えてくれ。」

 真面目な顔になった父さんは俺に開き直る。

 

 「一番簡単な方法は、職員の賃金を上げること。これが一番楽だと思うけど、どう?『予算がない』なんて言わないよね?」

 俺はふふんと冗談めかした顔で言う。


 ところが、ギルおじさんは渋い顔をして

 「それはやった。採用項目に1割5分増しの給与を書いて募集を掛けたんだ。そしたら新規募集には全く引っかからなかったのに、現状の職員がその分給料上げろって大変なことになったよ。」

 腕組みをしながら唸ってた。


 「そんなにギルドの職員になるのが嫌なのか。職場の雰囲気を良くする努力が必要だね。」

 内心、まあ、そりゃ、やってるよね、と思いながら言ってみる。


 「そんなんはとっくにやってる。どうすりゃいいのか、ほとほと困ったよ。」

 ギルおじさんは天井を向いて黄昏始めたんで、もう一つの案を発表することにした。

 

 「もう一つ案があるよ。これは時間もお金もかかる。ただ職員は継続的に確保できるって案なんだけど、聞く?」

 今度は大まじめだ。


 「時間と金か。うーん、聞いてみるだけ聞いてみるか。」

 渋かったギルおじさんの顔がより一層渋くなった。



 窓の外から鳥の鳴き声が聞こえた。



ここまで読んでいただき、有難うございます。

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