460.アベル君と騎士学団の打ち合わせ。
460.アベル君と騎士学団の打ち合わせ。
俺とフランカは、機嫌が悪そうな顔で立っているテオドールの元に歩いて行った。
「何があったんでしょうね?」
フランカが少し怯えた声で俺に聞く。
「それを確かめないとね。」
フランカとそんな二言三言交わす間に、テオドールの前に着いた。
「来たか。」
テオドールは言葉数少なく、俺とフランカを見据える。
「機嫌悪そうですね、テオ先輩。」
「誰の所為だよ?」
冷たい声で吐き捨てるテオドール。
「婚約の件に関しては、僕一人の責任ではありませんので、オリビィに直接言って下さい。」
面倒臭いから、分かって俺は地雷を踏み抜いた。
「オリビィ!?オリビィだと!!アベル!お前、王女殿下を、オリビィなどと呼んでいるのか!」
「ええ、呼んでおります。五歳の頃からオリビィに請われてですが。」
「くっ、オリビィ、オリビィかぁ。いいなぁ。麗しい王女殿下にピッタリな愛称じゃないか…」
一人でブツブツ言いだしたテオドールを見て、フランカが俺に耳打ちをする。
「テオドール先輩は如何なされたのですか?」
「テオ先輩は、王女殿下を崇拝しておられるんだよ。そこに僕との婚約話が出てしまったものだから、ちょっと情緒が安定してないんだろうね。」
「聞こえているぞ。もういい。オリビィ殿下のことは置いておこう。」
オリビィ殿下にしているが、これは諫めなきゃ駄目か?
王族の前じゃなきゃいいか。
オスカー一人ならどうとでもなるしな。
「近々武道大会がある。その主催と大会運営を騎士学団がやる。その打ち合わせを放課後やるって話だ。」
武道大会とかあんのか!?
いや、むしろない方がおかしいよな。
日本の学校で体育祭がないくらいにはおかしいことだろう。
しかし主催と運営とは、何ぞや。
「なるほど、承知いたしました。大会運営とはどのような事をやるのですか?」
俺はテオ先輩に聞いてみた。
「それも合わせて説明するから、授業が終わったらすぐに幹部会室に来給え。わかったな。」
「「はい、承知いたしました。」」
俺とフランカが同時に返事をした。
「うん、ではな。」
そう言ってテオ先輩は翻り、廊下の奥へと去って行った。
その途中で。
「お、オリビィ殿下か…麗しい…」
などと言う呟きも聞こえたが、聞かなかったことにしてやろう。
「大丈夫なんですか?」
フランカが俺に聞いてきた?
「幹部会室で説明してくれるんだろ?大丈夫も何もないさ。」
「そうじゃないです。王女殿下のことです。」
「ん?オリビィのなに?」
「トラブルにならないのかってことです。」
「うーん?どうだろうね。王族を崇拝するなとか言えないしね。むしろ崇めろって話でしょ。」
「そうですか。そうですよね。アベル様も大変ですね。」
「分かってくれた?」
「分かりたくないですけどね。」
「そうだね、僕も分かりたくなかったよ。」
そんな話しながら、教室に俺たちは戻った。
そして放課後。
「フランカ、行こうか。」
「はい、アベル様。」
俺たちはテオドールに言われたとおり、騎士学団幹部会室に向かった。
「ガチャ!」
俺はドアを開けて幹部会室の中を見た。
居たのは、テオドール、リック、ジーナ、そしてイーディス。
オスカーを抜いたほぼ全員が揃っていた。
「皆さん、お疲れさまです。」
俺は先輩方に会釈しながら幹部会室の中に入った。
「失礼いたします、皆様ごきげんよう。」
フランカも同様に室内に入った。
「来たか。」
テオドールが声を出し、雑談していた皆が黙る。
「まだ殿下がいらしてはいないが、一年生もいることだし、武道大会の概要を説明しようか。」
テオドール曰く、今回三百回を迎える古い行事である。
大会に出場しても良いが、騎士学団幹部会はあくまで裏方。
成績的に加味されないことになっているが、各地域の騎士団幹部が見に来ることから、いわゆる見本市会場のようになっていることは否めない。
あれだよ、甲子園とか、お正月の国立とかと同じ扱いなんだろう。
「それだと幹部会に入るのは将来的にまずいことなんじゃないですか?」
俺は口に出して質問してしまう。
「その疑問はもっともだ。だが杞憂でもある。ここのほとんどが貴族の嫡男もしくは嫡女であること。つまりは自分の家を継ぐものが多き組織ということだ。もちろんそうでないものもいる。でもその者は卒業までしっかりとここでの務めを果たせば、幹部会卒業生としての栄誉が得られる。代々幹部会卒業生とのコネクションを得られるのだ。これは、大会優勝よりはるかに強力だ。貴族としてはな。」
なるほど。
デカいサークルの卒業生みたいなもの?
あいつら大嫌いだったんだけどね。
てことは俺の現状は、今その糞嫌いだった連中の位置でウェイウェイやってるってこと?
クソが。
と、言っても詮無いことだ。
生まれ自体がそうなんだもん。
連中もそうだったのかも知れないが。
「まあ、だから大会に出れないからと言ってすねないでいいぞ、アベル。」
「すねませんて。」
「ほう、騎士学校の武道大会に出ても仕方がないと?エドワード様が制した全国武道大会に出たいとでも言いたそうだ。」
「そんな大それたことも言いませんよ。」
たわいのない会話をしていると、「ガチャリ」と幹部会室のドアが開くのだった。
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