461.アベル君と役割分担。
461.アベル君と役割分担。
「すまん、遅くなってしまった。」
扉から入って来たのは、少し暗い顔をしたオスカーだった。
なんで?
あれから娼館に行ってないから、欲求が不満を述べているのか?
「殿下、顔色が優れないようですが、如何なされましたか?」
テオドールが進行役らしくオスカーに聞いていた。
「いや、大したことは無い。些か疲れていてな。それだけだ。」
綺麗な顔の目の下に隈を作っているオスカーがそんなことを言った。
むしろやり過ぎか?どこで?誰と?
いや、生徒同士の恋のさや当てなら俺が出る幕もない。
普段なら、撫でつけられている綺麗な金髪も、今日に限って言えば乱れて垂れ下がっている。
まあ、見る女性たちからすれば、乱れた髪も色っぽく見えるのかも知れない。
「テオ、議題を止めてしまって済まない、進めてくれ。」
「畏まりました。」
「続きからだな。とりあえず我々はあくまで裏方に徹し、特別な場合がある以外は選手として出場はしない、ということで良いな?」
「はい。」
それぞれまばらではあるが返事があった。
「そして我々がやることは、会場の設営。勿論我々だけではできないので、騎士学団として団の指揮を行う。それらの割り振りはまた後だ。いいな、アベル。」
なぜ俺を指名で聞いてくる?
訳が分からないよ。こんな目立たぬいい子なのに。
「はい。構いません。」
俺はテオドール、めんどいからテオに返事をする。
「うむ。当日は各種来賓がいらっしゃる。目玉は、王妃陛下と王女殿下だ。」
そりゃ、お前にとって目玉だろうな。
「王族の方々は、校長ご夫妻と一緒に貴賓席に座って頂く。そこで貴賓席には我々の中から、ホスト、ホステスを置くことになる。」
グスタフさんとルミナ夫人に王妃とオリビィか。
うん、トラブルの予感しかしない。
「やりたい者は居るか?他薦自薦構わないぞ?」
などとテオは言っているが、やりたいんだろうな。
いや、むしろ遠くで愛でていたい派だったような気もする。
他薦でもOKならば。
「よろしいでしょうか?」
俺は手を挙げて、テオを呼ぶ。
「アベルか。なんだ?」
つまらなそうな顔と声でテオは答える。
「推薦をしたくて。」
「アベルが他人をか?誰だ?」
「テオ先輩とフランカです。」
「何!」
「えっーー!!!」
テオの顔が驚きで引きつる。
同時に、フランカの絶叫が室内に響いた。
「あ、アベル、理由を聞いてもいいか?」
テオはどもりながらも他薦の理由を聞いてくる。
「普通ならば殿下オスカーか僕がホストになるのだと思います。理由は言わずもがなです。」
俺はそう言って皆を見回す。
「ですから、普段から会うことの出来る僕やオスカーより、この騎士学団を引っ張ってくださっているテオ先輩と、これから上位の貴族の方々と接する必要が生じるフランカを推すことにしました。」
「うん、アベルらしい理屈だ。しかもアベルらしく間違っていない。いいんじゃないか?テオ。」
そう言って疲れた眼をしたオスカーはテオを見据えた。
「逆に言えば、オスカーは他の来賓のホスト、いや、来賓全体のホストが相応しいのではないかと愚考します。来賓の方々も王太子殿下に接待をして頂ければ、恐縮する方もいるかもしれないけれど、それはそれでイベントとしては喜ばれるのではないかと思います。」
「アベル、貴様、私が来賓全員に愛想を振り撒けというのか。」
「全員というわけじゃないさ。必然的に、そうなるだろうけどね。」
「だろうけどじゃない!しかしアベルがそう想定するなら、そうなるのだろうな。」
なに?俺ってば信用あんじゃないの。
「で、アベルは何をするんだ?」
テオが俺に聞いてくる。
「僕ですか?僕はリック先輩たちと臨機応変に立ち回りますよ。ね、リック先輩。」
「え、あ、そうですね。臨機応変に皆さんのサポートでしょうか。なあ、イーディス。」
「そうね、私とジーナは臨機応変に立ち回るわよ。」
「わっはっはっは。」
俺、リック、ジーナ、イーディスは高らかに乾いた笑いを発するのだった。
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