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33.アベルくんと日本円の話。

33.アベルくんと日本円の話。





 物価を調べようにも、生憎ロッティーも俺も市場の相場には疎い。

 城から滅多に出ないからね。


 たまに馬車に乗って街の風景は見ることがあるけれど、 それだけで市場や店舗に入ったことがない。

 そういう時はローズとリサだ。

 ちびっこメイド達は休みの日に連れ立って街に遊びに行っているからな。


 俺の着替えの洗濯を終え、ローズが俺の部屋に帰って来た。

 姿を見せたローズは、セミロングのブルネットの髪、その頭の天頂に二対の狼耳がぴょこんと頭を出してる。

 ワンピースのメイド服のお尻からフサフサのしっぽが揺れている。顔はまあ8歳の可愛らしい女の子って顔だよね。


 そのローズに聴いてみる。

 「ローズ、ちょっと教えて。」

 ローズはちょっとだけ小首を傾げて

 「アベル様が私に教えを乞うことなんてあるのですか?」

 などと不思議そうに言う。


 「まあね、僕なんて城から出たことがないから、何でもは知らないよ。市井のことが知りたいんだ。」

 「市井に興味があるのですか。アベル様は何でも勉強しますね。」


 「姉さんじゃあるまいし、何でもはないかな。ところでさ、市井の皆が食べてるパンて一個いくら?」

 「パンですか?ジョージさんたちが作ってくれて、朝、皆で食べるような?」

 「そうそう、そんな感じのパン。」

 「そうですね、大体小銅貨1枚と銭貨2枚くらいですね。」

 ローズは小首をかしげながら話す。


 「じゃあ、子どもでも買えるおやつなんかで一番安いのは?」

 「あれですね、棒の先に付いている水飴です。銭貨2枚くらいですね。不思議ですよね、パンができる麦から飴ができるなんて。」

 ポンと手を叩き答えるローズ。


 「それな。ところでさ、銭貨一枚で買えるようなものはないの?」

 「私がお城に来たのが4歳の頃だったのですけど、その頃水飴が銭貨1枚でしたね。」

 「ふーん、4年で2倍か。インフレかな。物資不足って聞いたことはないから、人口の急激な増加とか、景気が良い証拠か。」

 と、俺は思わず声に出して呟いた。


 前世の記憶に当てはめると、インフレ前で考えても駄菓子だから銭貨が10円くらいなんだろうか。

 こう考えると、わかりやすくていいね。

 そうするとパンが一個120円てとこか。


 前世のコッペパンが120円だと、中身が挟んであるタイプだったから、ちょっとこっちのパンは高い気がする。

 素材の値段が高かったり、こっちは手作業でパンを作っているからその職人のコストがかかるのかな?


 ああ、コッペパンなんて思いだしたら、あんことマーガリンのコッペパンが食いたくなってきた。


 「アベル様、なんです?インフレって?」

 ローズが小首をかしげて聞いてくる。

 

 ああ、こいつ耳がいいんだったよ。ぴょこんと立ってる狼耳は伊達じゃない。


 「あれ、聞こちゃったか。インフレってさ、簡単に言っちゃうと、お金の価値が下がる、って言ってもピンとこないか。物の値段が上がっちゃうことさ。給料上がんないのに、パンの値段が上がっちゃうと生活が苦しくなるだろ?そう言うものの例えだよ。」


 「やっぱりアベル様は物知りじゃないですか。私はそんな言葉を聞いたことがなかったですよ。3才児じゃないみたい。やっぱりシャーロット様の弟君ですね。」

 そら見たことか、ってな感じでローズは言う。


 「姉さんのことは置いといて。もう一つ質問いい?あのさ、市井の住居の家賃ていくら?」

 「家賃ですか?申し訳ありません。それは流石にわかりません。大人の人じゃないと。私がお使いに行ってもお家を借りられませんから。」とローズは朗らかに笑いながら言った。

 そんな会話を続けていたところにノックが鳴った。

 「アベル様、いらっしゃいますか?」


 マリアさんの声だ。

 「マリアさん、居るよ。」俺はドアに向かって声をあげる。

 ちょうどよく大人が来たな。


 ドアから現れたマリアさんは、細く綺麗なブロンドで首までで切りそろえられたショートの髪。

 身長は165㎝くらいかな。身体つきは細い。よくこれで子供を産めたなってくらい細い。

 顔つきは眉目秀麗って言葉かそのまんま当てはまる綺麗な顔だ。

 目はきれいな碧眼。キラキラしていて美しい。

 耳は長いんだけど、ヨハンと比べると短いんだよね。ハーフエルフだから?


 この姿で180歳ってんだからな。ファンタジー世界はすごいよ。


 マリアさんは相変わらず乳母の仕事を継続している。俺の授乳期間が終われば乳母の仕事も終了するものだと思っていたけど、そういうものではないらしい。

 

 俺のお付きとして、躾や家庭教育を担当してくれている。ほぼ終身雇用のようだ。

 相変わらず身の回りの世話もローズと一緒にしてくれる。3年も一緒に仕事をしているから、二人は既に名コンビだよ。

 もう、俺としてはアンネローゼも含めて三人とも家族のようなものだ。


 「ちょうど良かった。大人の人にちょっと聞きたいことが有って。」

 「大人に聞きたいことですか?アベル様が?珍しいですね。」

 と、マリアさんもやっぱり小首を傾げる。


 「市井のことを聞きたいそうですよ。」

 ローズがマリアさんに言った。


 「あのさ、市井の住居の家賃を知りたいんだよね。」

 俺はマリアさんに質問をする。


 「住居ですか?戸建てとか集合住宅というものもありますが。」

 「そうだね、家族3人で暮らすとすると、二部屋か三部屋の住宅になるかな。そこら辺の住宅の家賃だね。大雑把でいいよ。」

 俺はちょっとだけ具体的に聞いてみた。

 「3人家族だとアベル様が言った部屋数になりますね。居間と寝室って感じでしょうか。そうすると、新築か年数の経ったものや便利な場所に在るものとか違ってきますけど、銀貨3枚から8枚くらいでしょうか。」

 「ふーん、結構幅もあるし、お金も掛かるんだね。教えてくれてありがとう。ローズもありがとね。勉強になったよ。」

 

 「やっぱり勉強じゃないですか。」

 ローズは可笑しそうに笑った。


 最低の貨幣で買えるものと、住人が住む家賃を考えてみた。

 4年前からちょっとはインフレが起こっているみたいだが、さっきと同じく水飴とパンの価格を、それぞれ銭貨1枚を10円、小銅貨1枚と銭貨2枚を120円と設定するとしよう。


 そうすると、住居の賃貸料は銀貨だから、日本円で3万円から8万円ってところか。

 まあまあ、日本と同じくらいの価格帯だな。


 大金貨は一千万円ね。

 こりゃ確かに大金だ。

 為替手数料が1分っていうのも、こうなると納得だよな。

 もし大金貨を持って山賊に襲われたら、それこそ大損だからな。


 というわけで、日本とノヴァリス王国の物の価値と貨幣の価値はどっちもほぼ変わらん。

 


 ご都合主義極まえりだ。


 草生える。



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― 新着の感想 ―
異世界のお金を日本円に例えてくれるの、有難いです。 凄くわかりやすい!
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