20.アベルくんとロッティーの魔法。
20.アベルくんとロッティーの魔法。
などと黄昏ていると、ちびっこメイド達を引き連れて、アリアンナ母さんとロッティーがやってきた。
「さあ、ローランド達が居なくたって、魔法の練習は出来るわ。ロッティー、やるわよ!」
おお、母さん気張っているな。
「はい!頑張るわ!」
ロッティーも張り切っている。
些か二人ともヤケクソ気味だ。
まあ、何かに打ち込めるのは良い事だよ。
うん。
俺にとっても魔力変換のヒントが見えるかもしれないしね。
「昨日も言ったわよね。魔素を取り込むイメージ。魔素から魔力へ変換し、さらに事象へ昇華するイメージ。これよ。まだ魔素溜りには、魔素は残っている?」
アリアンナ母さんはロッティーに聞く。
ロッティーは
「残っているわ。昨日寝る前に取り込む練習をしていたの。もうパンパンよ。」
と笑っている。
笑顔が出るのは良い事だね。
それよりパンパンなら、もう少し頑張るんだロッティー。
グツッってニキビのつぶれる音がするまで、頑張って魔素を圧縮しつつ入れてみたまえよ。
ああ、話せたらアドバイス出来んのに。というフラストレーションで手足をバタバタする俺。
「アベル様は、今日も元気ですね。」
と、俺を見ながらちびっこメイド2号のローズはクスクス笑うのだった。
「ロッティー、まだ難しいかしら?」
アリアンナ母さんはロッティーに聞く。
「うーん、駄目みたい。魔素を魔力にするって想像が出来ないの。」
そう言って右手を掲げ、人差し指を伸ばしているロッティー。
そうなんだよな。そのイメージが難しい。
昨日の深夜はガスのイメージで魔力を想像できたから、昨日は火をつけるのは成功したけどさ。
イメージが明確なほど成功はしやすいが、汎用性の高い魔力に変化させるとなると、どうすりゃいいのか。
「うーん。」
俺とロッティーは首をかしげる。
「そうね、魔素から魔力変換と昇華までを分けて言ったのが悪かったかしら。これは禁じ手なんだけど、イメージを反対にしてみましょう。」
とアリアンナ母さん。
うん?
どういうことだ?
アリアンナ母さんは何言ってんだ?
「ロッティー、小さなろうそくの火は想像できる?」
アリアンナ母さんが聞くと
「うん、できると思う。」
と、ロッティーが答える。
それを聞いたアリアンナ母さんは
「それじゃ、ろうそくの火を考えながら、この火を点けたいから、魔力が欲しいってイメージしてみて。」
と、言った。
そうか事象を先にイメージして、魔力を引き出すのか。
どれ、出来るかな?
ろうそくの火のイメージ。
これを点けるのに、魔力が必要だ。
こい!!
「ボッ!」
やべ、点いちゃった。
消せ、消せ。
ローズはロッティーの方を見ていてこっちは見てなかったな。
ふぅ、あぶな。
でも何これ、こんな簡単でいいの?
片やロッティーは集中しているものの、なかなかうまくいかないみたいだ。
「ロッティー、人差し指の先にろうそくの炎が欲しいの。ろうそくの炎がどんな炎なのかしっかりイメージして。」と、アリアンナ母さん。
「炎のイメージ、イメージ。」
と、ロッティー。
アリアンナ母さんは
「炎を点けるのには魔力が必要よ。」
ロッティーにヒントを与える。
「炎には魔力が欲しい、人差し指に魔力を頂戴!!」
「ボッ!」
「点いた!!」
と、そこ居た皆が目を見張る。
「やったーーーー!」っと万歳のように両手を広げるロッティー。
その様子を見てアリアンナ母さん、リサ、ローズは惜しみない拍手を送る。
「ロッティーは賢いから、先に事象のイメージが明確にできると思ったのよ。事象のイメージさえ出来ちゃえ ば、魔力を引っ張ってくるのは容易いと思ったの。」
こともなげに言うアリアンナ母さん。
「でも普通の子たちは、ちゃんと魔素を魔力に変えるって修行をやるのよ。私だって、イメージ掴むのに結構時間をかけたんだから。ロッティーは本当に特別ね。」
さらにアリアン母さんは言う。
「でも魔力の引き出しにちょっと手間取っていたから、やっぱり魔素からスムーズに魔力変換が出来るようにトレーニングをしましょう。」
「はい、わかったわ。母様。その前に一つお願いがあるんだけど。」
と、ロッティーがアリアンナ母さんに珍しくお願いしている。
「なに?ご褒美?何でもいいわよ。」
とロッティーに話すアリアンナ母さんがにこやかだ
。
「母様の魔法が見たいの!」
目を輝かせてロッティーが言った。
ロッティーのお願いに、ちびっこメイド達も興味津々だ。
「いいわよ、ただ私は戦闘特化型だから、あまり見世物のようなことは出来ないけどね。」
そう言いながらも、アリアンナ母さんは余裕の表情だ。
そして、アリアンナ母さんのマジックショー(本物マジック)が始まった。
まず、右手を広げると各指先に炎が灯る。
次は左手。
これも全部の指に灯る。
炎が灯った両手を胸の前に持ってきて、さっと手を両脇に広げると、指に点っていた炎が胸の前で灯ったまま浮いている。
そしてまた両手の手のひらには、大きな炎が灯っている。
全部魔力操作してるのかよ。
スゲー。
その両手の手のひらを頭の上でパン!と叩き鳴らすと、細かくて白いキラキラしたものが空中を舞う。
ありゃ雪だな。
炎と雪のイメージ切り替えかよ。
まったくもって凄い。
「えへへ、終わりね。」
ちょっと恥ずかしそうにアリアンナ母さんが言うと、ちびっこ三人が一斉に大きな拍手をする。
「母様すごい!」
ロッティーは大興奮だ。
「魔力操作とイメージの転換よ。魔素を魔力に変換し続けるの。そして事象を昇華したい場所に一つずつ置いて行くのよ。ロッティーも出来るようになるわ。」
そう言ってマリアンナ母さんはロッティー抱き上げ、その豊満な胸に抱きしめる。
そんで、またロッティーは胸の中に埋まってしまうわけだ。
しかし母さんの魔法を見て思うのは、事象をイメージしてからの魔法はやはり禁じ手と言うことだ。
なぜなら、母さんが炎から雪に変えるようなスムーズな事象の転換が行えない。
魔素を魔力に変えて事象をイメージしているからこその転換技術なんだろう。
俺とロッティーがやっている
事象をイメージ>魔素から魔力へ変換>事象が昇華
このような魔法の発動では母さんのようなスムーズな魔法転換は行えない。
魔素から魔力を変換>事象をイメージ>事象を昇華>魔力を変換を継続しつつ事象の転換>次の事象へ
これが正解なんだろう。
俺とロッティーのやり方では[魔力を変換しつつ事象の転換]これが難しい。
事象をイメージしてからじゃないと魔素を魔力に変換できないからね。
事象(火)がついてる>次の事象(雪)をイメージ>[魔力が途切れる]再度、魔素から魔力へ変換>事 象(雪)が現れる。
一つ余計なプロセスが入るわけだ。
こりゃおそらく先が長くなるな。。
でも欠点が分かったんだから、次は母さんの言うとおりのノーマルのやり方を極めるだけだ。
楽しくなってきたな、おい。
でも悲しいかな、この情報はロッティーと共有できないのよね。
だから俺一人で地道にやるさ。
ここまで読んでいただき、有難うございます。
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