19.アベルくんと魔素タンク。
19.アベルくんと魔素タンク。
残された二人の御婦人が、なんだかしんみりしている。
配偶者であり父親が、死地に向かうのだ。
残された者の心情としては、それが当たり前なのだろう。
実のところ、俺はあまりピンとこないんだけどね。
おそらくローランド父さんとエドワード爺ちゃんの二人とは、対話形式のコミュニケーションが多く取れていなくて、あまり情がわいてないってことなんだろうな。
いや、勿論ね、勿論二人が城から居なくなるって、寂しっちゃ寂しいのよ。
でも、そこまでしんみりするかといえば、うーん、言語化は難しいな。
直接肌の触れ合いが多かった、アリアンナ母さんとかマリアさんが死地に行くなんてことになったら、そりゃギャン泣きだろう。
ローランド父さんとアリアンナ母さんには、俺にとってこれくらいの差があるのさ。
彼岸の様にね。
さて、どうやらご婦人方は朝食を食べに行くらしい。
そうだね、悲しい気分の時はね美味しいもので腹を満たして、ちょっとでも幸せな気分になればいい。
心が軽くなるからね。
俺の朝食もそろそろ帰ってくるだろう。
そしたらまた一眠りだな。
すると、軽快な足音が廊下から聞こえてきた。
ほらな、噂をすればってやつだ。
子供部屋のドアが開くと、そこにはカゴを持ったマリアさんが入ってきた。
マリアさんから授乳してもらって一眠りした俺は、起きて早々に魔素の取り込みを始める。
寝る前の魔素は、大腿部の中ほどまで溜まっていた。
そして、起きてからもう二時間程度。
魔素はおおよそ身体中に溜まっていた。
魔素の霧散は今のところ見られないし、危険な感じもしない。
面白いもので、首から上には魔素はいかないみたい。
まるで蓋がされているようだ。
鎖骨の高さまでで魔素が止まっている。
それでも魔素溜まりだけから比べれば、圧倒的な総量になるだろう。
アリアンナ母さんに直接確認をとれないけれど、全身に魔素を溜める機能があることを知っているのは俺だけだろう。
なぜなら、ロッティーの魔法の訓練で魔素溜まりに溜まったのを確認してから、魔法の事象の昇華を教え始めたからだ。
全身魔素タンク状態を知っているなら、まずそれを教えるだろう。
彼女がそれをロッティーに教えないのは、知らないからに他ならない。
魔素溜まりに魔素を詰めに詰め、魔素の出口を開けないと、俺と同じ状態にならないんだ。
しかも、魔素は圧縮できる。
まだ比べることは出来ないし、新生児の俺の魔素溜まり自体が小さいので予想でしかないんだが、魔素溜まりしか使っていない人から比べたら、数十倍の魔素を取り込むことが出来るだろう。
まさに魔素タンクだ。
早く他の人と検証したいけど、今は喋れないしな。
魔素の研究と魔力変換の研究で三年くらい暇をつぶさなきゃ駄目か。
ははは
参ったなぁ。
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