【第二章】第五部分
「美散、しっかりしなさいよ!キズは浅いわ。出血もないし。」
亜里栖の介抱の仕方はビミョーに誤っているが、気持ちは理解。
「生徒会長。そこのいつきとか言う名前だったっか、の女の同意が取れなきゃダメなんでしょ。」
「だからあたいは自分を取られても、何も言うつもりはなかったじゃん。」
「でもアタシにはそんな風には見えなかったわよ。」
「それは何も聞かれなかったからじゃん。『君を奪い去りたいんだ!』とかコクられたらついて行くしかなかったかもしれないじゃん。」
「どんな取り立ての仕方なのよ。そんなこと言うわけないじゃない。」
「はあはあ。亜里栖。待ちなよ。どうせ、そいつは買収されているんだよ。まともな会話はできないよ。」
足元をふらつかせながら立ち上がってきた美散。
「美散。大丈夫なの?」
「これぐらい大したことない。でもからだへのショックは魔法で治癒できるけど、心はそうはいかないからな。」
「あらら。そのまま倒れていたらよかったですのに。負けという宿命を背負う者っていうのは、自分で墓標を作っているのですわ。ピン。」
生徒会長は右手の指をはじくと、たくさんの一万円の新札が現れて、亜里栖たちの方に飛んで行った。
「危ない!」
「きゃあ!」
美散は全力で亜里栖を突き飛ばして、亜里栖は生徒会室の外に飛び出した。
「亜里栖、そのまま逃げろ!」
「どうしてよ?」
「いいから、言う通りにしろ!」
「くっ!」
美散の命令に従って、亜里栖は一気に廊下を走り去った。
そのまま自宅まで逃げ帰った亜里栖は、すぐさま部屋に籠ってしまった。
美散のことが気になって仕方がなかったが、自分ではどうすることもできないこともわかっていて、眠れない夜を過ごした。
翌日の課外授業の回収業務はひとりとなったが、皮肉にも魔法は使えた。
大きなトラブルを起こすこともなく、淡々と回収活動に勤しんだ亜里栖。
美散は当然のように姿を見せなかった。
亜里栖の気持ちはどこまでも地を這うばかりであった。
さらに次の日の課外授業。いつもの球場にいる亜里栖。
「みなさん、ちょっと体調を崩して休んでいる生徒さんも増えてきましたが、今日も頑張りましょうですぅ。」
「う、うそ!せ、先生、出勤できたの。よかったわ。」
少々涙ぐむ亜里栖。頬の筋肉がわずかに緩む。
ミニスカロリスは魔道具である1万円札を取り出した。魔法でそれは回収成績表に変わった。亜里栖はやはり最下位に甘んじていた。
「また、お叱りを受けることになるのね。」
一瞬目を瞑りながらも、少し明るい気分になっていた亜里栖。
「先生はこのところ、ずっとゴホゴホですぅ。ですから、早退させてもらうですぅ。あとは自習ですぅ。ではみなさん、ゴホゴホですぅ。」
背中に力なく球場を去っていったミニスカロリス。
「先生はいったいどうしたのかしら。せっかく戻って来れたのに。やっぱり生徒会室でおかしかった状態が、まだ続いているんだわ。美散もまだ帰って来ないし。」
他の生徒も魔法を使う演習をやると、みんな帰った。
球場にひとりポツンと残された亜里栖。
「美散は生徒会室にいるんだろうけど、アタシひとりで乗り込む度胸なんてどこにもないわ。」
亜里栖は他に行くところも仲間もなく、球場にひとりで行った。球場の中には入れないため、入り口に突っ立ってボンヤリしていた。




