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第17話 救出作戦

 森を抜けると広大な岩場に出た。

 日本にこんな見渡す限りの岩がなんてあっただろうか?

 幸い足元が岩で、木の根っこなども無いので、森の中よりは走りやすそうだ。

 ただ大きな岩などがゴロゴロしているので、必ずしも視界は良くない。


「よし、ペースを上げて距離を縮めよう!」


「はい!」


 俺達は速度を上げて走り出す。

 こうして走っているとLvUPの恩恵をハッキリと感じる。

 以前ならこれだけ走れば、とっくの昔に息切れを起こしていただろうし、そもそもこんなに早くは走れなかっただろう。

 今の俺達はインターハイ選手くらいの足の速さが在るのでは無いだろうか?

 まぁそれは言い過ぎか。


 ◆


「何も居ないな……」


 黒いスライムを追いながら、俺達は違和感を感じていた。


「居ないって何がですか?」


 皐月ちゃんには俺の違和感が理解できないらしい。

 むしろ普通の人からすれば居ないのが普通な訳だから無意識に安心しているのかもしれない。


「モンスターだよ。今までならある程度進めば新しいスライムが出てきただろ? けどこの岩場に来てからと言うもの、スライムの姿が全く見当たらない」


「言われて見れば」


 この状況に対する答えは3つある。

 まず1つは、ここに居たモンスターがあの黒いスライムから逃げ出したから。

 そしてもう1、つはここがモンスターの現れない安全地帯である事。

 ゲームならそういった安全地帯があるもんだ。大抵はその先がボスのいるイベント発生エリアだったりするが。

 けどいくらこの世界がゲームになったからといって、和製RPGみたいな強制イベントが発生するとも思えない。

 いやまぁ、発生しない保障も無いんだが。

 そして三つ目、他の参加者がこの辺りのスライムを狩りつくした、だ。

 可能性としては1番目か3番目だろう。

 皐月ちゃんがいる以上、他の人間が居るのは確定。

 なら俺みたいに、拠点を作ってレベル上げをしようと考えた奴は必ず居る。


「あれ?」


 とその時、皐月ちゃんが足を止めた。


「どうした?」


「今、誰かの声が聞こえた様な」


「声?」


 俺達は喋るのをやめて耳を澄ます。


「------っ!」


「っ!? 聞こえた!」


「あっちからです」


 俺達は声の主を探しに向かう。

 新しい仲間が見付かるかもしれない、そういう思いも有りはしたが、何よりもその声は切羽詰っていた。

 恐らくは戦闘中だ。


「MPの残りは?」


「まだ半分以上あります!」


 俺達はスマホで自分達のステータスを確認しながら作戦を練る。


「現場に到着しても飛び出さないで隠れて状況確認。怪我人が居たら敵を威嚇して一人が回復アイテムを届ける」


「その時は私が届けます!」


「任せた!」


 単純ではあるが、お互いの役割りを決める。

 そして俺達はより強くなる戦いの音の現場へと飛び込んだ。


 ◆


「クソッ! 硬いんだよ!」


「もっとよく狙って! 確実に当てないと倒せないよ!!」


「分かってる! 薬は!? もうMPが尽きるぞ!」


「駄目っ! ポイントが足りない、手持ちも無い!」


 そこはくぼ地になっていた。

 彼等は岩場のくぼ地に身を隠して拠点にしていたらしく、イスやレジャーシートが敷かれていた。

 だがその中心にいる4人はレジャーどころじゃなかった。

 4人中2人が血を流して倒れていて、二人で必死にモンスターと応戦している。 2人と闘っているのは岩の様にゴツゴツしたスライムだ。

 ソイツ等がくぼ地の上から十数体もの数で囲んで襲い掛かっていた。


「助けないと!」


 飛び出そうとする皐月ちゃんを俺は慌てて押さえつける。

 その際にリッパな胸部ショックアブソーバーをわし掴みしてしまったが、不可抗力である。


「キャッ!! ムグッ!!」


 悲鳴を上げようとした皐月ちゃんの口を手で塞ぐ。

 決して悪意から口を封じる為では無い。 


「飛び出したら駄目だ! 彼等は囲まれている! 選択肢を誤ったら誰も助けられないぞ!」


「っ!」


 耳元で彼女に制止を呼びかけた事で、さっきまでしていた作戦会議の事を思い出したのだろう。皐月ちゃんが大人しくなる。

 俺は口を塞いでいた手を離し、彼女に作戦を伝える。


「俺が囮になる。君は敵が俺を追って彼等から注意が逸れたのを確認したら薬で彼等を治療、その後回復した彼等と一緒にモンスターの後ろから奇襲を仕掛けるんだ」


「わ、分かりました……」


 しかし皐月ちゃんの様子がおかしい。分かったという割には何か言いたげだ。


「どうしたんだ?」


「……そろそろ、手を離してください」


 皐月ちゃんの視線が下に移動する。

 そこには、がっしりと皐月ちゃんの胸部ショックアブソーバーをわし掴みにしている俺の手があった。


「……失礼」


 だがその感触は記憶した。


「巧さん、鼻血出てますよ」


「おやー、コレはびっくり、何時の間にダメージを受けていたんだろう?」


 俺はポーションを一気飲みした。


 ◆


「ファイアアロー!!」


 物陰から飛び出した俺は岩のようなスライム、とりあえずロックスライムと名付けよう。

 その内の一匹に炎の矢を放つ。

 だがあまりダメージを負っているようには見えない。

 多分同じ属性でなけりゃそれなりにダメージを与えてはいる筈なんだがなぁ。

 ただそれでも、囮としての役割りは果たせたらしく、ロックスライムは俺の方を向く。

 数体ほどくぼ地の中に攻撃を仕掛けているヤツ等が居たので、そっちのもファイアアロー放ってやると、全てのモンスターが俺のほうに向き直って向かってくる。

 ロックスライムのスピードはあまり速くない。

 俺は最初に攻撃した奴に向かってアイスアローを放つ。

 するとロックスライムの体に亀裂が走って真っ二つに割れた。

 手斧で攻撃した時の様に合体して再生する気配もない。

 コイツは氷が弱点か!

 俺は二度目に攻撃したロックスライムにもアイスアローを放って撃破する。

 そしてロックスライム達の背後を皐月ちゃんが走り抜けてくぼ地へと入っていく。

 まずは第一段階成功だ。

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