第18話 撃退
ちょっとアンケートです。
本作「この世界はゲームになりました~ワールド・エンド・ゲーム~」ですが、
無双チートモノにリメイクして新しく投稿し直した方が良いか、現在のままじっくりレベル上げをしていく成長モノの方が良いか、意見を頂けると幸いです。
とはいえ、リメイクするにしても途中でエタったりはせずにキリの良い所までは書き続ける予定ですので、突然のエタを心配される方はご安心下さい。
皐月ちゃんが窪みの中の参加者達の救助に向かったのを確認した俺は、更にロックスライムをおびき寄せるべく少しずつ、違和感を感じさせない様に後退する。
コイツ等に知性があるのかは分からないが。
幸いコイツ等は動きが遅い為、こっちがゆっくり後退しても何とか戦える。
「アイスアロー!」
3体目のロックスライムに氷の矢を放つ。
だが、先程までは効果を発揮していた氷の矢が何故か効果を発揮しない。
おかしい、さっきまでは一発で倒せていたと言うのに。
これはもしかして2発必要なのだろうか?
そう思ってもう一発氷の矢を放つ。
だが2発喰らってもロックスライムは倒せなかった。
そこで俺はまさかと思い別の魔法を放つ。
「ファイアアロー!」
炎の矢がロックスライムに命中する。
するとロックスライムはパカッと良い音を立てて割れた。
「成程、そういう事か」
俺は炎の矢と氷の矢を交互に放つ。
すると面白いようにロックスライムが割れていく。
どうやらコイツ等は急激な温度の変化に弱かったらしい。
確かに金属も急激な温度変化で脆くなるし、コイツは鉱物属性を持ったスライムなんだろう。
こういう所はゲームとは違うな。
ゲームだったら敵の苦手な属性は一種類で済む。
複数の攻撃を行う事で化学反応を利用する戦い方をプログラミングされたゲームなんてのはマンガやアニメの中くらいだ。
とはいえ、敵の数が多い。
まだ10体以上はいると言うのに、こっちは精神的な疲れを感じている。
こりゃギリギリまでMPがなくなるのを待ってたら、集中力不足でやられかねない。
適当なところでMPポーションを飲もう。
とにかく今は皐月ちゃんがアイツ等を回復させるまで耐えなければ。
◆
ロックスライムを倒し続けてはや8体目。6体目を倒した所で一度MPポーションで回復済みである。
そろそろ援軍がこないかなー。
丁度そう思った時だった。
窪地の中から先程の男が姿を現す。
「喰らいやがれ岩野郎!! ウインドハンマー!!」
男が学ランをはためかせながら不可視の風を叩きつける。
風はスライムを2匹まとめて吹き飛ばし、前方に居るスライムへと衝突させた。
「はっはー! 思い知ったか!!」
しかしスライムは対して痛くないといわんばかりにもぞもぞと姿勢を直し、学ランの男に向かっていく。
「くっそ!やっぱ硬ぇな!」
「ソイツは氷と炎の温度差に弱い! どっちか使える奴は居ないか!」
俺がロックスライムの対処法を教えると、男は首を横に振って答えた。
「俺は使えねぇ! 気を失ってる奴なら使えるがまだ起きねぇ!」
それじゃあしょうがない。学ランの男に敵の注意を引き付けてもらって、俺が後ろから効果的なダメージを叩き込ませてもらおう。
「それとな! ダチを助けてくれてありがとうよ! 助かったぜ!!」
意外に律儀な男だ。
「薬代は後で請求させて貰うぞ!」
「ああ! 倍にして返すぜ!!」
◆
そうして、2人で闘い続ける事5分。漸くすべてのロックスライムを倒す事に成功した。
攻撃としては俺の炎と氷の攻撃で2発KO何だが、俺しか有効打を与える事が出来なかったので俺の負担が大きかった。
まぁ、お陰でロックスライムの討伐数は全部俺が貰えた訳だが。
他に敵がいないか警戒しながらMPポーションをあおる。
疲れたからだにイチゴオレ味が美味い。
「ほれっ」
俺は学ランの男にもMPポーションを渡す。
「おう、助かるぜ」
男はMPポーションの蓋を開けると、腰に手をやって一気にあおった。
銭湯のフルーツ牛乳かよ。
「かーっ! バトルの後のポーションは美味いぜ!!!」
仕事から帰ってきた時の父さんみたいな事言ってやがる。
学ランの男は空になったフラスコを捨てると、俺の方を見る。
「助けてくれてありがとうな。改めて礼を言うぜ。俺は東条院隼人、見ての通り学生だ! 風を愛する俺はスキルも風系で統一してる! 疾風の隼人と呼んでくれ!!」
ビシッと謎のポーズを取る東条院隼人。
「須藤巧だ。よろしく東条院」
多分深入りしちゃいけない類のバカだコイツ。
「おいおいおい、共に命がけで闘った仲じゃねぇか。気軽に隼人って呼んでくれよ巧!」
いつの間にか呼び捨てだよ。
俺はため息を吐きながら窪地の方へ近づく。
そこにはまだ気絶した仲間を介抱する少女と皐月ちゃんの姿があった。
「そっちの容態は?」
皐月ちゃんに声をかけると、彼女は首を横に振って答える。
「傷は治ったんですが、まだ意識が戻らないんです」
成程、ポーションはあくまで傷を治すだけだから気絶した人間を起こす事は出来ないか。ただ頭を打っていたりしたら無理やり起こすのは危なそうだし、ここは自然に目を覚ますのを待とう。
その間に聞きたい事もあるしな。
「君が巧くんね。助けてくれてありがとう。貴方達は命の恩人だわ」
セーラー服の少女が俺に頭を下げる。
「気にしなくていいよ。薬代はちゃんと返してもらうから」
「勿論返すわ。私は篠山美香。美香でいいわよ」
「俺は須藤巧、巧で良いぜ」
「分かったわ。それでなんだけどね、さっきは薬代を返すって言ったけど、今は持ち合わせが無いの。レッドスライムを退治するまで待ってもらえるかしら?」
そういやさっきの戦いの時素材も無いって言ってたもんな。
「無けりゃ他の薬やアイテムでも構わないぜ」
「悪いわね」
いやいや、こちらとしても持っていないアイテムがあると便利だしな。
「まずはここを移動しよう。ここじゃまた敵に囲まれちまう」
◆
「そっか、アンタ等はこの辺に転移してきたんだ」
隼人達に荷物を纏めさせた俺達は、モンスターから身を隠せる場所を探して移動しつつ、コレまでの経緯を話しながら情報交換をしていた。
正直さっきの窪地は危険すぎる。
モンスターから身を隠すにしてももう少しマシな場所があっただろうに。
「ええ、お陰で固い敵ばかりで大変だったわ。巧君達はどの辺りに呼び出されたの?」
美香が俺達の転移地点について質問してくる。
「俺は森の中だな。近くに平原や川があってスライムやレッドスライムがメインで出てきた」
「マジかよ、運が良かったな」
隼人が心底羨ましそうに言う。転移先の運もあったみたいだな。
「私も森の中でしたけど、巧さんとは別の所に出ました。そこで……スライムに襲われていた時に巧さんに助けてもらったんです」
その時の事を思い出した皐月ちゃんがモジモジと身悶える。
「……あ、じゃあそれで服がそんななのね」
そう言って美香は俺の制服の上着とタオルを腰に巻いた姿を見る。
「……はぅ」
あっさりとバレてしまって顔を真っ赤にする皐月ちゃん。
「良かったらあたしの着替え使う? 薬のお礼にさ」
「良いんですか!!?」
「そんなもったいない!!」
……などとは言えませんでした。
皐月ちゃんは美香が取り出した服を渡されると、ものすごい速さで岩陰に走っていって着替えを始める。
「覗いちゃだめよ」
「す、する訳無いだろ!」
「そ、そうだぜ!」
美香に見張られて俺達は何も出来なかった。
嗚呼、岩陰から聞こえてくる絹ずれの音が悩ましい。




