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親友ポジションに憧れる俺は彼女達に狙われている  作者: 瑞柿けろ
第一章 ここから始まる親友ポジション

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第35話 不法侵入露音姫




「た、ただいまー……」

「あ、おかえり透遅かったね」


 家に入ると当たり前のように心がエプロン姿で出迎えてくれる。もうこうして平然と家に侵入している事には目を瞑ろう。

 ただ今一番怖いのはこのヤンデレ心が何時間も電話やメッセージを送って来なかったのか、その事が一番の不安要素になっている。


「え、お、おうただいま心。悪いな毎度毎度……明日は俺が作るよ」

「良いって、僕が好きでやってるんだからさ、もうすぐ夕飯出来るからリビングで待ってて」

「分かった……」


 心の言葉を聞き俺はゆっくり靴を脱いで家へと上がる。

 そして動作の一つ一つを自然に少しでも変な動きをしないように、それはもちろん既に連絡をして来ない時点でいつもの心と違うのは確定なのだ。警戒もするだろう。


「食器準備したりとかしようか?」

「大丈夫だよ待ってて」

「洗い物やろうか?」

「良いよ料理しながら洗ってたから」

「な、なんか一品作ろうか?」

「……さっきからなにかな透? なんかいつもと違うけど何か言いたいことあるの?」

「へ……い、いやぁー? 別に?」


 あ、ヤバい。慎重になり過ぎて変な事してたわ。


「なんか僕に言いたい事あるんじゃないの?」


 ファーー……ヤバい吐きそう……。

 どう言い訳をしようかと悩んでいると、


「……なーんてね、ささ透もう出来ちゃうから着替えたりして来て」

「え、ご、ごめんなすぐ着替えるわ」


 うん早くね、と俺に一声かけて心は調理を再開する。俺は大人しくリビングの扉を開けた。


「おーようやっと帰って来たか。儂の方がかなり早く着いたぞ! なかなか遅かったではないか透!」


 俺はソッと扉を閉めた。

 ……ちょっと待って? なんか変なのいたぞおい?


「透? どうしたの?」

「あ、いや……なぁ心? お前が俺の部屋に勝手にいるのはもうこの際良いとして、見ず知らずの変な子供を人の部屋に入れるのはどうなのだろうか?」

「変な子供? ……何言ってるの透頭でも打ったの?」

「へ?」


 あまりにも反応の悪い心の態度を見て、俺の方がおかしかったのでは? と思いもう一度扉に手をかけてみる。

 そうだきっと俺の気のせいだ。いきなり自分の事を神とか言ってる変な子供が家にいるとか現実的じゃないだろう。


「コラァー! 何故無視するのじゃ透ー!! 寂しいじゃろが!! 傷つくじゃろが!! いくら儂が神じゃからってやって良い事と悪い事があるじゃろがぁぁぁ!!!」


 あーそーだ。俺の周りって既に現実的じゃなかったじゃん……。


「ちょっとお前マジで来い」

「ぎゃぁぁぁ! な、なにをするのじゃ!? 離せぇ! 離さぬかぁぁぁ!!」


 首根っこを掴んでリビングに引っ張ると子供はジタバタと暴れ出す。

 えーい動くな大人しくジッとしてろ。


「おい心」

「ん? どうしたの透?」

「着替えたりするからリビングの扉閉めとくな。ちょっと待っててくれ」

「僕はその着替え見たいんだけど。どうせなら写真撮りたい」

「まさかの撮影会しろってか!? 勘弁してくれ! と、とにかく待っててくれ! 良いな!?」


 心に言い放ち扉をすぐさま閉めて振り返る。そしてその正座を崩しめんどくさそうにしている子供に声をかけた。


「で、お前がなんでここにいんだよ」

「まぁ待つのじゃ透、その前に儂は”お前”ではないぞ。少し前に言ったじゃろ儂の名前は”露音姫(つゆねひめ)”じゃ。気楽に____」

「神様と呼べって言うんだろ?」

「おーさすが透じゃ! 儂が言いたいことが理解できるとは以心伝心というやつじゃな!」


 いやただ単にお前の考えが読み易いだけなんだが……これは言わないでおこう。そんなことよりも、


「分かっておるわ。儂が何故ここにいるかじゃろ? 驚いたじゃろか『また次の機会に言葉を交わすとするかの』って言うたのがこんな早く次の機会になるとはの。ふふふ、サプライズと言うやつじゃよ」

「つ、露音姫……言いづらいな。”姫”お前はどっから入って来たんだよ」

「んー? 可笑しなことを言うのじゃな透は、家に入るのだから玄関からに決まっておるじゃろ」


 何を当たり前のことを、と不思議そうな表情を見せる露音姫は顎に手を当て少し考え出した。


「姫、姫、姫……うーむ姫か悪くない。まあ? 神様より遥かに位は落ちるじゃろうが姫と呼ばれるのも案外良いものじゃの! 案外の! 案外!」

「お、おうそうか」

「よし! これから姫と呼ぶのを許可するのじゃ!」

「お、おー……それは助かる?」


 よく分からない許可に適当に返事を返す……ってちょっと待て? どうせ心の事だから俺の家にずっといた可能性は非常に高い。そうだとすれば姫が家に来た時には多分心がいた筈だ。


「そうじゃな。儂が来た時にはあの小僧おったぞ」


 じゃあやっぱり姫のこと心知ってるだろ。なんでアイツ誤魔化したんだ……。

 そんなことを呟き思考を深めていると、更に露音姫が言葉を付け足した。


「あ、いや小僧は本当の事しか言っておらぬよ。儂はほら____見えぬからの」

「見えぬ? それってどう言う意味だ?」

「言葉の通りじゃ」


 そう言うと露音姫は心に聞こえないように閉めていた扉を勢い良く開け放つ。心はいきなり開かれた事に驚いているのだが、


「ど、どうしたの透? お腹空き過ぎちゃった?」

「え……? あ、いや間違えて開けちゃってな? 気にしないでくれ……」

「? うん分かったよ」


 俺の言葉を聞き調理を再開する心なのだが、そんな事よりも俺の目線はある一点に向いていた。それはもちろん露音姫なのだが……、


「……ま、マジか……」


 露音姫の行動に目を疑った。


「どうじゃこれで分かったじゃろ? 正確には見えぬし認識もできぬのだがな」


 彼女は調理中の心にゆっくり手を近付け人差し指で頬を突くが、心はそれに気付く素振りすら見せない。そして俺に向かって不敵な笑みを向けて言った。


「儂は透、お主にしか見えぬのじゃよ」

「マジでか……変人かと思ったらマジもんな神様だったとは……」

「変人!? ……ま、まぁ良いじゃろう。そんなことよりも何故神の儂がお主の所に来たか分かるか?」

「え、いや分からない……ですけど」

「あーよいよい。敬語なんぞ気にするでないわ」


 今更じゃ今更、と言うと露音姫は先程の言葉を続けた。


「儂は透のこの先の未来を見ることにしたのじゃ」

「未来を? なんで……」

「決まっておるじゃろ?」






「暇潰しじゃ」


 本当にどうしようもないな神様!!



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