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「また私のプロデューサーになってくれる?」   作者: 城間ハク


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8/9

8話「格好いい」

 いよいよ的前デビューの日がやってきた。的に届かず、矢が矢道という的と射場の間の地面に落ちたり、逆にその矢道の途中にある防矢ネットに刺さったりもした。

 それでもなんとか、安土という的の後ろの土に届くようになる。もうじき的にもあたるだろう。


 女子で一番おとなしい子が、的にあたり褒められていた。その子は、先日の夏休みの課題の話題で、終始無言だった。

 iより先に出会っていれば、気になる女子になっていたかもしれない。


 その課題もラストスパート。あとはなんかよく分からない理科の課題の目処が立てば、八月三十一日までに終わりそうだ。


 夏休み最後の部活。この日までに、oは二十八メートル先の的を射抜くことが出来ていた。

 一ヶ月後に迎える初めての昇段審査に向け、学科試験の座学も始まっている。

 射法八節という弓道の所作は、日頃から意識はしているが、学科ではそのうちどれかを筆記で答えなければならない。弓道を始めた動機を書く作文もある。


 ふとiの姿を確認する。どこか浮かない顔をしていた。

 時々部活を休んでいるiも、初めて的にあたった、つまり的中したときには女子部員で喜びを分かち合い、満面の笑みを浮かべていた。こうやって初審査の勉強もしている。


 それなのに、iがいつの間にか居なくならないか不安になるo。


 二学期以降は学校行事も土日に行われる場合がある。そもそも小学校でもそうだったし、中学最初の体育大会ではcとeが応援団をやることになり、oも弓道部の一員として部活動行進に参加する。


 実はoが課題を話題にした翌日、cとeが男子に学ランを貸してほしいと頼んできたのだ。同じ小学校出身のよしみで、oとbが貸す流れに成り掛ける。

 しかしoはiからのじっとりした視線に気付き、躊躇っている間に他の男子が貸すことになった。

 それ自体は貸したとて小恥ずかしいので気にしてはいないのだが、そのあとiと二人きりになったタイミングで、「いつか学ラン貸してね」と言われたことの方がどきどきした。その日は課題が手に付かなかった。


 そんな夏休みの課題もついに終え、明日からの二学期に備え就寝する。


 始業式も過ぎ、体育大会の練習がせわしなく始まり、あっという間に体育大会本番。iも元気に参加していた。

 cとeの応援団姿はよく見ていないが、来年は応援団をやってみようかなとか、応援するのは野球とか別のものになりそうだとか、未来のことなどいざ知らず、今は弓道部として部活動行進に参加している。


 審査や大会の日程も控えているため、すでに袴を着る練習はしていて、iの袴姿を見るのは初めてではない。しかし、iの袴姿は「可愛い」を通り越して「格好いい」と感心する。


 言っておいても損はないので「格好いいじゃん」と、行進後に同級生女子全体に伝えるo。

 eが「お前らには格好いいとか言わんからな」と言い、iが「格好いいよ」とo目掛けて言い放つ。

「ほら喜べ男子ども」「こらこら」通常運転にみえて、言葉が荒いeと、言葉数が少ないc。


「学ランはクリーニングして返すから覚悟しておくように」なんの覚悟だろうか。eらのあとひと演舞残っている応援団の感想は、bらに任せよう。無事体育大会を終えた。


 翌週。文化祭に向けて学年全体のペットボトルキャップアートの制作が始まりつつ、部活では初審査と試合デビューになる新人大会に向けた練習の日々。

 それらを無事終えれば、中間テストののち文化祭本番だ。


 全校集会や、学年全体で何かに取り組むとき、そして何気なく校内でぱったりiの姿を見かけたときの、心のざわめきが好きだ。

 部活で集団にまじりながら、ときに雑談の輪に入り、稀に二人きりになるときのiとの空間の共有が好きだ。


 iは結局、審査も新人大会も、エントリーすらしなかった。iのことはoなりに理解していたつもりだったが、少し寂しかった。


 審査では坐射という座る動作が含まれる作法で、入場から退場までの立ち居振る舞いが全てチェックされる。一方、試合はほとんど立射という座る動作がない作法で行われる。

 oは的中することが出来なかったが、審査と試合という独特の緊張感のあるものへのデビューが終わり、一つの山場を乗り越えた。


 出来ればiともこの空間を共有したかった。


 秋のC中学校。まだ中間テストの部活停止期間前で、文化祭の準備も、学年制作だが各クラスの授業時間内での地味な作業が続く。

 それでも三年生がクラスごとの舞台発表劇に向けて、何かしら動いている雰囲気を感じる。

 bの兄ら、部活を引退した三年生の先輩たちへは、今でもすれ違いざまに挨拶をする。


 先輩たちはあと半年、oたちはあと二年半、この箱庭で過ごすのだ。


 中間テスト前の部活停止期間。突如、「学校にアイドルがいる」という噂が全校を駆け巡る。

 bの兄づてにbからも聞き、aと久しぶりに会話する機会があったかと思えば、その話題である。


 噂に心当たりがあり過ぎるoは、帰宅後すぐに家のパソコンを開き、複数の検索エンジンを使い分ける。検索結果に差はほとんど無かったが、今年デビューしたというアイドルグループの公式情報に辿り着く。


 有名動画共有サイトのライブ映像には、《片道数時間アイドル》というキャッチフレーズで活動するiの姿があった。


 oはアイドルiに心を奪われた。

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