「ガキ共のSOSも拾えねぇで教師語ってんじゃねぇぞ!」
ザキルが次に到着したのはとある中学校だった。
車を降りたザキルは一直線にある教室へと向かう。
授業真っ最中でありながらザキルは教室のドアを叩き開け、先程と同じ様にして開口一番怒声を放つ。
「選定所のモンだぁ!!!」
生徒は勿論の事、授業を行う教師もその登場に心臓を飛び上がらせた。
そしてザキルは教室内を見渡し、目的と思われる生徒を見つけると睨みを利かせながら近付いて行く。
ザキルから目を付けられた生徒はだらしない服装で髪は茶色に染まり眉毛も剃られているガラの悪い生徒達だった。
やがてザキルの標的となったことを悟り怯えを見せる不良学生達。
「コラ餓鬼共。てめぇ等つまらねぇいじめかましてるみてぇじゃねぇか?あぁ?」
「え…!?」
どこか核心を突かれた様な表情を見せる数人の生徒達だったが、震える声で否定を返す。
「え…いや、し、してないッスけど?」
「ほぉ~…」
するとザキルは同じ教室内に居る気の弱そうな生徒に視線を移し歩み寄ると、突然その生徒の机を片手で持ち上げその中身を床にぶちまけた。
「!?」
突然の事に驚愕する生徒達。教師の男もその様子に口出し出来ずにいた。
そしてザキルは撒き散らされた物の中から数冊の教科書を拾い上げ再び不良学生達の元へと歩んだ。
「このズタボロに引き裂かれた教科書はなんだ?ご丁寧にひでぇ悪口まで書かれてやがる。まさかこれを持ち主本人がやったなんて言わねぇよなぁ?」
「え?いや、し、知らないっすよ。俺達じゃないから!」
不良学生の言葉を聞いたザキルは突然その生徒の机を蹴り飛ばした後、生徒の髪の毛を掴み上げ至近距離にまで顔を近付けた。
「ガキィ。大人を舐めんなよ?シラ切り通せるとでも思ってんのか?あぁ?ネタは上がってんだよ。選定所の情報力舐めんなコラ」
「ひぃっ…」
目に薄っすらと涙を浮かべる不良生徒。
「いいか?俺達はいつでもどこでもテメェ等を見てる。家族ごと地獄に落ちたくなかったら金輪際ふざけたマネすんな。喧嘩ならタイマンでやりやがれコラ。分かったか!!!」
「は…はい…」
やがてザキルは不良生徒の髪の毛を離しゆっくりと教室前方へと歩む。
去り際、教師の男を睨み捨て台詞を吐いた。
「テメェ等センコー共も同罪なんだよ。教え子が道外してるってのに勉強もクソも無ぇんだ。あのガキ共のSOSも拾えねぇで教師語ってんじゃねぇぞ!」
「うぅ…」
「気合入れろコラ!もしこの学校で自殺者でも出てみやがれ。ヤキじゃ済まさねぇ。この学校のセンコー共全員0点にまで叩き落してやるからなぁ!!!」
そしてザキルは教室のドアを轟音と共に叩き閉める。
やはり同行していたカレンは何も言えず目を見開き一部始終を傍観していたのだった。
次にザキルとカレンが到着したのは街の小さな教会だった。
教会内に入るとザキルは大声で神父を呼び出す。
「神父は居るかぁ?」
すると教会の奥から老神父が姿を現した。
「はい?何か御用でしょうか?礼拝は明後日ですが?」
「選定所のモンだ」
「!!」
ザキルの言葉を聞いた老神父は明らかに表情を引きつらせた。
ザキルが追求を始める。
「お前んとこの教会にはだいぶ前に活動報告を提示する様に勧告を出してたが、まだ書類が届いて無ぇのは気のせいか?」
「そ、そ、それは…」
「どうなんだ?まさか誤魔化せるとでも思ってたのか?点数下げっぞコラ、あぁ?」
老神父はしどろもどろといった様子で弁明を始めた。
「か、神の道とはそう簡単ではないのです。皆様に救済を与える事が第一。形になるまでにはまだ時間が掛かります!」
「正直に現状を報告するってのがそんなに難しいのかぁ?」
「で、ですが。宗教法人として相応の利益を出せない場合、貴方方は点数を下げると言うではありませんか。そうすればこの教会自体の存在が危うくなります」
「当然だろ。この国に無駄な余力なんて無ぇんだよ。ちまちました活動しか出来ねぇなら別の有力者に点数とこの土地を明け渡すまでだ」
「そ、そんなぁ!に、人数の問題ではありません。1人でも困っている人がいるのであれば、それは救いが必要なのです!そ、そもそも神道において現金な活動報告など…」
「そう思うなら神頼みでもしてみろよ。得意だろ?手を合わせてアーメンってか?」
「な、何ですと?神を冒涜するのですか?」
「ジィさん勘違いしてんじゃねぇぞ。今の世の中は点数至上主義。地獄の沙汰も”点数次第”ってな。例え犯罪者でも有益性がありゃ減刑される様な世の中なんだ」
「うぅ…」
「本当に世の中にとって必要とされる奴だけが生き残る。1000人救ってる協会と10人しか救ってねぇ教会、やってる事が同じだとしたらどっちが必要なのかは分かるだろうが?あぁ?」
「うぅぅっ…」
「分かったらさっさと報告書を用意しな。もしまた俺がココに来ることになりゃ、そん時はもう終わりだってことだ。俺の仕事増やすんじゃねぇぞ、分かったか?」
そう言い残したザキルはカレンと共に教会を出て行った。
車に乗り次の目的地に向かう車中、カレンがどこか怪訝な表情をしている事に気付くザキル。
「何だ?どうした?」
「あ、いえ。その、やっぱり道徳とかモラルだけじゃやっていけないんだなーって」
「あぁ?」
「だって、教会は慈善活動をしてるんでしょ?モラルや道徳は100点じゃないですか。それなのに一定の利益を上げないと点数が下がるっていうのは、ちょっと世知辛いというか…」
ザキルは横目でカレンの悲しそうな表情を見ると徐に口を開いた。
「その辺はバランスだろ。前にも言ったが査定は上の連中がやることだ。俺達は従っときゃいいんだよ」
「そ、そうかもですけど…」
「だがなぁ、さっきのアレはそういう話じゃねぇ」
「え?」
するとザキルはことの真相を話し始めた。
「あのジジィは教会を隠れ蓑にして金を横領してやがんだ。それを報告書提出させて矛盾突き止めて締め上げるって予定なんだよ」
「えぇぇ!?そ、そうなんですか?」
「筋の情報だ。間違いねぇ」
「す、筋って…?」
「色々だ。サツは色々縛りがあって動き辛ぇんだ。だから俺達が制度を応用してサツ紛いな事することもあんだよ」
「そ、そうだったんですか!…でもなんかショックですね。教会の神父様がそんな事するなんて…」
ザキルはカレンの純粋さを垣間見、警告を発する。
「ずいぶん箱入りだな小娘。人間なんて所詮誰でも腐れるもんなのさ。金と権力さえ与えちまえばな」
「そ、そういうもんなんですか?」
「見た目や肩書きに騙されんじゃねぇ。大昔高僧の神父が家の無いガキ共を保護する建前で夜な夜な犯してたって事件だってある。逆らえねぇのをいいことにな」
「えぇぇ!ひ、ひどい…」
「世の中は腐ってやがんだ。キレイ事じゃあ良くなんてならねぇんだよ。だからこうしてまともな神経持った組織の点数制度が必要ってこった。振り下ろされるエモノが正しい思想の元なら賊の首を切り落とすことだって必要だろうが。よく覚えとけ!」
「は、はい!頑張ります!」
「よし。んじゃ次はお前にひと仕事してもらう」
「えぇ!?」




