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転生おばあちゃんの幼馴染みは勇者ちゃん  作者: こう


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2 新しい自分


 我が人生に一片の悔いなし!

 ……なんて気持ちで目を閉じたのに、次の瞬間ぱかりと目が覚めて新しい人生が始まった。

 これはどういうことかしら。


 日本人として生を受け、平凡ながら充実した人生を終えたはずの私。だいぶ年を取った所為か、生前の記憶は靄がかかっているようにおぼろげになっている。


 でも仕方がないと思うの。だって私ボケてたもの。自分の名前も思い出せないわ。


 前世があった事はわかるけれど、その全てを思い出せない。日本という国のことはなんとなく、なんとなく覚えているけど……ぼんやりとした人生しか覚えていないわ。

 かつての人生では、我が子たちが独り立ちして夫が先立って、切ない思いを抱えながらもひ孫の顔を見るまで生きた。

 我が子どころか孫やひ孫に見守られながら天に召されたはず。はずなのに。


 あっという間に始まった第三の人生。

 正確には二度目の人生なのだけれどセカンドライフは夫が亡くなったあとの趣味人生だから、気分的には第三の人生になってしまうわ。


 私ってばそんなつもりなかったのに二塁から三塁に走っちゃったのかしら。何をチャンスと思って走ったの? つまりこれはサードライフ?  第二の人生の更に次はなんていえばいいの?  そもそも産まれ直したなら振出しに戻って攻守交代かしら。あらやだ試合が成り立たないわ。

 ……なんて、考えても仕方がないわね。


 そんなぽやぽやした私が産まれたのは、日本どころか地球でもなさそうな、不思議な場所。


 どこかしらねぇ、ここ。


 この世界に、たとえば地球とか、そんな名前はない。

 帝国と呼ばれる国があり、帝都と呼ばれる首都がある。帝都をぐるっと囲むように領地が存在し、町がある。そして複数の部族がその間にぽつぽつ。

 私が産まれたのは、町の一つ。帝都から遠く離れた田舎町のトリス。


 島国なのかしら?  他国はないの? 私が知らないだけ?

 私が育った田舎町のトリスは山に囲まれていて、私はこの世界で海を見たことがない。この町を出たことがない。私が、大人たちが知っているのは「帝国」一つだけ。よその部族の話は聞いても、よその国の話は聞いたことがないわ。


 だから海の向こう側に、別の国があるのかもよくわからない。

 少なくとも、他国と貿易はしていないみたい。やり取りがあるのは、同じ大陸の違う部族だけ。


 鎖国していた日本みたいなものかしら?  それとも地球より小さな惑星で、本当にこの帝都にしか人はいないのかも。

 そもそもここは地球ではないようだし、もしかしたら宇宙の理念からして違うかもしれない。

 島国ではなく、一つの惑星として「帝国」なのかもしれないし……流石に、それはないかしら?


 ――何故ここが、地球ではないと断言できるのか?

 それは、物心ついた頃から知ったこの世界の常識が、地球ではありえないことだらけだったから。


 なんて言ったらいいかしら。

 一言でいえば……「剣と魔法の世界」ね。


 この世界には、魔法が存在する。

 さらになんだかよくわからない、動物とは違う魔物と呼ばれる存在がいて、警察じゃなくて騎士が剣を携え人々の安全を守っている。


 魔力を持つ人はそれぞれ属性があるらしく、属性持ちと呼ばれていた。

 火、水、風、土の四元素を基本として、そこに希少な光と闇。全部で六属性が存在する。

 それらを持たない人を無属性と呼ぶわ。大多数は無属性で、何の力も持たないごく普通の人間。属性持ちは魔力の所為か、無属性の人たちよりとても丈夫で力強いの。属性持ちってだけで、とってももて囃されるわ。


 魔物なんて猛獣のいる世界だもの。そういうこともあるわよね。


 ちなみに、私は残念ながら無属性。魔法が使えるかしらと期待したこともあったけど、うんともすんとも言わなかったわ。残念ね。

 でも私どんくさいから、なくてよかったかも。魔法を使いこなせる気がしないもの。


 そんなファンタジーな世界に産まれてから、十八年が過ぎた。


「アニシアちゃーん、注文よろしく~」

「はぁーい!」


 呼ばれて、元気よく返事をする。

 年を取って真っ白だった髪は亜麻色に。日本人らしく黒かった瞳は黒目がちな焦げ茶色にななった。

 どことなく仔犬のような顔立ち。

 かつての私の面影は、どこにもない。


 戸惑いは、乳幼児の頃に吹っ切った。

 日本人女性としての私は家族に看取られた。

 今の私は、この世界で、新しく生きる小さな命。

 ただのアニシア。


 私はアニシア。十八歳。

 田舎町トリス唯一の食事処の一人娘よ。



セカンドライフの次ってなんて言うんだろう……?

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