穏やかな朝に微かな影
朝日が窓から差し込み、屋敷の中は静かに光が反射して輝く。
庭の霜は溶け、柔らかな光が広がる。鳥の声が聞こえ、遠くで水の音も聞こえる。
まるで何も起きない普通の朝だ。
(何か不思議な感じだな。)
私は体を軽く伸ばし、いつもの軽い運動を始める。
古傷はわずかに疼くが、日常の中ではさほど気にならない。
「今日も、少しずつだ、しっかりと」
小さく呟き、拳を握る。呼吸を整え、力を抜きすぎず、入れすぎず。
隣ではミアが楽しそうに動き回る。
「お姉様、今日は何をするんですか?」
言葉にしなくても、二人の間には自然な呼吸と動きの連携がある。
いつもと同じく、鴻は離れた場所から静かに見守る。干渉はせず、しかし注意を逸らさない。
「……順調だ」
心の中でつぶやき、微かに肩を緩める。
婚約者もそばで様子を見守る。静かだが視線には警戒の色がある。
「平和な時間だな」
微かに拳を握るが、表情は穏やか。日常のありがたさを噛みしめている。
庭から屋敷に戻る途中、玲はふと空気の違和感を感じる。
小さく動いた風の流れ、鳥の鳴き方の微妙な違い。
「……気のせいか」
振り返るが、何もいない。
ただ、静かすぎる日常の中で、わずかな違和感だけが残る。
朝食の席では、普段通りの会話と笑いが流れる。
ミアは嬉しそうに姉に話しかけ、鴻は微笑みを浮かべる。
婚約者も少し照れながら会話に加わる。
ちなみに玲の婚約者が一緒に運動をしたりご飯を食べたり、しだしたのは、1年前の後半から(色々あって。)。
そして話に戻る。↓
誰もが平穏で、何も問題がないように見える。
だが玲の視線は、屋敷の隅や庭の影を無意識に追う。
――まだ完全に安心できるわけではない。
午後。
軽い稽古を終え、休憩のために庭に座る玲とミア。
「……お姉様、今日は本当に静かですね」
「そうね。でも、油断はしない方がいいわ」
言いながらも、言葉には慎重さが混じる。
ふと、屋敷の高窓の影が一瞬だけ揺れたように見えた。
「……?」
気にしない振りをする玲。だが視線の奥で警戒が働く。
その影は風か、それとも……。
(まぁ、いっか)
夕方、庭で静かに会話を楽しむ姉妹。
「明日はまた運動ね」
「はい!ビシバシもっとやっちゃってください!」「て、言うかしてほしい。」(超小声)
「…?何か言った?」
「!?…いえ何も……ない、です」
「明日なのです!」
「じゃあね。さいなら〜」
「…何か言葉変わってるよ?」
(って、すごい勢いで行っちゃった。)(…どうしたんだろ?)
平穏な日常の中で、安心と絆を実感する瞬間だった。
しかし、静けさの奥で、何かが動き始める。
まだ微かで、影のように。
玲の古傷と同じように、未来に忍び寄る予兆だけが、静かに息を潜めていた。




