わたしをモデルに、課金すれば、お色気ドラマ作れても、作らないで!
はぁ、とネエネエ先輩は、肺の空気を全て吐き出すように背を丸めています。わたしも、マネして肺活量の検査をイメージしながら、うなずきます。
「また、ご希望の方には漫画や小説として本にして、商品が分からないよう梱包をして弊社取引先より、七日以内に発送します。なお、成人向けの内容がご希望の場合、18歳未満の方のご購入、ご閲覧は一切お断りします」
どうして18歳未満禁止ですか。ここ21歳以上サーバーです。ネエネエ先輩が、抗議するように立ち上がります。
「私を誰か知りませんが、NPCが私を演じて、いやらしい作品を作らないでください。絶対拒否です」
わたしも一足遅れて、立ち上がりました。
「拒否します。年齢制限がある作品で、わたし役を演じないでください」
モニカさんは、小首を傾げています。サーバーのAIが操作する彼女からすれば、現実な世界は、天上界の言葉なのです。わたしはモニカさんに駆け寄ります。小さな子どもをなだめるように、わたしは笑みを作りながら、目線を合わせます。
「わたしも先輩もエロ、じゃなくてお色気がかった作品が嫌いです。だから、わたしや先輩を、誰も演じたりしないでね。もし演じたら、弁護士さんに相談します」
「18歳以上しか買えない作品は、ジャンルによりますが、全年齢向け作品の3倍から5倍の課金を……、ベンゴシ? 少々お待ちくださいませ」
スカートの裾を踏まないようモニカさんが、後退りして等身大のお人形さんみたいに立っています。バトンタッチしたのは、セバスチャンでした。
わたしとネエネエ先輩の前に立ちます。例の卒業証書みたな紙が、また出てきて、開いて読んでいます。何枚出現して、何枚消えたか分かりません。
「GM神のお一方の声をお伝えします。21歳以上サーバー運営は、日本法、アメリカ法を遵守して、健全なコミュニティ作りをしております。お二人のご要望を重く受け止め、お二人に限っては、年齢制限のある作品は、これまでどおり、一切製作しません。また、全年齢対象作品も、ご本人様の承諾がない限り、製作しません」
NPCである彼にとって、GMさんの言葉をそのまま伝えるしかないのでしょう。21歳以上サーバーの、どこが健全なコミュニティだよ。
少し話がかみ合ってないような気もしますが、結論を聞いて安心です。上背のあるセバスチャンに一礼してから、両手で卒業証書みたいな紙を受け取りました。
ネエネエ先輩がわたしの頬に顔を寄せながら、紙を見ています。セバスチャンが声で出したことと、同一の内容が文字になっているだけです。
「ねえねえ、セバスチャン、前にわたしの作品を作ったりしたの?」
「再現ドラマをのぞいて、御座いません」
わたしは紙を丸めて、ゴミ箱を探して視線を動かします。
「ねえねえ、言わなくても分かってるだろうから、証拠になるから大事に保存しよう」
「はい、あのさ、セバスチャン、再現ドラマのオープンニング、本編と全然関係なかったのはどうして?」
「GM神に寄れば、それも含めてお楽しみください、なお、オープニング映像を利用した再現ドラマも、課金してくだされば、制作が可能とのことです」
セバスチャンは、イヤホン耳に当てながら、GMさんの復唱です。人間と違ってミスしないのがAIです。
わたしは、皮肉っぽい笑みをしてしまいました。
「再現ドラマのメイキング映像集や、再現ドラマのNG集作れますか?」
「少しお時間をいたければ、通常より料金と時間がかかりますが、作れるそうです」
完全にヤラセじゃねーかよ。NPCはNGしねーだろ。でも、ヤラセのメイキング映像集や、NG集も、かなり見てみたい気もします。ネエネエ先輩が、うーんと声にならない音を出しているので、わたしも真顔になります。
「お試しでNG集を作ったとのことです。試作NG映像で、無料ですので、是非、プレイヤーの皆様にご高覧下さい、とのことです」
ブーンと音がして、天井のシャンデリアが奇妙な形に割れ、モニターが降りてきました。シャンデリアは見ないようにしています。ざっくり割れて、気持ち悪いです。
モニターでは、わたし役のモニカさんが映ります。Tシャツにデニムの短パン姿です。波打ち際で、止まった四輪駆動車後部座席で、双眼鏡を覗いて立っています。マシンガンは背中に背負っています。
突如、はっとして表情になり、四輪駆動車を駆け下ります。四輪駆動車の下に仰向けです。するーっと、背中に車輪があるような、滑らかな動きで隠れます。
西部劇のギャングみたいに、マフラーで鼻から下を隠した、悪そうな連中が走ってきました。
目を見れば、門番NPCのドMさんと分かります。散弾銃を手にして、後ろからついてくる部下風なのと一緒に、四輪駆動車の上で、きょろきょろ周りを見渡します。
悔しそうに鋭い目をして手を振ります。部下風なのと一緒に、カメラの外に走って行きました。
悪そうなのが居なくなってから、わたし役のモニカさんが、四輪駆動車の下から体を出します。背中に隠していたスケートボードが映り、やらかしちゃった顔をしています。
カメラが引きます。モニカさんが立ち上がりました。砂浜で門番NPC二人が、棒立ちになって、散弾銃を下に向けています。すでに顔半分を隠した布は取ってます。モニカさんは門番NPCを拝むようにして、頭を下げています。
門番NPCは二人とも、大笑いしながら、気にしないで、と手を振ってます。しかし、ドM設定の門番NPCの瞳は笑ってません。
ドMが逆ギレすると怖そうです。わたしは、冷たい汗が背中を流れるみたいです。
モニターが上がり、ざくろのように割れていた、シャンデリアがもとに戻りました。
「いらないです」
わたしがセバスチャンに伝えます。ニーミギルド長も、買わない、手で制していました。
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わたしとネエネエ先輩は、ガラケー型コンソールを取り出して、画像として保存します。それをメールで送信です。現実でわたしの部屋にある、ゲーミングパソコンに保存されたと表示がありました。
ちなみに、メールを現実のパソコンに送るには、課金が必要です。
タミヤ自動車監督の植田さんも、応援してくれます。同じことをしていました。
「わたしの記憶に残りました。もし裁判になったら、証人に立つと、GMにお伝えください」
セバスチャンと三人のメイドに、ゆっくりかみ締めるように告げます。
「畏まりました、とのことで御座います。なお、プレイヤー間のアイテム、装備、武器などのプレゼントなどに関するトラブル。プレイヤー間でのトラブルには、一切関わりません、ともGM神が仰ってます」
うーん、最後はどの多人数参加型ゲームの運営さんが言う、当たり前のことです。ありえないですが、仮に、わたしが多人数参加型ゲームを運営する側でも、同じです。
「お待たせしました」
両開きの扉から突如、広場であった、怖いお姉さん。我が物顔で入ってきました。わたしは、ネエネエ先輩の背中に隠れます。露出の激しい白い仕立ての良さそうなドレスを着ています。
肌着がすけそうです。レース生地から白い下着が透けてます。もっと分厚い生地を買って来い。その言葉をゴックンと飲み込みました。
「ギルド長、ギリになってすみません。遊ぶの頼まれて遅くなりました」
ニーミギルド長が、座ったまま、ピンク色のハートマークアイコンを、頭上に表示しました。
にやけた顔をしています。
「何戦したんだね?」
「えー、そこまで言うんですかぁ? 5戦かな?」
「一対一、それとも同時にかい?」
ネエネエ先輩は、首を横に振りながら、長い睫毛が下を向き、どこか痛いかのようです。わたしもマネして、頭を下げながら、おなかを押さえていました。
タミヤ自動車の植田監督の怒声が飛びます。
「教育関係者だろう、そんな話人前でしちゃいかん!」
椅子から立った、ニーミギルド長が、肩をくすめながら、苦笑しています。
「ギルド副長にするから。じゃあ、プレイヤー5人とNPC10人でギルド戦行きますか」
ニーミ副長がガラケー型コンソールを操作しました。一瞬で周囲の景色が変わります。
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