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第27話 メイドは勇者に迫り来る死を破壊する。

本日2度目の更新。

2回目の評価、わーい!

 それは生きたいと思ったからか、それとも無意識の行動だったのか分からない。

 ただ分かるのは、我の破壊の力がアンタレスの腕を破壊したことだけだ。


「お?」

「が――――っ!? ぜ、ぜぇ……ぜぇ、ぜぇ……!!」


 持ち上げられていた体が地面に落ち、背中に痛みが走るが呼吸が出来るようになり息を吸い込む。

 胸がドクンドクンと高く脈打ち、必死に無様に空気を取り入れ……段々と考える力が戻ってくる。

 そんな我をアンタレスはジッと見て、自分の無くなった腕を見た。


「お前面白いものを持ってるみたいだな。よし! オレの腕に免じて今回は帰ってやるよ」

「ど、どういう……つもりだ……?」

「随分と鍛えられてると思うし、オレの娘と戦ったら良い所まで行くだろうな。でもオレには全然及ばない」

「だから、話を聞けと……」

「だからオレのために生贄になれって思ったけど、この力は面白いな。だから生かしてやるし、オレたちは帰る」


 こいつ、まったく人の話を聞かない。言いたいことを一方的に言っているぞ。

 そう思っていると、言いたいことを言い終えたのかアンタレスはクルリと身を翻す。


「ぐ……、ま、待て……!」

「待つつもりは無い、それよりももっと強くなれよ。でないと……殺すぞ?」

「くぅ…………!!」


 必死に手を伸ばそうとするも、アンタレスには届かない。

 それどころか止めようとする我を見下ろし、その視線に我の体は強張ってしまった。

 そのことに悔しさと屈辱を感じながら拳を握り締め、アンタレスを睨み続ける。

 けれど奴は立ち止まること無く、その場から立ち去り……後には何も残らなかった。

 そしてしばらくすると気配が消えたのを感じ、暗殺者たちがこの場から居なくなったのに気づいた。


「………………勇者は、ぶじか?」


 ふらふらと立ち上がろうとするが、体力も減っていて受けた傷も酷かったのかうまく立ち上がれない。

 けれど、それでも勇者の下へと我は歩む。

 何度か倒れ、転び……メイド服が土と泥で汚れ、顔や体に擦り傷が出来る。


「ティ、ティアちゃん!?」

「う、あ…………ゆう、しゃ……?」


 何度目かは分からないが、立ち上がろうとした我へと声がかけられ……そっちを見ると心配そうな顔をした勇者が駆け寄ってくるのが見えた。

 どうやら勇者は、無事だったようだ……。


「よか、った……ぶじ、だったか……」


 そんな言葉が口から洩れた。

 勇者が無事だった。我はそれが嬉しいようだった……。

 そして我の言葉を聞いた勇者は少しだけ困った表情をして返事を返す。


「無事ってわけじゃないけど……でも、ティアちゃんのほうが酷いだろ!?」

「だい、じょうぶだ……これしき、すぐに起き上がれる……」

「そんなわけ無いだろ!? こんなに傷付いて、泥だらけにもなってるし……!」


 自分でも酷いだろうと思っていたが、勇者に言われて酷すぎるのを理解した。

 それでも少し休めば起き上がることが出来るだろう。そう思いつつ勇者に言ったのだが、奴は心配していたようだ。

 ちょっとごめん、そう言って奴は起き上がろうとする我の体に手を回すと体を抱き抱えた。


「なっ!? 何をする勇者よ!!」

「フラフラだし、傷付いてる。そんな子を歩かせることなんて出来ないんだよ!」

「そう言ってる貴様も我を抱えてプルプルしてるだろうが!!」

「うっ。け、けど、今は俺のほうが大丈夫だ。だから、家まで運んでいく!」


 離れようとする我だったが、放す気は無いと言う勇者の気迫に逆らえず……我は運ばれることとなった。

 プルプルと脚と腕を振るわせながら我を運ぶ勇者だが、前と比べて筋肉はついていると思う。

 それに出ていた下っ腹も引いている。


『てぃあ、うれしそうだね?』

『……そんなことは、ないと……思う』

『あたしはうれしいし、てぃあもうれしいならもんだいはないよね』

『だから嬉しくないと言っているだろう?』


 心の中でウィッシュが語りかけ、返事を返すのだが……嬉しいとは思っていないぞ?

 そう思っていると勇者は我を連れて家の中へと入った。


「ふ、う……。な、なんとか、ついた…………」

「すまないな勇者よ。その、もう良いから下ろしても構わんぞ」


 家の中に入ると勇者は息を吐く。それを見ながら、我は言う。

 その言葉を聞いて、勇者は我を優しく下ろし……我は床に足を着けて立つ。

 少しは休めたからか、体に力が戻りある程度の動きは出来るようになっていた。

 それを見届けたのか勇者は外へと歩き出そうとする。


「どうした勇者よ?」

「あ、えっと、まだ眠り薬の効果があるんだよな? だったら、村の外で寝ている人たちを家の中に運んで上げないとと思ってさ」

「そうか、まあ……アレの効果は一晩はあるだろうから、仕方ないだろう。無理はするな」

「わかったよ。それじゃあ行ってく………………る」


 我が散布された薬の効能を語ると、勇者は返事を返し家から出ようとした。……だが、扉を開けて外へと出ようとした瞬間、糸が切れたように倒れた。

 倒れた勇者を我は呆然と見ていた……が、ゆっくりと奴へと近付く。


「ゆう、しゃ? おい、勇者よ、しっかりしろ……。っ!?」


 体を痙攣させながら、唇は紫色になっており、だと言うのに顔は熱いのか赤くなっていた。いや、それどころか全身が熱い。

 まさか……!!

 覚えのある症状、何処だ? 何処にある!?

 ぜえぜえと荒い息を吐く勇者の体を見渡し、首筋に目的の物を見つけた。


「あった! すぐに抜かせてもらうぞ勇者よ……!」


 首筋に突き刺さった針を掴むと、我は引っこ抜く。

 髪の毛ほどの細さで小さい針、けれどそれには毒が塗られていたのだろう。

 時間差で刺された者を死へと導く、毒針が……。


「毒の元は抜いた……だが、もう猛毒が体に広がりきっている……」

『てぃあ……、ますたぁ、だいじょうぶ……だよね?』

「大丈夫……ではないな。このままだと、だから……」


 ウィッシュの心配そうな声が心に響く。

 その声を聞きながら、我は勇者を引き摺りベッドに寝かす。

 意識がほぼ無い勇者の体は重く、ベッドに寝かすのに苦労し……体に痛みが走る。

 だが問題は無い……我慢すれば良いのだから。

 そう思いながらベッドに横たわる勇者を見てから、カバンの中に仕舞っていた薬を取り出す。

 スライムの膜で覆われた薬、それを勇者の口へと押し込もうとする……が呑み込んでくれない。

 奴は荒い息を時折吐くだけで反応がないのだ。


「仕方ない……許せ、勇者よ」


 小さく呟き、我は薬を自らの口へと含むと口の中で伸ばしていく。

 ピリピリとした痺れ、身を焼くほどの辛さ、口から吐き出したくなる程の苦味が広がり、我の唾液と混ざり合う。

 それを口の中に満たしながら、我は唇を勇者の唇へと合わせた。

 合わせた唇から少しずつ勇者の口の中へと舌を押し広げるようにして伸ばして行く……。

 熱い、勇者の唇が熱い……体が、熱い……。

 その熱を感じながら、我は更に口の中に舌を這わせて行き……口の中に留めていた薬を飲ませて行く。

 最初は飲むのに抵抗していた勇者の口は息を求め、薬を飲み込んでいくのが分かった。


「ちゅ……ん、っちゅ……ん、む……ちゅ……ん、っぅ……」


 入りきらなかった唾液と薬が勇者の口から垂れ、舌を動かす度に音が洩れる。

 薬の副作用がポワポワとした熱が我の体を満たし始めていく中で、我は唇を勇者から離した。

 勇者と我の繋がりを示すように唾液が伸び、垂れ落ちて行く。


「これで勇者の準備は、終わった……。こちらも、はじめ――んっ……!」


 立ち上がろうとした瞬間、ビクリと体が震えた。

 肌が敏感になっているからか、動こうとする度にメイド服と下着が擦れて声が洩れる。


「ほんの少量飲んだだけだと言うのに……これほどまで、とは――っ! …………っっ♥♥」


 その感覚に耐えながら、我は服を脱いでいく……。

 そして、すべてを脱ぎ終えると小刻みに息を漏らす口へと、もう一度……薬を飲む。ただし今度は自分自身で飲むため、勇者に口移しではなく自ら呑み込んだ。


「これで、準備は完了した……勇者よ、今解毒してやるから……安心するのだぞ」


 そう呟き、我は行動を始めた……。



 ●



 そして翌朝、陽が壊れた木窓から覗く中で我は目覚め……腹の痛みに顔を歪ませながら勇者を見ると、昨日の様子とは違い、静かに寝息を立てていた。

 そんな勇者を見ながらホッと息を吐くと、我はもう一度眠りについたのだった。

ぶっちゃけ暑くて眠れなくて、執筆してたらこうなりました。


とりあえず、●の中身は完全にノクタなのでノクタに上げるつもりです。

あと薬の詳細も。


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