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Parallel  君と二人で ver智

最後はとも君。かなりネタバレです。嫌な人はまわれ右。

「ちいちゃん…何してるの?」

「うーん、外を見ている」

皆が帰ってしまった生徒会室。今いるのは、私ととも君の二人しかいない。

生徒会顧問の藤原先生が好意で送ってくれると言うのでその言葉に甘えることにした。

なお君は、有也君の家に泊まると言って、放課後は生徒会室に来ていない。

それに今は生徒会長は太一に代わったばかり。

例年、入れ替わってすぐの行事で中等部の入試は前役員が、予餞会からは新役員が取り行う事にしている。

中等部の入試は、然程人数を必要としない。新役員がお手伝いしてくれると高等部の時に役割分担が楽になる程度。

見回り関係は運動部中心で、生徒会は受験票の再発行とか、引率の保護者のお茶出しか解答用紙の確認とかだ。



朝からいつ振ってもおかしくなかった天気は、2時間目が終わる頃には本格的な雪になってしまった。

丘の上にある私達の学校は、こんなときは、午後休校になる。今日もお約束で休校になった。

車通勤の先生達も早々に学校から逃げ出すように帰っていく。傾斜のキツイ坂の上に学校があるので自分の車も危険なのだ。

藤原先生の車は北国出身の先生の暮らしの知恵(って本人が言ってる)があるので気にならないぞって言う。

けれども知ってる。今日は坂の下にある一般駐車場に泊めてある事。それのどこが暮らしの知恵なんだろう?



「積もってる?」

「うん、見てみる?」

私は今まではなお君の定位置だった会長の机の後ろの窓に寄りかかりながら外の覗いている。

窓はひんやりとしているのだが、生徒会室のオイルヒーターが少しだけ熱くてこうしていると心地いいのだ。

床を歩く音が少しだけ響いて、とも君は私の後ろに寄り添うようにやってきた。

「本当だね。どこまで積もるのかな?」

「さあね。明日は寮生と野球部が雪かきしてくれるはず。さっき太一にココアを差し入れるようにってストック分を渡したから、テスト明けに補充しないとね」

「俺達はやらなくていいのか?」

「うん。私達は普通に通学しても1時間はかかるから、こういう時は免除よ」

「そうなんだ。じゃあ明日はのんびりできるんだね」

「部活もないしね。休み明けに全教科小テストあるから勉強しないと」

「それって、成績に…ってヤツ?」

「もちろん。クラス分けテストの資料になってる。メインは高等部の後の実力テストと期末試験だけど、バカにしたらきついわ」

私は外を眺めながら彼に言う。



「もう…1年になるんだね」

「何が?」

唐突に話を切り出した彼に私は問いかける。

「俺がここに入学してから」

「そうね。だったら、私の卒業まで、後1年ね」

「そっか。やっぱり…早かった?」

「どうかな?なお君に生徒会に引きずり込まれてなかったら…長かったかもね」

なお君がここを用意してくれたから、表立った事件は起こらないで済んでいる。

生徒会室の中だったら、セキュリティーがしっかりしているから。

「それと、内先輩を振ったって本当?」

とも君が聞きづらそうに話を振る。よっちゃんを振ったって…かなり前の話だ。

「本当。でも、その話って…1年前の話だよ。私達がはとこなのはずっと変わらない。よっちゃんとはこのままがいいから」

中学を卒業してから、幼馴染二人から告白された。一人は、はとこでもあるよっちゃん。もう一人は9年ずっと同じクラスだった創君。

「ふうん。じゃあ、創先輩は?」

「まだ…答えてない。でも、自分の中で結論が出たからそのうち…ちゃんと答える」

「付き合うの?」

「創君は…好きだよ。でも、一緒にいてもドキドキしないの。創君は私にドキドキして欲しいんだと思う。だから選べない。私がドキドキする人は違う人だから」

「好きな人…いるんだ」

とも君の声が少しだけ沈んだ気がする。どうしたんだろう?



「いるよ。気になって1年ともう少しで半年。彼の事が好きだと気がついて1年と4カ月位かな。意外だったの?」

「うん。だって、そんな事一度も口にしていないじゃないか」

「そうだね。ねぇ、今の私の立場でその事を口に出来るかしら?」

あいつが同じ学校にいるだけで最大警戒ものだ。そんな状況でうっかり恋をしていますなんて言える訳がない。

「ちいちゃん、理絵先輩の彼氏は前付き合ってた人だろう?」

「うん、理絵からもそう聞いてるよ。私は見てないけど」

「彼氏がいるんだから、そんな嫌がらせしないだろう?」

「それは…表立っては嫌がらせを今まではしてなかったから」

私が窓を見ていた体を反転させて、彼の目を見て言う。彼は驚きを隠せなかった。



「高校入ってから…されてるの?」

「そうね。中学の頃よりは悪質にね」

「どうして…それを放置…している訳ないか」

とも君はそう言ってから溜め息をついた。

「そうね、何もしていない訳じゃない。表立って反論もしてるし、言われるような事もしていないはずだけどね」

「兄貴が言ってた…あの話になるのか」

「そう、その気にさせて振るってやつとかね。噂を辿ると理絵に近づくんだけども、本人が言ったって言うのがないの。それじゃあ、何もできないわ」

「成程ね。でもこないだ、私の彼氏を誘惑しないでって言われたって聞いたけど」

「そうね。私のクラスにまでわざわざ来てね。逆にやり返してあげたけど」

私はそう言うとニヤリと笑った。少しだけ彼の顔が引きつっている。



「なっ、何をしたの?」

「私の事実を言っただけよ。最後に彼に会ったのは高校入学前の塾の合格パーティーに参加した時だけど?彼の進学先はもちろん知ってるけど私は接触すらしてませんが?そう言うのなら、彼の心の絆をもっと強くされたらどうですか?ってね」

「こっ、怖いよ。ちいちゃん…それ…」

「やだ、事実を言っただけでしょう。逆恨みもいい所よ。全く」

「クラスの方はそれで大丈夫だったの?」

「うーん、どうかな?でも、理絵の評価は下がった事だけは確実だね。私としては狙い通りだけど」

「えっ?ちいちゃん、何か仕掛けたの?」

「すこーしだけね。本当よ。小さじ1位の可愛いものよ」

「そんなことしたら、またやり返されるって」

「分かってる。だからこっちも切り札をチラつかせながらやり返す」

「そういえば、先輩達が佐倉はそんな奴じゃないって言ってたのも…それ?」

「そうだね。それは…今回は拡げて貰う事にした。たまには弱々しく反撃してもいいんじゃない?」

「弱々しく?」

「うん。私…定期的に通院してるでしょう?あの時以来」

「そうだね。体調良くなった?」

「少しだけね。でも…将来的には治療しないといけないの。経過観察の為に通院してるのを悪用されてる」

「えっ…それって…」

「私が、産婦人科に通ってオロシテルって…バカかっての」

とも君は一言も発する事ができない。そりゃそうだ。この話は保険の先生しか知らないんだから。



「私の入院は、実は婦人科疾患だったの。ありがちな病気なんだけども、悪化したから手術して摘出して今は完治したの」

「だから、しばらく学校に来れなかったんだ」

「まあね。それによって体質もかなり変わっちゃってね。そっちはようやく体に馴染んだんだけども。いろいろあるわけよ」

「病気した個所が婦人科なら産婦人科に通うのは普通だね」

「…でしょう?それに私が通院しているのは、午前中。人が多くいる時間帯に通院して処置する?」

「それはないなぁ。人に知られたくないよな」

「でしょう?だからそっちの話は、妊娠経験も、堕胎経験もないって事を証明して貰おうと思って」

「えっ?そこまでするの?」

「やるからには、徹底して。来週、保険の先生と一緒に産婦人科に行って検査して貰ってくるから」

「嫌じゃないの?」

「そんな事言ってうやむやに誤魔化すとあいつがつけ上がる。だからそこだけは徹底して叩く。そこのお膳立ては完璧」

「完璧って…。何を企んだの?」

「理事長に一枚かんで貰った。テスト明けに生徒指導部から出頭命令が出るんじゃないの?私が分かるシナリオはここまで」

「ここまでって、十分企んでるじゃないか」

「いいのよ。隠す事を止めたから。だって…まだだもの」

私は少しだけ言葉のトーンを落とす。



男性経験がないのに、妊娠して堕胎した…なんて噂流されて普通でいられる訳がない。

普通でいられる人がいるのならお目にかかりたい。本当に。

「どうして、そこまで…ほっておいてもいいんじゃ?」

「そこが、あいつの狙いよ。それに私だって、好きな人にそんなビッチな子って思われたくない」

「ビッチって…俺は思ってないけど」

「けど…恋愛経験が豊富だと思ってるんでしょう?」

「うーん、そうじゃないと思うけど…ごめん」

「いいのよ。皆そんなものだと思うから。第一、私と章代が健ちゃん取り合ってるんでしょう?馬鹿馬鹿しい」

忘れたころに蒸し返される噂も私は口にする。私の彼氏にしたい条件からすると健ちゃんは一発場外だ。

「ちいちゃん…条件代わったの?」

「うん、少しだけ代わったの。健ちゃんは絶対にあり得ないんだ」

「どうして?体壊して野球止めたんでしょう?スポーツマンは条件だったんじゃ」

とも君は、ちょっと前の私の条件を口にする。

「そうなんだけども、その前にもう一つあるのよ。私並みとは言わないけど、ちゃんと泳げる事」

私が夏休みに付けくわえた条件を口にする。そう、部活の皆で泳ぎに行って溺れた健ちゃんを助けたから。

健ちゃんにとっては、絶対に他の人に知られたくない話だろうから、その事は誰も話さない。

逆に私も元スイマーである事を隠していたかったから。



「うちの学校じゃほとんどいないじゃないか」

「いるでしょう?私が知っている範囲で二人はいるわ」

「俺と兄貴?」

「そう、少なくてもあなた達はね。他の人は接触しないと分からないな。太一は一応泳げてたわ」

「一応…ね。どんなレベル?」

「公式で片道ノンストップ」

「ってことは、水深160センチで50メートル…普通じゃねえし」

「そこのところは口外しないけどね。そうそう、伊藤君は泳げないわよ。溺れたクロールだもの」

「行ったんだ…プール」

「うん。私と言ったら伊藤君死んじゃうと思う。背丈はあるけど」

とも君は複雑な表情をする。プールに対してはシビアな評価しかしないから想像しているんだろうな。

正しくは溺れているウシって表現したかった事は内緒にしておくよ。



「とりあえず、私も防戦だけじゃもう防げないから、あいつを利用してあいつを自滅する方法をとるの」

「いいの?それで?」

「それで悪化するとしたら…証拠はたんまり手元にあるはずよね。それこそ好都合よ」

「何をするの?」

「抹殺してやる。校内の記録からね」

「そんなことできるの?」

「できるのじゃない、やるのよ。あいつがその前に気がついて止めてくれたらいいんだけどね」

私はまた目線を外に移す。雪は更に激しく降っている。一面真っ白で、かなり積もっている様な感じだ。



「上書きしているみたい」

「ん?何を?」

「全てを真っ白に書き換えて、リセットしているみたい。いいなぁ」

「ちいちゃんも…リセットしたいの?」

「何度したいと思った事か。人生がそういかないのは分かってるわ」

ふわっと彼の腕が私の顔の前を通って、彼に包み込まれるように抱きよせられるようになる。

「とも君?どうしたの?」

私の頭に顎を乗せて…ガラス越しに表情を確認したいけど、曇ってしまって確認できない。

「そんな、寂しい事言わないで。リセットされたら、俺達は…どうなるの?」

私はその言葉を聞いてはっとする。とも君達までリセットしたかったわけじゃない。

「ごめん。リセットしたいのは、理絵との関係だけよ。他は今のままでも…いいんだ。ごめんね」

「でも、寂しいよ。ちいちゃんの側にいたくて、ここまで来た弟の俺の立場は?」

弟の立場の俺と言われて、心が痛む。ごめん、とも君。私は君を弟とは思えてないんだ。

この想いを口にしたら、君は受け入れてくれるだろうか?それとも弟である事を選ぶのだろうか?

そう思うと怖くて、何も行動できない自分がいる。私自身も結局が自分が可愛いんだ。



私はだらりと垂れ下がっているとも君の手に自分の手を重ねる。

ひんやりと冷たい彼の手が気持ち良く感じる。

「ちいちゃんの手…あったかい」

「そう、だったらとも君は、心が優しいのね。良く言うでしょ?」

「ちいちゃんだって…」

「いいのよ。私は、氷の女なんだから。大丈夫よ。少しだけ心が弱っていただけ。もう大丈夫」

「本当に?」

「うん。心配させてごめんね」

私はそう言って、重ねた手に少しだけ力を込めた。

「だったら…もう少しだけ、こうさせて。俺を心配させたお詫びに」

「それは…なんの意味があるの?」

「教えてあげない。ちいちゃんとはこうしていたい。安心するから」

「はいはい。誰かに見られたら大変じゃない」

「そうかな?普段もハグしてるじゃん?」

そうだった。体育祭が終わったあたりからたまにホールドされてるっけ。

私も今は彼の温もりを手放したくないのが本音。だって…彼が好きだから。

でも、私はその心を封印して隠している。太一は少し位は小出しにしてみろってからかう。

それができれば、どんなに楽だろう。皆が思うほど…恋愛マスターではないのだから。



吹雪とはいかないまでも、ドンドン降り積もる雪を私達は抱きよせたまま眺めているのだった。


雪を使ったシリーズはこれでお終い。パラレルとしながらも本編の内容をかなり含んでおります。

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