玉座の月、動く
【外】
最初の夜、彼らは廃工場の地下に潜んだ。
皇帝は、藁の上に座らされた。荷造り用の藁束を四つ崩して、その上に外套を敷いただけの寝床だった。
埃と、油と、錆の匂い。
配管の継ぎ目から水が滲んで、床に黒い染みを広げている。天井の梁には、燕の古い巣が二つ、干からびて残っていた。
――彼は、それを、じっと嗅いでいた。
「……陛下?」
リヴィアが声をかけた。
「どうかされましたか」
「……いや」
彼は首を振った。
「――匂いが、する」
「え?」
「余の部屋には、匂いがなかった」
彼は、埃だらけの梁を見上げた。
「毎日、掃除される。空気も入れ替えられる。……何の匂いもしない部屋だ」
彼は、少しだけ息を深く吸った。
「――久しぶりだ。こういうのは」
夜明け前、変装が施された。
伸びかけた髪を、リズが短く切った。鋏は、荷から出した携行用の小さなものだ。切った髪は、床の油染みの上に落ちて、そのまま踏まれた。
「……手つき、慣れてますね」
「うちの田舎、床屋がなかったの」
次に、灰と煤で、顔と首に汚れを塗る。
着替えは、古い労働者の外套。膝の破れた作業ズボン。継ぎ接ぎのシャツ。そして、色褪せた帽子。
どれも、この二週間でグレイが古着屋を三軒回って揃えたものだった。新しいものが一つでも混じっていれば、そこから見破られる。
「……これは」
皇帝は、自分の姿を見下ろした。
外套の袖が、手首より五センチ長かった。
「……余は、こういう格好をしたことがない」
「今日からしてください」
リヴィアは言った。
「あと、『余』は駄目です」
「……む」
「一人称は『俺』か『私』で」
「……お、俺」
彼は、口の中で繰り返した。
「……俺は、……俺が」
「もう少し、雑に」
「雑に」
「はい」
彼は、少し考えた。
「――おう」
「それは違います」
【街】
夜明け。
六人は、下層区の通りを歩いた。荷車を引く労働者の一団を装って。
通りは、まだ薄暗かった。石畳が夜露で黒く濡れ、その上を朝一番の荷馬車が三台、続けて通っていった。角のパン屋の煙突から、灰色の煙が細く上がっている。
――皇帝は、三歩ごとに、足を止めた。
止まっては、周囲を見た。
崩れかけた煉瓦の壁。洗濯物の下がる路地。水を汲む列。パンを売る屋台。
屋台の前で、五歳ほどの子供が、母親の袖を引いていた。母親は首を振り、一番小さい塊を選んで銅貨を数えていた。
「……陛下、止まらないで」
「――すまん」
彼はそう言って、また歩き出した。
三歩進んで、また止まった。
「……あれは」
彼が指したのは、配給所の列だった。
二百人ほどが、並んでいた。
朝の五時に。
先頭の何人かは、地面に座って毛布を膝にかけている。夜のうちから並んでいた者たちだった。
「……あれは、何をしている」
「配給です」
リヴィアが答えた。
「小麦と、油です。……週に二回」
「二回」
「はい」
「あの人数で、二回か」
「……はい」
彼は、しばらくその列を見ていた。
列の脇に、告示板があった。配給日と、一人あたりの量が、粗い紙に書かれている。数字の上に、線を引いて書き直した跡が二度あった。二度とも、下がっていた。
「――余の署名した予算では、週四回のはずだった」
リヴィアは、応じられなかった。
彼は、その後も、何度も足を止めた。
――そのたびに、リヴィアたちは焦った。
だが、止められなかった。
彼が見ていたものが、何なのか、分かってしまったからだ。
――彼は、初めて自分の国を見ていた。
十四年、書類の上でしか知らなかった国を。
街角の壁に、募兵ポスターが貼られていた。
紙は、まだ新しかった。糊が四隅からはみ出して、乾いて白く固まっている。その下に、剥がしきれなかった古いポスターの断片が、地層のように三枚重なっていた。
『帝国の明日は、君の一歩から』
その前で、彼は長く止まった。
「……これは」
「募兵ポスターです」
「――こんなものが、街中に?」
「はい。……三年前から、増えました」
彼は、その顔のない影絵を、じっと見ていた。
「……余は」
「陛下」
「――俺は」
彼は、言い直した。
「これに、署名したか?」
「……分かりません」
「そうか」
彼は、視線を落とした。
「――たぶん、したのだろうな」
通りの向こうから、行列が来た。
――若者の一団だった。
肩に、白い襷。三十人ほどが、三列で歩いてくる。歩調は揃っていない。まだ、揃え方を習っていないのだ。
見送りの家族が、後を追っている。
母親が泣いていた。父親が、無言で肩を叩いていた。
「……あれは」
「出征です」
リズが答えた。
「今日は、南部への配属日みたいですね」
――皇帝は、道端に寄って、その列を見送った。
三十人ほどの若者が、通り過ぎていく。
誰も、彼を見なかった。
当然だった。
――彼は、汚れた労働者の格好をしていたから。
最後の一人が通り過ぎた時、彼は言った。
「……あの子らは」
「はい」
「――どこへ行く」
リヴィアは、応じられなかった。
答えを、知っていたからだ。
ネフィラの砂漠へ行く。そして、たぶん、半分は帰ってこない。
「……陛下」
「答えなくていい」
彼は言った。
「――分かった」
【城門】
午前十時。
帝都南門。
――検問が、敷かれていた。
門の両脇に木の柵が張り出して、通行の幅を荷車一台ぶんに絞っている。憲兵は八人。うち二人が、荷台の中身を長い鉄棒で突いて回っていた。
「……早いですね」
ネロが、小声で言った。
「失踪が発覚したのは、まだのはずです」
「――通常の検問よ」
リヴィアが答えた。
「戦時徴収の物資検査。……最近、毎日やってる」
荷車の列が、少しずつ進んでいく。前の荷車が積んでいた干し草が、鉄棒で三度突かれた。
六人は、その列の中ほどにいた。
「――次!」
憲兵が、荷車を指した。
リヴィアたちの番だった。
「積荷は」
「石炭です」
アシュが答えた。
「行き先は」
「南部の、第九工廠」
「証明書」
――偽造した書類を、差し出す。
憲兵は、それを一瞥した。
「……人数は」
「六人です」
「顔を上げろ」
――全員が、顔を上げた。
憲兵の目が、一人ずつ、顔を確認していく。
リヴィア。グレイ。アシュ。リズ。ネロ。ミーナレイ。
――そして。
最後の一人。
痩せた、汚れた顔の男。
憲兵の視線が、そこで止まった。
――三秒。
全員の呼吸が、止まった。
門の向こうで、鳥が鳴いた。荷車の車輪が軋んだ。誰かが咳をした。三秒の間に、それだけの音がした。
「……あんた」
憲兵が言った。
「顔色、悪いな」
「…………」
「病気か」
「――ああ」
皇帝が答えた。
その声は、低く、掠れていた。
「……胸を、やられてる」
「炭鉱か」
「そうだ」
憲兵は、少しだけ顔をしかめた。
「……気の毒にな」
彼は、書類を返した。
「――通れ」
門を抜けて、五分ほど歩いてから。
リズが、大きく息を吐いた。
「……心臓、止まるかと思った」
「陛下、お見事でした」
リヴィアが言うと、皇帝は首を振った。
「……いや」
彼の手が、震えていた。
「――怖かった」
「え?」
「顔を見られた瞬間、思った」
彼は、掠れた声で言った。
「――ばれる、と」
「でも、ばれませんでした」
「そうだ」
彼は、少し笑った。
それから、寂しそうに言った。
「――誰も、余の顔を知らんのだな」
――その言葉に、リヴィアは、ある事実を思い出した。
硬貨の肖像。
この国の硬貨には、まだ先代皇帝の顔が刻まれている。十四年、更新されていない。
議会が「経費」を理由に、拒み続けたからだ。
彼女は、上着のポケットに手を入れた。指先に、銅貨が三枚あった。
摘まみ出して、掌の上で表を返す。
――髭のある、恰幅のいい横顔だった。
(……それが、今)
(この人を、守ってる)
なんという、皮肉だろう。
彼を無力にするための決定が、彼を生かしている。
【老婆】
その日の午後。
街道を外れた、小さな村。
家は十二軒。どれも、屋根が藁だった。村の中央に、石を組んだ井戸が一つ。その周りだけ、地面が踏み固められて黒く光っている。
そこで、彼らは水を汲んだ。
井戸端に、老婆が座っていた。
八十は超えているだろう。腰が曲がり、目は白く濁っていた。膝の上に、豆の入った笊がある。彼女は、手探りで一粒ずつ、莢を割っていた。
「……水を、いただいても」
リヴィアが声をかけると、老婆は頷いた。
「好きなだけ、お飲み」
六人が、順に水を飲んだ。
――そして。
皇帝が、桶に手を伸ばした時。
老婆の顔が、上がった。
白く濁った目が、彼を見た。
――いや。
見えては、いないはずだった。
なのに、彼女は、じっと彼の方を向いていた。
「…………」
「……お婆さん?」
「……声」
老婆が呟いた。
「……お前さん、声が」
全員が、緊張した。
――アシュの手が、腰へ動いた。
リヴィアが、目でそれを止めた。
「……昔、聞いた声に、似ておる」
老婆は言った。
「五十年、前かねえ」
彼女は、記憶を辿るように、首を傾げた。
「……わしがまだ、娘の頃じゃ」
「先の、先の帝の、御代でな」
彼女は、独り言のように語り始めた。莢を割る手は、止めなかった。
「あの頃の陛下は、たまに、街へ出られた」
「……街へ?」
「そうじゃ。お忍びでな」
彼女は笑った。歯が、下に二本だけ残っていた。
「まあ、みんな知っておったが。……気づかんふりをしとった」
「…………」
「一度、この村にも来られた」
彼女は、井戸の縁を撫でた。
「――この井戸で、水を飲まれた」
皇帝の手が、止まった。
「わしが、桶を渡したんじゃ」
老婆は、懐かしそうに言った。
「そしたら、陛下は、こう言われた」
彼女は、その言葉を繰り返した。
「――『すまんな。ありがとう』と」
沈黙が落ちた。
豆の莢を割る、小さな音だけがしていた。
皇帝は、動かなかった。
やがて、彼は桶を受け取った。
水を、飲んだ。
冷たかった。井戸の底の水は、真昼の暑さの中で、指が痺れるほど冷たかった。
――それから、老婆に桶を返した。
「――すまんな」
彼は言った。
「……ありがとう」
老婆の、白く濁った目が、大きくなった。
膝の上の笊から、豆が一粒、転がって落ちた。
彼女の口が、少し開いた。
――そして。
彼女は、口を開かなかった。
ただ、頭を下げた。
深く。地面に額がつくほど、深く。
――皇帝も、頭を下げた。
同じくらい、深く。
二人は、しばらく、そうしていた。
井戸の水が、桶の中で揺れて、止まった。
立ち上がった皇帝に、老婆が言った。
「……南の街道は、憲兵が多い」
「…………」
「東の、羊飼いの道を行きなさい」
彼女は、指を差した。指の先は、少しずれていた。
「遠回りじゃが、誰も通らん」
「……ありがとう」
「――お気をつけて」
豆を割る手は、止まらなかった。
名前は、呼ばなかった。
最後まで、何も聞かなかった。
彼らが村を出るまで、彼女は豆を割り続けていた。
村を出てから、ミーナレイが小声で言った。
「あの人……気づいてましたよね」
「……たぶんね」
「なんで、何も言わなかったんでしょう」
リヴィアは、応じなかった。
――皇帝が、答えた。
「――言えば、あの婆さんが、危ない」
彼は、前を向いたまま言った。
「知らぬ方が、安全だ。……それを、あの人は知っている」
彼は、少しだけ足を止めた。
「――余の国の民は」
彼は、言い直した。
「――俺の国の民は、賢いな」
【四日目】
皇帝の失踪が発覚したのは、四日目の朝だった。
定例の健康診断のため、医官が最上階へ上がった。
――部屋は、空だった。
窓は閉まっていた。扉の閂も、外から掛かっていた。断たれた金属の断面は、掛け直された時に上下が入れ替わっていて、それに気づいた者はいなかった。
――なのに、誰もいなかった。
その日のうちに、帝都は封鎖された。
だが、遅すぎた。
六人は、既に、東の羊飼いの道を歩いていた。
【追跡】
六日目。
オズホルン公国まで、あと二日という地点。
道は、峠へ向かって細く登っていた。片側が岩壁、片側が谷。荷車がぎりぎり通れる幅しかない。
――その峠道で、リヴィアの背筋が粟立った。
「――伏せて!!」
叫んだのと、上空が白くなったのは、同時だった。
街道が、爆ぜた。
雷が落ちたのは、荷車の三歩前だった。石畳が持ち上がり、砕けた破片が扇形に飛んだ。荷車の前輪が根本から折れて、車体が谷側へ傾く。
――音は、後から来た。
耳を叩いた時には、もう土煙の中だった。
「陛下!」
グレイが、皇帝を抱えて跳んだ。
「――雷牙隊!!」
アシュが、銃を抜いた。
峠の岩場の上に、五つの影があった。
濃紺の軍服。
先頭に、短く切り揃えた黒髪の女。
イグナ・ヴェルド。
「――見つけた」
彼女の声は、平坦だった。
「特務課黒翼分隊。……および、グレイ・アークライト元中佐」
彼女は、二撃目を構えた。
「――帝国反逆罪の容疑で、拘束する」
「――ミーナレイ! 陛下を!」
「はいっ!」
「リズ、風で道を! アシュ、上を!」
リヴィアの指示が飛んだ。
――そして。
「イグナ中尉」
彼女は、前に出た。
「――なんだ」
「私たちは、抵抗します」
「そうだろうな」
「……あなたも、本気で来る?」
イグナは、少し黙った。
「――当然だ」
三撃目が、落ちた。
空気が焼ける匂いが、落ちるより先に届いた。
――リヴィアは、既に踏み込んでいた。
切っ先を天へ。溜めは、四つ数えるぶん。
「絶空」
黒い斬撃が、扇形に開いた。
落ちてくる青白い柱と、下から昇る黒い扇が、峠道の上でぶつかった。
――音が、消えた。
雷が、割れた。
二つに分かれた青白い光が、街道の左右へ流れて、岩壁と谷底へそれぞれ落ちた。岩壁の側で、石が一抱えぶん、赤く灼けて崩れた。
黒い扇は、そのまま上へ抜けて、峠の空に一本、線を引いて消えた。
――イグナの眉が、動いた。
「……成長したな」
「二年、経ちましたから」
戦闘は、五分続いた。
――だが、決着はつかなかった。
黒翼は、皇帝を守りながらの戦闘で、攻めきれない。荷車の陰が唯一の遮蔽で、そこから離れられない。
雷牙隊は、リヴィアの絶空とグレイの炎で、近づけない。岩場の上から撃つ以外の手が、峠道では取れない。
互いに、互いの届く場所へ入れなかった。
六分目。
イグナが、手を止めた。
「――退く」
「隊長!?」
「深追いはしない。位置は掴んだ」
彼女は、リヴィアを見下ろした。
「――ノクス」
「なに」
「一つ、聞く」
彼女の声が、少しだけ変わった。
「――お前は、今度も、正しいのか」
リヴィアの動きが、止まった。
二ヶ月前、広場で言われた言葉が蘇る。
――お前は、正しい。正しくて、無意味だ。
彼女は、上着の内側に手をやった。指の腹が、手帳の角に触れた。
「――そうよ」
リヴィアは答えた。
「正しい」
「そうか」
「――でも」
彼女は、まっすぐにイグナを見上げた。
「今度は、意味がある」
イグナの目が、細くなった。
「……ほう」
「あの時は、撃たなかっただけだった」
リヴィアは続けた。
「今度は、やってる」
彼女は、背後の皇帝を、一度だけ見た。
「――撃たないことと、動かないことは、違う」
イグナは、しばらく彼女を見ていた。
やがて、彼女は言った。
「――そうか」
それだけだった。
彼女は、背を向けた。
「――撤収」
雷牙隊が、岩場から消えた。
――去り際、彼女は一度だけ、振り返った。
その表情は、遠くて見えなかった。
【三度】
その夜、野営地で。
焚き火は、小さく組んだ。峠の風下の窪地に石を丸く並べて、その中だけで燃やしている。煙が上へ抜けないよう、湿った枝は使わなかった。
グレイが、地図を睨んでいた。
「……おかしい」
「なにが」
「三度だ」
彼は、地図に印をつけた。炭の先で、三つ。
「二日目、川の渡し場。四日目、峠の分岐。……そして今日」
三つの印は、彼らが待ち伏せに遭った地点だった。
「――全部、俺たちが通る道の、先回りだ」
リヴィアの背筋が、冷たくなった。
「経路は、変更してきた。……村の婆さんに教わった道も、地図には載っていない」
「…………」
「なのに、待たれてる」
彼は、地図を畳んだ。
「――どこかで、漏れてる」
野営地が、静まり返った。
――五人が、互いを見た。
リズが。アシュが。ミーナレイが。
そして。
――ネロが、俯いていた。
彼の膝の上に、端末があった。
地図を確かめるために、彼は今日も、三度それを開いていた。
彼は、顔を上げなかった。
誰も、そのことに気づかなかった。
――いや。
リヴィアだけが、気づいていた。
気づいて――口を、開かなかった。
――言いたくないことを、無理に言わせない。
二年前、森の庵の裏で、彼女は同じことをした。カラムが、そうしていたからだ。
あの時と違うのは、今は、それが正しくないと分かっていることだった。
分かっていて、彼女は言わなかった。
言ってしまえば、何かが決定的に終わると分かっていたから。
焚き火が、爆ぜた。
【第十四日】
――同じ夜。ネフィラの砂漠。
トビアス・レンは、まだ生きていた。
中隊の残りは、十九人になっていた。
彼は、その日、二つのものを数えた。
一つ。配られた水。一人あたり、水筒の三分の一。輜重が、二日遅れているらしかった。
二つ。埋葬の穴。
――穴は、掘られていなかった。
砂漠では、掘っても崩れる。だから、死体は並べて、上から砂をかける。かけた砂は、風で減る。減ると、また上からかける。
トビアスは、その作業に三度出た。
三度目に、彼は自分が何をかけているのか、分からなくなった。布はもう区別がつかず、どれが今日の分で、どれが五日前の分なのか、誰も覚えていなかった。
夜、彼は毛布の中で、都の方角を見た。
城壁の上に、灯りが一つだけ点っていた。
――十四日、消えたことがない。
誰かが、そこに立っている。
彼は、その灯りを見ながら眠った。
――その夜、砂漠で二千三百人が死んだ。
同じ夜、東の峠道では、六人が焚き火を囲んでいた。
どちらの夜も、月は同じ形をしていた。




